この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

持たざる者が進む道、『美大受験戦記アリエネ』。

2012-07-02 22:24:12 | 漫画・アニメ
 うちのお袋は姪っ子のなるみ(つまりお袋にとっては孫)が三、四歳のころ、「可愛い可愛いなるみちゃん」と言って可愛がっていました。
 そしたら根が素直なのか、それとも単なる○○なのか、まぁ、どっちも似たようなものですが、なるみ自身が自分のことを「可愛い可愛いなるみちゃん」と言うようになったんですよね。
 それは結構長い間続いた、、、ような気がします。
 そして今なるみも中学生になり、自分のことを「可愛い可愛いなるみちゃん」などと称したりすることはなくなりました。
 もちろんお袋もそう呼ぶことはありません。
 なるみは、いつぐらいに事実を知った(この場合悟ったというべき?)んだろうな、って思います。
 自分が決して「可愛い可愛いなるみちゃん」ではないという事実に。
 それって結構残酷なことだったのでは、と思わずにはいられません。

 断っておきますが、自分はなるみのことを可愛がってないってわけではありませんよ。
 休みの日に時間が合えば、映画やドライブや不思議博物館(!)に連れて行ったりしていますよ。可愛がってなければそんなところに連れて行くわけがない。
 なるみの方もそれなりに懐いてくれていると思います。
 ただ自分は、近親者特有のフィルターで、彼女の外見を修正していなかっただけです。
 そんなことをして、彼女の為になるとは思えなかったから。

 『美大受験戦記アリエネ』の主人公である歌川有は、小さい頃から家族に「お前は生まれつきの天才アーティストだ」と褒めちぎられて育つ。彼はその言葉を鵜呑みにし、以来漫画家になるべく、ひたすら漫画ばかりを描き続けてきた。
 しかし彼はある日知る。自分には漫画家の才能など欠片もないということを…。

 お袋がなるみのことを「可愛い可愛いなるみちゃん」といって可愛がったことも、有の家族が有のことを天才アーティストだといって褒めちぎったことも、それは愛情の為せる業ということはわかっています。
 ただ、その愛情の掛け方が正しいのかどうかというと些か疑問です。
 まぁなるみが本当に可愛い美少女であれば、もしくは有が本当に生まれついての天才アーティストであれば問題なかったんですけどね。

 とにかくなるみは自分のことを「可愛い可愛いなるみちゃん」と称することはなくなりました。
 たぶん、彼女にとってそう呼ばれていたことはただの幼い頃のエピソードの一つになったんだと思います。
 おそらくそれが普通の人の対応だと思います。
 別におかしくはない。

 でも有は違うんですよ。
 漫画家の才能がないと気づいた、というか気づかされた有が次に志したのが美大生。
 ないだろ、と思います。
 漫画もろくに描けない奴が美大生になれるはずがない。
 まるで因数分解もろくに解けない奴が高等数学を解こうとするようなもんですよ。解けるわけがない。
 
 でも有は、ほとんど持ち前のポジティブさだけを武器に、その道を一歩ずつ進んでいくんです。
 なれるはずがないと思いつつ、気がつくと有のことを応援したくなってる自分がいます。

 著者は山田玲司。
 『Bバージン』で商業雑誌連載デビューして以来、あっちこっち迷走している感がある漫画家ですが、久しぶりに面白いと思える作品のような気がします。
 今回初めて知ったのですが、山田玲司、ほんとに美大出だったんですね。笑。
 彼が美大出なんて露ほども思ったことがなかったです。
 まぁ美大出の漫画家といえばあのサイバラがいるけどね。

 あと、どうでもいいけど、姪っ子のなるみが外見はともかく性格がもう少し可愛くならないものかと思うんだけど、、、それも難しいか。笑。
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