湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

メトロノーム少年

2009-11-01 18:03:46 | あんな人こんな人


昨日の東海道線で帰宅途中のことである。
静かだった車内に小さな笑い声が響いた。読んでいた本から目を上げると、向かいのシートで中3か高1といった風貌の男の子が眠りながら大きく左右に揺れていたのだ。見事に規則正しく行ったり来たり。

お前はメトロノームか!

しかも、指を離したばかりのように大きな振幅を繰り返す。笑い声は、彼の両脇に座っていたご婦人たちだった。さすがにここまでやられると、困るとか迷惑だといった感情は消え失せ、もうただただ笑っちゃうしかなかったのかもしれない。この光景を正面から眺めることになった僕もまた、彼女たちと目を合わせ笑ってしまった。もう本に、目が戻せない(笑)。
まだまだメトロノーム君の振れ幅は弱まりそうもない。ついに、見かねたドア側のご婦人が彼の肩をたたく。
目覚めた彼には“自覚症状”があるようで、いきなり謝っているようだ。ところが、ご婦人は席を立ち、彼と席を交換しようと提案している。なるほど、端の席なら寄りかかることが可能だ。右に左に揺れずに、ぐっすり眠れる。
この優しい配慮に、車内の空気が和んだことは言うまでもない。ようやく彼もその意図が理解できたようで端の席に移動する。
とはいっても、ちょっと恥ずかしい思いもしたわけだから、もう寝ることはできないはず。だいたい、あの寝てるんだか寝てないんだかのゆ~らゆらしている時間がめちゃめちゃ気持ちよかったりするわけだから、さあ寝なさいいうことになってしまったら逆に眠れないよなぁ。

すぐ寝た。

図太い野郎だ。しかも体は揺れないのだが、首だけ前に垂れるようになってしまい、なんと今度は被っていた帽子が落ちてしまい、ご婦人が拾いあげる。受け取りながら、また謝っているぞ。
さっき謝った意味がないじゃん。もう寝るなよ。

また寝た!

図太てー野郎だぁ。
ご婦人がた爆笑である。
ただ、その後ふと目覚めた戸塚駅での降り際に、彼はきちんと頭を下げて「ありがとうございました」と挨拶をしていた。よろしい。みんなを楽しませてくれたわけだしね。

で、写真はその彼。えっ、正面から見てたんでしょ。なぜ隣から撮ることができたのかって?
なんとこのショットは、今朝の車内。ちょうど7時ごろ戸塚駅から乗車してきて、しかも僕の隣に座ったのだ!
こんなことがあるんですね。びっくりしながら、夕べの光景を思い出し笑ってしまった。
よほど夕べのことを言ってあげようかと思ったのだが、それも可哀想だと思い直し隣を見たら…

寝てる!

夕べ僕に見られていたというのに、図太て~~ぇヤローだぁ~。僕に見られていたのは知らなかったか(笑)。
そして、すぐに予定通りメトロノームが左右に振れ出した。
おっ、僕の左手側があいたので一つ横に移動。彼の右手側も空席なので、これで心置きなくメトロノーム全開だ!
ところが、朝ということもあってか今日は振れ幅が小さいぞ。相変わらず規則正しく左右のリズムは健在なんだけどなあ。おっと、向かいのシートの乗客たちは全員寝ている。
そうか、さすがはメトロノームと呼ばれた少年。左右に“当たる”人と、観客がいなければ、あの妙技は披露することができないということか。
川崎駅で停車。「1分ほど停車いたします」と車内アナウンスが流れて30秒ほど経った。すると、メトロノームがピタリと止まり、急に立ち上がってゆっくり歩いて出ていった。

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