ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート アインシュタイン・インフェルト著 石原純訳 「物理学はいかに創られたか」(岩波新書 上・下 1939年)

2016年12月23日 | 書評
力学的自然観から相対性理論の創造と量子論まで、一切の数式を用いないで相対論思想を記述した古典的名著 第12回

Ⅳ 場・相対性(2)ー相対性理論 (その3)

直線上に点が連続してある時これを一次元連続体と呼び、平面上に連続して点が存在する時、平面は二次元連続体と呼び、空間に3つの座標で位置づけられる点が連続してある時その空間は三次元連続体と呼びます。質点の運動を考え時には時間の経過を考えなくてはなりません。簡単には直線上の質点の運動を時間軸に対してプロットすると二次元の空間軸(グラフ表記法)が得られます。空間座標が時間の関数として与えられるならそれは連続した曲線になります。そうすることで完全な運動を記述することができるのです。そこでは時間と空間は混合されてはいない古典物理学となる。古典物理学では全ての観察者に対して流れるただ一つの絶対時間だけを認めるのです。それに対して相対性理論は運動を時空の中に存在するあるもの(t,x,y,z)として表します。時間はすべての観察者に対して同じではなく、時間及び空間は二つの座標系で異なっています。相対性理論は出来事の世界は四次元連続体をなすと考えます。相対性理論の見地からは、空間と共に時間もまた一つの座標系から他の座標系に移ると変わるので、この出来事の四次元世界の四次元時空連続体が変化する性質はローレンツ変換で与えられる。ローレンツ変換は、アインシュタイン著 内山龍雄訳 「相対性理論」 (岩波文庫)によると、特殊相対性理論においてはx軸の直線運動(速度v)変換ではx'=γ(x-vt),t'=γ(t-vx/c^2),y'=y,z'=zここにγ=1/√(1-v^2/c^2) cは光速である。v/cがゼロと見なせうるほど遅い運動ではγ=1なのでt'=tとなり、x座標だけがx'=x-vtという変換を受ける(古典物理でいうガリレオの相対性原理)だけです。そもそも慣性系なるものがどこに存在するのかという根本的な問題が残っています。地球の堅く結びつけられた座標系だろうか、太陽に固く結びてけられた座標系だろうか。すべての外界の影響から免れる座標系は考えられないので、慣性系とは実用的な空想に過ぎないことが分かってくる。太陽と地球の運動は相対的で、コペルニクスの成功は座標系を地球から太陽へ移したことになる。太陽が絶対に静止しているかというとそれは難しい。だから地球が静止しているというのと、太陽が静止しているというのは二つの異なった座標系の便宜的な表現に過ぎない。月と地球の運動も同じことです。それならあらゆる座標系において成り立つ真に相対的な物理学が建設できるだろうか。いわゆる一般相対性理論がそれです。慣性系だけに適用される理論は特殊相対性理論と呼びます。統一理論を作ろうとする考えは単純でも、数学的には複雑になることは免れません。まず万有引力と幾何学の結合を仮想実験「昇降機の内と外」でみてゆこう。慣性の法則は物理学における最初の大きな進歩であったが、思考の上での理想的な実験です。まず突然綱が切れて落下する昇降機の理想化された実験を考えます。外の観察者は内の観察者が落とした二つの物体が、手から離れても床に落ちないで空中で静止している見なすでしょう。なぜなら昇降機の箱も物体も同じ加速度で落下するからです。(いわば無重力状態) 古典力学から言うと静止質量と重力質量には何の関係もないのですが偶然同等であり、質量に関係なく落下加速度は同じであるとみなします。昇降機の中の観察者は慣性系の性質を信じるでしょう。ところが外の観察者にとって運動は一様ではなく加速的であり、地球の重力の場の作用によります。このように二つの異なる座標系において異なる運動の記述が可能です。このような場合は万有引力を考慮することが必要です。万有引力の場において重力質量と慣性質量が同じであることが大切な基礎となっています。次に昇降機が加速度を得て上昇する理想的な実験を考えます。外の観察者から見ると床が上昇するので手から離れた物体はすぐ床に落ちるでしょう。また床に立っている観察者は飛び上がることはできず床に張り付いたままです。外の観察者には一様でない運動と万有引力の場がないことを認めることになり、内の観察者は静止と万有引力の場の存在を認めることになります。3つ目の理想化された実験は上昇する昇降機の一方の壁から発せられた光が対抗する壁に到達する光の通路を考えましょう。外の観察者昇降機の加速度を見ていますから、光が届くまでに対向する壁も上昇するため少し下の位置に到達するkとを信じるでしょう。内の観察者は昇降機のなかのすべての物体に万有引力の場が作用すると信じていますので、しかも光には質量がないので万有引力からは何影響も受けないと考えます。しかし内なる観察者の主張は正しいとは言えません。光はエネルギーを運び、エネルギーは質量を持っています。慣性質量と重力質量は同じなのですから光と言えど万有引力で引きつけられます。このことは万有引力の場では光線が曲がることが、日食の観察から万有引力の影響が証明されました。絶対運動とか慣性座標系を物理学から追放すると、そこに新しい相対的物理学が作られるのです。一般相対性理論が万有引力の問題と分かちがたく結びついてことと、重力質量と慣性質量が同等であることが本質的な事項です。万有引力の問題もあらゆる座標系に対して作る必要があります。

(つづく)