goo blog サービス終了のお知らせ 

sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

直島・蛸壺旅行その9:ホテルマン

2008-11-26 | 直島蛸壺旅行
最終日の最後の講義で
先生の元生徒でうちの大学院の卒業生が来て
お話ししてくれました。
ベネッセのホテルに今年就職した人で
情熱も夢もあり、誠実な人柄の若い方でした。

現場の話が色々聞けるし、先生の言うように
これほどアートを語れるホテルマンはいない、のかもしれないけど
わたしは、何だか少し寂しくなりました。

就職して半年の間に、彼はすっかりホテルマンというか
企業の人間になっていて
建前以上のことはどうも、いいにくい様子なのです。
誠実な語り口だけに、そこが、さびしかった。
でもそれが企業の側の人間になるということなのです。

いまやベネッセの島、みたいな直島ですが
そのアートの捉え方は結局は商業主義です。
昨日書いたようにそれは悪いことではないし、
必要なことでもあるのでしょうが、
疑問もたくさんあるはずです。
たとえば、ベネッセのアートサイトを見ると
「直島でアートを鑑賞するスタイルや、
標準的な鑑賞コースなどをご紹介」などと書かれています。
???標準的???
本来、芸術に標準的という枠はおかしいのです。
ここにある現代美術の作品は、固定概念(標準的な見方)の枠を
壊したり忘れたり広げたりして人の心を動かすものです。
(見方、とらえ方、感じ方は自由で
たくさんの有名なアート作品よりも
毎日海辺で壺に入る蛸を待つことの方が、
芸術だぁ!って思ってもいいのです。)

でも現実に、1泊、または2泊で来られるお客様に
「標準的」に効率よく楽しんでもらえる指針は必要です。
多くの人に来てもらい見てもらい親しんでもらい
多くの人の気持ちに触れたいと思うなら
商業的にもうまくいかなくてはいけません。
それでも、芸術を志す人なら、同時に
常に疑問や矛盾を抱えているべきなのではないでしょうか。

でも企業の人間としては、
そういう疑問などないような顔をしなければいけません。
彼が彼なりの疑問を抱えながら頑張っているのはわかりますが
それを、他人と共有はできないのですね、今は。
そういうことがイヤで、企業の人間にならない芸術家も多いです。
でも疑問を抱えつつ、より多くの人がコミットする社会で
やっていくのも、ひとつのやりかただと思います。
彼には彼なりの夢とビジョンがあり
いつか、企業の人間であってもなくても、
それを実現していってほしいな、と思います。

長々と(しつこく)書いた直島合宿の記事は
ひとまず、今日でおわります。

直島・蛸壺旅行その8:現代美術

2008-11-25 | 直島蛸壺旅行
ここまで、旅行記のように書いてきて
この島とアートの関わりについて、
その経緯と現状、また批判や問題点などに
ほとんど触れませんでしたが
いろいろ考えることは多かったです。
(一応、芸術の授業ですから~)

同じ志の高さと同じ才能と同じ努力を持ってしても
うまくいくことと、いかないことがあります。
その境目は何なのか、
直島の例は考えさせられますね。
個々の芸術作品より、全体の枠組みや
マーケティングについて考えてしまうのは、
芸術家としてはどうかと思うけど
学生としては、対峙しておくべきことでしょうね。
商業的な成功は、悪いことではなく、
むしろ、いいこと(またはどっちでもいいこと)だとわたしは思います。
ただ、それ自体が目的になってしまうと
芸術が偽物になっちゃう危険性が高まるけど。



古典の勉強というのは
すでに見えているものを、もっとよく見る練習だと思います。
見れば見るほど、知れば知るほど見えるものが多くなり
また、よく見えてきて、どこまで見えるのかわからない
奥の深さがあります。

一方、現代美術は使っていない目を開ける刺激のようなものです。
自分の中に、新しい目があることに気付き
その目で、新しいものが見えるようになるのです。
そして、どこまでも遠くへ自分を広げるもの。

でも、結局、どちらも同じことなのではないでしょうか。
どちらにも必ずあるべきもの、
それが、普遍性ということだとわたしは思います。
そして、普遍性はグローバリズムの均一の中ではなく
小さな島であろうと、大きな国であろうと
結局、ひとりひとり違う個々の文化や人間の中に
それぞれの形であるのです。

それはともかく、個人的には
元々、今年の初夢に
この授業の担当のM井先生が出てきたのが発端でした。
それで、これは行くしかない、と決意したのでした。
(夢に蛸は出てこなかったせいか
蛸が取れなかったのは計算違いでしたが(笑)。)
先生に関しては、面白い先生だというのはわかっていましたが
今回、しみじみと、もしかして
この先生はものすごく優しい人なのでは、と思いました。
コーヒーの蘊蓄では
わたしが勝ちましたが(笑)。

直島・蛸壺旅行その7:蛸壺引き上げ

2008-11-24 | 直島蛸壺旅行
さて、いよいよ蛸壺漁最後の瞬間。

お疲れ世代の7号パオメンバーと違って、
ほかのみんなは夜中にもひきあげてチェックしてたけど
まだ誰も1匹も入ってなくて、
今年は取れないのか、
大体本当にこんな壺に蛸が入るのか、と
疑心暗鬼になっていたのはわたしだけでしょうか(笑)。
そして
わたしのは・・・・ダメでした。
蛸、何が気に入らなかったんだろう。

蛸壺を引き上げているところ。↓


しかし今年も2人!蛸入った人がいたのです!
逃げようと足(腕)を出している蛸、わかりますか?↓


こんな素人のゲージツ軍団につかまるなんて
どんくさい蛸やなぁ。
蛸も悔しかろう。

蛸主のひとりは、逃がしてあげるから入って、
と蛸と約束(?)していたそうで
すぐに、海に返してあげていました。

砂浜を、一目散に海へ急ぐ蛸↑

もうひとりは調理して食べる!と家に持って帰りました。
一人暮らしの若い女性だったのですが
おいしく食べられたかなぁ。

直島・蛸壺旅行その6:地中美術館

2008-11-23 | 直島蛸壺旅行
3日目、朝一番のバスで
地中美術館へ。(写真は駐車場の駐輪場)

丘の上にあるので、どうも地中という感じじゃないのだけど
美術館の建物自体は、地面の下に埋まっているので地中美術館です。
建物に行くまでの緩やかな坂に沿って、
モネの庭を再現したものがあります。

今の季節もたくさんの花が咲いているけど
春はもっときれいかな。

えっと、一番の感想は、高い。です。
入館料2000円ですよ。
内容は、「家プロジェクト」と同じ系統の現代美術です。
空間ごとアートとして体感するタイプ。
真っ暗闇の南寺と同じジェームズ・タレルの部屋と
まん丸い巨大な球体のウォルター・デ・マリアの部屋と
大理石の小さな白いタイルが敷かれたモネの部屋と。
さっさと見ると30分でまわれる量ですが
まあ感じる、ということではじめてアートになるというものなので
2000円分以上ゆっくりするべきなのでしょう。

内容は
抜けがいい、というか
気持ちいい空間の、気持ちいい展示で、
どの作品にも普遍性があると思うので
現代美術の中でも好きな部類です。
これもベネッセミュージアムと同じで
誰でも素直に現代美術って面白い!と思えるものばかりです。
たとえば、うちの14歳なら「何これ、面白い~」と思うだろうし
あのユーモアの全くない、美術に全く興味のない母も
「わけわからへん」と言いつつ面白いもん見た、と思うでしょう。
すれっからしの美大生たちも
お金のかかった美しい作りの大きな仕掛けに
素直に感動できます。

でも、高いなぁ、とは思うけど。
あと美術館の人のユニフォームが白装束で
新興宗教を想像させて、いまひとつです。
きっと、有名なデザイナーがデザインしたのだろうけど
白いトップに白いパンツに白い靴は
足の長い人種にしか似合わなさそうなのですが。
白い空間の中で目立たないように、という意図なら失敗です。
白すぎて、目立ってました(笑)。

直島・蛸壺旅行その5:米とアートとベネッセハウス

2008-11-21 | 直島蛸壺旅行
朝ご飯はこんな感じ。
けっこう野菜いっぱいです。

海の見える食堂で、気持ちよくしっかりと食べました。

お昼は、お米とアートのイベントに行き
そこで、カレーやクッキーを買って食べました。

会場ではたくさんのブースが出ていて、
人気投票があり、投票するだけでお米2合もらえます。↓

わたしたちが投票したのはこちら↓

蛸壺授業の先生がやっているブースです。
先生は、わたしたちがフィールドワークしてる合間に
こんなことをしていたのでした(笑)。
<世界初>
<ヨクトレル>
<スグトレル>
<蛸壺セット>
<潮見表付き>
などと宣伝文句が書いてあります。
そんなこと書いて大丈夫なのかどうかは、
わたしたちの蛸壺漁にかかっているのです。
全然取れなかったら、誇大広告ということで
JAROに逮捕されちゃう。
(嘘です、JAROには逮捕できません。笑)

一度桟橋に行き、蛸壺の様子を見てから(入ってなかった・・・)
ベネッセミュージアムへ。
現代美術の有名作家の作品が
見やすく、ゆったり展示されています。
あまりにスマートすぎる気もしますが
現代美術初体験の旅行者でも
楽しめて、発見があるような作りにはなっていると思います。
空間自体が気持ちいいし。

内部は撮影禁止ですが
外にあるオブジェのいくつかは撮影可です。

これは「3枚の正方形」という作品。
(そのままやん、と関西人なら突っ込む)
こういうのが、あちこちに、いきなり、な感じでにょきっとあります。

直島・蛸壺旅行その4:家プロジェクト

2008-11-20 | 直島蛸壺旅行
2日目はフィールドワーク。
調査、と言いつつ、やることは観光と同じです(笑)。

午前中、本村港近くにある「家プロジェクト」へ。
古い民家をまるまるアートにする試みで
有名作家の作品が街の中に点在しています。
我らが学長、千住先生の作品もありました。
(滝の絵でした)
上の写真は、その中の一軒で、もと歯医者さんの建物。
中には屋根までの高さの大きな自由の女神があったり。
足下にもたくさんの写真や紙切れや
いろんなものが貼ってあったりする空間です。
内部写真撮影はできないので
興味のある方はこちらのサイトをご覧下さいね。
直島:家プロジェクト

どれも、楽しいのだけど
やっぱりジェームズ・タレルの真っ暗闇の空間が
面白かったですね。
こんな暗いの初めて、というくらい暗いところを
手探りで進むのだけど
そのときの不安感たるや。

自分のできることを広げて行くという方法で
芸術に取り組むのは普通のことだけど、
できないことを突き詰めて行くと
それはそれで、別のところにいけるんだな、と
思わせられます。
あまりの不安感、真っ暗さに
普段使わない脳の部分が目覚めた気がしますから。

そして、この街は歩いているだけでも楽しいです。



小さなこじんまりした街で、古い建物も残っていて
海がすぐそこで、気持ちいいのです。


猫も気持ち良さそうです。

直島・蛸壺旅行その3:壺を沈める

2008-11-19 | 直島蛸壺旅行
夕方、暗くなった浜辺と丘を歩いて
桟橋まで蛸壺を沈めに行きます。
有名な草間彌生さんのカボチャのオブジェを横目に見ながら
とことこ蛸壺ぶら下げて歩きます。


桟橋に着いたら
思い思いの場所に、祈りながら
するすると蛸壺を沈めます。
もう真っ暗で、こんな時間にわたしたちって、
なんて怪しい集団だろうと思いながら沈めます。

参加学生中最高年齢(約90歳)のひらたさんは
「たこと交信した」と真顔で言います。
「ちゃんと入るって言うとった」

ひらたさんだけでなく、結構みんな強気で、
「絶対入る気がする」とか「たこが呼んでる」とか
勝手なことを言います(笑)。

真っ暗な長い道のりを
高級なベネッセハウスのテラスレストランを横目に
また、とぼとぼ帰り、夕食を食べ(お鍋でした)お風呂に入り

7号パオの3人はすぐにぐっすり寝ました。

が、他のみんなは夜中に、また桟橋まで歩き
一度引き上げて様子を見に行ったりしていたそうです。
桟橋までは1キロくらいかな、でも砂浜や丘で
結構歩くの大変で遠いです。
みんな元気ねぇといいつつ
同じ年の3人は迷わず寝ました。

30代以下は若くて元気。
50代以上は、生まれ変わってるのかと思うほど元気。
わたしたちの年代が一番疲れてるんだよねぇと
お互い、慰め合いながらぐっすり寝ました。
(まだまだ続く・・・)

直島・蛸壺旅行その2:海辺で壺を飾る

2008-11-18 | 直島蛸壺旅行
さて、荷物を置いたら早速蛸壺です。
作るといっても、素焼きの壺にペイントするだけです。
前は石膏で成形するところからしてたらしいけど
石膏が海で崩れる失敗も多く、
また石膏作業のできた場所がなくなったので
(ベネッセハウスができて)
今はペイントだけになりました。

蛸壺は藤原蛸壺製作所というところで買ってくるそうですが
もう素焼きの蛸壺を焼いているのは
ここしかないそうです。
蛸壺製作所のビデオなども見て
また、蛸壺と芸術の関連性などの講義を受けてからペイント開始。


去年、満潮時が取れやすいようだとわかったらしく
今年は潮見表が用意されていました。
大潮、中潮の時間を見計らって
引き上げチェックをすることになります。

パオの近く、海の見える原っぱでぺたぺた。
少し寒かったけど、iPod聴きながら
海風受けながら、ぺたぺた。楽しい。

日本画では絶対できないような、いいかげんさで描きました。

直島・蛸壺旅行その1:船とパオ

2008-11-17 | 直島蛸壺旅行
14日朝家を出て、岡山でローカル線に乗り換え、
直島へ向かう船の出る宇野港にはお昼前に着きました。
船着き場の自販機。泣いてる?


車の乗る大きいフェリーもあるのですが
時間的にぴったりだった小型客船に乗船。
後方デッキにいたのは、わたしひとり。

小さな船で、ガタゴト、すごいモーター音で
大声で叫んでも歌っても、誰にも全然聞こえな~い
と、いい気分でひとり歌ってるうちに直島の本村港に到着。



バスで、集合場所のつつじ荘に着いたのは12時半頃。
つつじ荘は海辺の民宿風の宿で、和室とパオがあります。
わたしたち、京都造形芸大の学生はパオに宿泊。
わたしは2人の女性と7号パオで寝ることに。

パオの入り口↓

ドアを開けると、またドア。
原始的なかんぬきの鍵になっています。


中は中心に机と椅子があり
ベッドは壁(テントですが)に沿って置いてあります。




パオは、案外快適。
暖房もあるし、ベッドも清潔でした。
雨音が、すごく響くので、雨の降った2日目の夜はびっくりしたけど
それも面白かった。