ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート アインシュタイン・インフェルト著 石原純訳 「物理学はいかに創られたか」(岩波新書 上・下 1939年)  

2016年12月12日 | 書評
ノーベル賞授賞式のアインシュタイン

力学的自然観から相対性理論の創造と量子論まで、一切の数式を用いないで相対論思想を記述した古典的名著 第1回

序(その1)

この本のカバーに書かれた紹介文に「専門的予備知識を持たない読者のために、現代物理学の全貌を平易に解説した万人のための入門書」とあり、また「数式を用いず巧みな比喩と明快な叙述によって・・・」と本書の特徴を述べていました。しかしこういったうたい文句がはたして適切かどうかはわかりません。例えば数学を紹介する本が数式を用いないで解説することができるだろうか。幸いなことに物理学は経験科学(実験科学と言ってもいい)であり、数学と違って抽象度合いが少ないとは言うものの、現代物理学は数学なしには語れない。したがって、数式なしで解説されたイメージを理解したというのはどういう意味合いを持つのだろうかという疑問がわく。分かったという意識(認識論)はそのレベルがひとさまざであり、数式を並べられても拒否反応を起して本を閉じてしまう人もいるのでその辺が難しい。科学の啓蒙書の宿命みたいな感が付いて回る。例えば本書のアインシュタインの文章一行の内容には、専門書一冊分の内容が詰まっている場合がほとんどである。あるいは専門分野全体を概観しなければならないことがある。数式がないから容易に理解できるとの説は誤解である。実は数式があったほうが理解は確実である。それには長い時間の勉学が必要になって、理科系以外の人には酷である。そこで本書は一切の過程を省いて相対論の結果だけを示して、相対論を通してみた世界観の把握に重点をおいている。考え方を切り替えると世界は変わることを示した名著である。相対論は光の速度の世界である。つまり電磁気と宇宙の世界である。この地球上の運動の世界は光の速度に比べると無視できるほど小さいので、ニュートン力学の世界である。これをガリレオの相対論ともいう。特殊相対論ではローレンツ変換を施すと、光速度は一定とすると時間も距離も縮小するのである。この観点が1905年のアインシュタインの相対性理論論文の出発点であった。ここでアインシュタインの業績と経歴を振り返っておこう。アルベルト・アインシュタイン(1879年3月14日 - 1955年4月18日)は、ドイツ生まれのユダヤ人の理論物理学者。特殊相対性理論および一般相対性理論、相対性宇宙論、ブラウン運動の起源を説明する揺動散逸定理、光量子仮説による光の粒子と波動の二重性、アインシュタインの固体比熱理論、零点エネルギー、半古典型のシュレディンガー方程式、ボーズ=アインシュタイン凝縮などを提唱した業績により、20世紀最大の物理学者とも、現代物理学の父とも呼ばれる。特に彼の特殊相対性理論と一般相対性理論が有名だが、光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明によって1921年のノーベル物理学賞を受賞した。

(つづく)