この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

【バイバイ、ブラックバード】、ありえない、でもありえる。

2010-07-24 21:18:47 | 読書
 伊坂幸太郎著、【バイバイ、ブラックバード】、読了。


 【ゴールデン・スランバー】以後の第二期作品はどーもイマイチ趣味に合わず、実験的作品である【あるキング】なんてこれっぽっちも面白いと思えず、このまま伊坂幸太郎が自分にとって贔屓の作家ではなくなるんだろうか、なんて危惧したりもしたんだけど、最新作【バイバイ、ブラックバード】はめっちゃ面白かったです。

 伊坂幸太郎って現実的にはありえない設定のお話を如何にもありえるように書くのに長けた作家だと思う。
 前作【オー!ファーザー】は四人の父親を持つ高校生が主人公のお話だったんだけど、よくよく考えてみれば、主人公の母親はほぼ同時期に四人の男と避妊せずにセックスしたわけで、どんだけ性欲旺盛やねん!!と言いたくなる。
 でも、読んでる最中は(そして下手すれば読み終わったあとも)そういったことは読み手に考えさせない。
 それが何より伊坂幸太郎の巧さではないだろうか。

 本作【バイバイ、ブラックバード】は【オー!ファーザー】の主人公の母親を上回る五股をかける男が主人公のお話である。
 ありえないよね。
 いや、世の中、単に五股をかけた男というだけならいたとは思う。ホストか何かで。
 けれど、五股をかけていたことを打ち明けられ、付き合っていた女性たちの一人として男に恨み言の一つも言わないというのはありえないだろう。
 五人のうち一人か二人かそれ以上は、台所から包丁を持ち出して男をブスリと刺して当然ではなかろうか。笑。

 主人公はそんなありえない男なのに、読んでいて、もしかしたらこういう男もいるかも、って思ってしまうんだよね。
 やっぱり伊坂幸太郎は巧いよ。

 男のパートナーである「繭美」という名前の規格外の女性の設定も巧いな、って思ってしまった。
 ほとんど漫画のキャラクターといっていい「繭美」なのに、読んでいくうちにどんどん血肉を得ていくんだよね。
 最後に彼女の中で起こった変化、それは奇跡と言い換えてもいいんだけど、そのシーンは読んでいてぐっと来てしまった。

 繰り返すけど、伊坂幸太郎はやっぱり巧いよ。
 出来ればこれからもこの路線で行って欲しいんだけどなぁ。
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