ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 柿崎明二著 「検証 安倍イズム」 胎動する新国家主義 (岩波新書 2015年10月)

2016年12月05日 | 書評
安倍流国家介入型政治(国家先導主義)は、戦前型政治体制へのノスタルジア その情緒的イメージ戦術に惑わされるな 第7回

1)  国家先導主義(国家介入型)政治とは (その2)

次は「人口問題」で、1億の人口維持政策である。「当事者からの提案・提言を起点に、経済財政諮問会議などを舞台にして、本来政府が介入してこなかった分野、領域に直接関わってゆく」国家先導型政策が、最も紆余曲折しているがゆえにその構造が鮮明に(滑稽に)浮かび上がってきたのが、人口目標の設定である。そもそも人口目標を設定するということは、「産めよ増やせよ」といった戦争中の近衛文麿内閣の「人口政策確立暢康」以来73年ぶりの出来事である。「約20年後に人口を1億、出産数は5児」という国家目標の為には個人の選択の尾自由を制限、人権侵害も辞さない国家主義や全体主義、軍国主義国家の典型であった。2014年骨太の方針で「50年後に人口1億程度」と明記された。しかし森雅子少子化対策担当相が主宰するタスクホースでは「出生率を設定するというのはあまり意味がない。女性に出産を押し付けるようで危険である」という反対論が噴出し、数値目標は先送りとなった。経済財政諮問会議の「選択する未来委員会」でこの目標が記載され、閣議決定にこぎつけた。出生数に言及せず人口1億人維持という文言で決着した。しかしこれとてどうするのかという具体案があるわけではなく政府の希望に過ぎないが、2015年9月24日安倍は記者会見で「出生率を1.8程度の回復させる(現状は1.4)」という踏み込んだ発言を行った。
デフレ脱却のための日銀の「異次元金融緩和」政策は「関わる政治」の始まりであった。第2次安倍内閣の発足以前に、安倍自民党総裁は第1次内閣で不評であった「戦後レジームからの脱却」の政治色を引き下げ、「デフレ脱却」のための経済政策を前面に押し出した。2012年9月「日本経済再生本部」を設置し、
①日銀法快晴も視野に入れた政府と日銀による協調体制の確立、
②年2%程度の物価上昇率の設定
を検討項目とした。12月16日総選挙で自民党が圧勝したことを受け、組閣前の18日、日銀の白川総裁に目標アコードを要請し、日銀は受け入れ政策協定を結ぶことになった。2013年1月9日、日銀と政府は共同声明を出し異次元の金融緩和を謳った。その代償として日銀を政府のコントロール下におくという日銀法改正は見送られた。日銀法改正が脅しという政治的なツールに使用された。この成功が、第2次安倍内閣のあからさまな民間や個人への国家介入政策の序章となったのである。
フリーカメラマンのシリア入国旅券返納事件は、安倍の思考と意志が特定の個人の移動の自由制限という人権侵害問題に発展した。2015年2月外務省は、シリアへの旅行を計画するフリーカメラマンに旅券の返納を命令した。旅券法19条に基づき生命、身体及び財産の保護のため渡航を中止させることができるというのが菅官房長官の説明であった。イスラム国ISによる攻撃を考慮して、安倍の国家安全保障の判断が入った例外措置であったようだ。個人の意思を無視してまで、国家の安全を優先す政策の一例であるが、これは2002年10月の拉致被害帰国者の国内とどめ置きの判断でも国家優先政策があった。安倍が本人の意志を後回しにして日本にとどめ置き、北朝鮮に残っていた子供や夫の帰国を要請するという政策を取ったという。莫大な機密費が裏で北朝鮮に提供されtことは想像に難くない。それに北朝鮮が乗ったことで無事救出できたというが、もしISのように人質を殺したらと思うと、安倍は国家のメンツの為、危険なかけに出たものである。

(つづき)