湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

名も知れる近き町

2009-09-08 23:30:07 | 湘南ライナーで読む


『我もまた渚を枕』(川本三郎著 ちくま文庫820+税)
タイトルは、島崎藤村作詞『椰子の実』の2番からとったと後書きにある。取材はしないで「ぶらっと町を歩き風景の中に身体を溶け込ませる他所者の流儀に徹したかった」からだそうだ。
5年前に新刊として並んでいた時に手にしたのに買いそびれた本が、文庫になっていた。もともとは『東京人』の連載で、東京近郊を散歩した記録をまとめたものだ。
歩いた町が都内ではなく、近郊というところがポイントである。登場する町の名前を列挙してみよう。
船橋、鶴見、大宮、本牧、我孫子、市川、小田原、銚子、川崎、横須賀、寿町、日ノ出町、黄金町、千葉、岩槻、藤沢、鵠沼、厚木、秦野、三崎。
どうですか、なかなか渋い選択じゃありませんか。こうした町を徘徊しながら、得意の文学や映画のエピソードなどを織り混ぜ淡々と伝えてくれる。そこからまた、読んでみたい、見てみたい、そして行ってみたいと、どんどん広がっていくすてきな紀行文だ。
また、ついつい(いや意図的にか)大衆食堂に引き込まれてしまうところが共感できる(笑)。ただ、川本氏は1日目の終わりに、そこで一杯やることを常としているのだが。
「我もまた渚を枕、ひとり身の浮き寝の旅ぞ」
その町らしいものを食べ、それからビジネスホテルに素泊まり。ん~、なんかそういうのもいいなぁ。

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