この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

つまらない野球理論の面白い物語、『マネーボール』。

2014-11-22 23:31:22 | 読書
 マイケル・ルイス著、『マネー・ボール』読了。

 野球で勝ちたければどうすればいいか?
 野球で勝つことは実は簡単である。
 フォア・ボールを狙えばいい。
 少しでもストライク気味のボールはすべてファールカットで逃げる。
 あからさまにフォア・ボールを狙えば、審判もあからさまなボールでない限りストライクと判定するようになるだろうから、ストライクかボールか判別出来ないボールはともかくファールする。
 無論ファール狙いだって簡単ではないだろう。
 だが打球を前に飛ばすことに比べたら易しいはずだ。前に飛ばすことを放棄して当てればいい。
 ストライク、ボール、ストライク、ファール、ボール、ファール、ファール、ボール、ファール、ボール。そしてバッターは一塁へ。
 続く打者も同じくフォア・ボールを狙う。
 このような戦術を取られてはどんな好投手も三回持たないだろう。

 だがフォア・ボール狙いの野球は見ていて面白いのか?
 答えは「否」だろう。
 観客はエキサイティングなプレイを望む。
 フォア・ボール狙いは到底エキサイティングとは言えない。

 小説『マネー・ボール』の主人公、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャーであるビリー・ビーンが実践する【セイバーメトリックス理論】、通称「マネー・ボール理論」とは一言で言えばフォア・ボールを重視する野球理論である。
 正しい。圧倒的に正しい。
 正しいが同時につまらない理論でもある。

 自分は野球に限らずプロスポーツとは、ただ勝てばよいのではなく、勝ち方が問われるものだと思う。
 野球でフォア・ボール狙いを徹底すれば、間違いなく勝率は上がる。
 だが同時につまらない野球になるだろう。
 一番から九番まですべての打者がファール、ファール、ファール!
 そんな野球を誰が観たい?
 少なくとも自分は観たくない。
 だから自分は【セイバーメトリックス理論】を(その正しさを認めつつも)支持しない。

 しかし、貧乏球団のゼネラルマネージャーであるビリー・ビーンがその【セイバーメトリックス理論】を実践するために引き起こす、もしくは実践したために引き起こした騒動は読んでいてすこぶる面白かった。久しぶりに一気読みしたいと思える面白さだった。

 野球好きなら必読の一冊と言っていいと思う。
 もしくは優れたノンフィクションを求めているという方にもお薦めできる。
 また本書はブラット・ピット主演で映画化もされている。まずは佳作と言ってよい出来なので、一冊の本を読むのは気が進まないという方にはそちらの方を鑑賞されたし。
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