ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 梶田隆章著 「ニュートリノで探る宇宙と素粒子」 (平凡社2015年11月)

2017年01月29日 | 書評
物質のもとになる基本粒子ニュートリノの振動現象を証明し、ノーベル賞を受賞したスーパーカミオンデGによる実験物理学の成果 第8回

2) ニュートリノ観測(1)ー宇宙線、太陽、超新星爆発とニュートリノー研究の歴史概要(その3)

重い恒星の最期の爆発を「超新星爆発」と呼びますが、この時のエネルギーの99%はニュートリノとして放出します。カミオカンデはこの「超新星ニュートリノ」を観測し、爆発の理論が正しいことを証明しました。星の内部の陽子という燃料が無くなると中心部の熱が冷め、外へ向かう圧力が無くなります。すると星は自分自身の重みで中心部へ落ち込むことになります。星の中心部の圧力は非常に高くなり原子核同士が近づきヘリウムどうしが結びつく核融合反応が起こります。これ以降の核融合反応では核反応を抑制するニュートリノは反応に関与してきません。この段階で反応の速度は一気に増加し、その中心核にはヘリウムが主になり、炭素、炭素、ケイ素、シリコン、鉄という様に重い原子が形成され、自分重みで沈んでゆき「白色矮星」となって燃えかすの星になります。最終的には鉄の原子核に電子が吸い込まれ中性子だけの「中性子星」となります。ものすごい密度を持つ星です。密度が増加すると自転している星の回転速度も上がります。中性子が冷えるときに大量のニュートリノが放出されエネルギーを失ってゆきます。高密度の中性子星の温度は数百億度に達し素粒子のスープ状態になりますが、この熱を外部に運んでくれるのが、反応しない透過性のよいニュートリノなのです。ニュートリノは熱的にすべての種類(3種のニュートリノとその反粒子)が作られています。超新星爆発のエネルギーの99%はニュートリノが持ち去り、1%は光となります。カミオカンデで測定するニュートリノは主として電子ニュートリノですが、ニュートリノが水の陽子と反応して陽電子と中性子となる時に発せられるチェレンコフ光を観測することです。1987年2月23日マゼラン星雲中の超新星1987Aが爆発しました。カミオカンデは改修工事中でしたが、上部の水封工事が完了せず上部ふたが開放された状態になっていましした。この強運のせいでカミオカンデは超新星1987Aの爆発を偶然キャッチできたのです。ニュートリノが光の到着の3時前に到着したのです。データを解析後3月7日に論文はフィジカルレビューレターズに受理され、3月10日に掲載されました。そして同じデータはIMB実験でも確認され4月6日に同誌に掲載されました。この業績も考慮され小柴博士は2002年にノーベル物理学賞を受賞しました。

(つづく)