ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医療問題 医療情報を如何に伝えるかー活字以外の手法

2010年11月19日 | 時事問題
「絶望の中の希望ー現場からの医療改革レポート」 第70回(2010年11月17日)「第5回現場からの医療改革推進協議会シンポジュームー如何に伝えるか」  東京大学医科学研究所 上昌広 より 

 医療は専門性が高いゆえに、如何に国民に伝えるかが重要である。医療関係者はマスメディア、インターネットを通じて努力してきた。活字に頼るだけでは限界があり、国民に分りやすく伝える手段として、シンポジュームでは①デザイン(挿絵、玩具、図解、グラフィック、映像) ②芸術(解剖図と絵画、博物展覧会) ③論壇(作家、社会学者など) ④患者の発言(薬害肝炎訴訟運動につながった患者の訴えと共感)などが発表された。

読書ノート スチュアート・カウフマン著 「自己組織化と進化の論理」 ちくま学芸文庫

2010年11月19日 | 書評
「複雑系の科学」が導く生物進化の理論、「自然淘汰」だけでは進化は語れない 第2回

 蔵本由紀著「非線形科学」(集英社新書)を簡単に振り返っておこう。大げさに言えば複雑系の科学の目的は宇宙の秩序の法則・構造に逼ることである。「非線形科学」は数理的な科学である。数理的な法則がなければそれは自立できる科学ではなく「オカルト」とみなされる。ダイナミックに変化する世界において普遍な構造を見出す事が必要である。古典力学のような巨大な建造物の法則と同様に、素粒子論においてもミクロな世界の法則は普遍であるという考えに基づいている。素粒子から原子、分子、物質、地球、宇宙までの一列の知的構造が普遍である。この両端の素粒子と宇宙のビックバンの理論が合致するとは、まさに驚嘆である。ところが非線形科学はミクロな要素的実体にまで遡る事はしないで、複雑な現象世界に踏みとどまってその構造性に不変原則を見ようとする科学である。不変原理は普遍原理である。現象を「何が何する」というとき、主語は何であれ述語の不変性によって異質な主語が急接近するのである。本書はこう結んでいる。「複雑な現象世界には、多くの不変構造がまだ潜んでいる。その発掘は21世紀の科学の主要な課題の一つである」 著者が「自然のダイナミクスの根源」の研究に入るきっかけを与えた本が、パウル・グランドルフ、イリア・プリゴジン著「構造・安定性・揺らぎーその熱力学的理論」(1971 Wiley出版)だったそうだ。自然のダイナミックスの骨格とは「崩壊」(エネルギーの散逸)と創造(自己組織化)が中心の話題となる。1967年イリア・プリゴジンがはじめて「散逸構造」という概念を打ち出し、マクロな世界が「エネルギー保存の法則」(熱力学第1法則)と「エントロピー増大の法則」(熱力学第2法則)という二つの普遍的な法則に支配されて、熱平衡を目指している事を述べた。すなわち熱力学第2法則はエントロピーが増大する(散逸する)不可逆的過程であるということだ。ボルツマンはこれを宇宙の「熱的死」と呼んだ。しかしエントロピーが外部世界に放出され続ける限り、物質の運動や構造が維持され、システムはバラバラの平衡から離れた状態を保つことが出来る。物質的多様性は超高温でバラバラにならない限りこの地上では維持されるのである。太陽では核融合が起きているが100億年の間はその輝きを失わない。振り子時計は巻かれた板ばねのエネルギーを変換しながら生成するエントロピーを放散している安定な状態にある。このようなシステムを「非平衡開放系」と呼ぶ。地球という開放系は、ビックバンで与えられた内部エネルギーをゆっくり放出しながら冷えつつある。
(つづく)

文藝散歩 永井荷風 「断腸亭日乗」

2010年11月19日 | 書評
永井荷風42年間の日記 個人主義者の孤独な生 第41回 

永井荷風著 磯田光一編 摘録「断腸亭日乗」岩波文庫 第24回 

1935年(昭和10年 荷風57歳)
元旦雑司ヶ谷墓地に先考の墓を掃う。電車に乗り三の輪で下りる。日本堤から吉原へ、大音寺の子安地蔵尊と安政震災遊女供養の碑をみる。 
1月2日暖か夕刻銀座富士アイスで夕餉を食し、真砂屋に憩う。五句出来る。 
1月14日セネシャルの「現代仏文学史」を読む。美濃部達吉博士糾弾排斥のビラ多く貼らるる。 
3月15日キュペルにて元帥の娘家出をなし浅草の女給となるという風聞を聞く。その筋により厳重に口止め、新聞社の記事も差し押さえたというが、人の口に蓋はできない。 
3月30日神代掃葉氏心臓麻痺で死去。53歳。 
6月16日アーネストサトウの「維新外交史」は日本人の維新史に多い道徳的判断少なくて公平で全体の流れが手に取るように分る名著であるという。 
7月25日ラジオで森鴎外の「山椒大夫」を浪花節に変えた放送を聞く。鴎外先生は浪花節は不愉快だとして好まれず、今日浪花節は国粋芸術とか称して軍人に好まれしが、本来浪花節は最下等大道芸に過ぎずと荷風先生は見下しておられる。 
8月8日酒場へ刑事が入り込み手入れをなす。これがため裏通利の怪しげなる酒場は閉店する者が出る。表通りにも街娼の影少なくなりたり。 
9月10日銀座タイガー閉店、森永菓子店が買い取ったという。 
10月8日山茶花咲き始める。尾張町竹葉亭に食事をし、キュペルに憩う。 
10月25日浅草公園を散歩。待乳山に登る。猿若庁の様子もすっかり変わってしまった。堀は暗渠となって埋め立てられ、新築の橋多しという。 
10月28日歌舞伎座に坪内博士の銅像が建てられたいうが、歌舞伎座の本当の功労者は福地桜痴ではないかと憤慨。 
12月14日「岩倉全権大使米欧回覧記」を読む。「時々人をして失笑噴飯せしむるものあり」僅か3年前までは鎖国攘夷を唱えて、通商条約に反対し、外国使節に切りつけたり火を放ったに人間が舌の根が乾かぬ間に文明開化を唱える。堀田や井伊掃部頭の方がづっと先見の明があったというべき。戦後軍国主義者が急遽民主主義者に変身した如く、日本人の最もいやしむべき性格である。
(つづく)

筑波子 月次絶句 「告 別」

2010年11月19日 | 漢詩・自由詩
郷封告別一行書     郷封に告別 一行の書

驚愕涙流頭未梳     驚愕涙流 頭未だ梳らず

三省親恩懐陸橘     親恩を三省し 陸橘を懐い
  
一慙不孝想潘輿     一に不孝を慙じ 潘輿を想う


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(韻:六魚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 ワーグナー 楽劇「ニーベルンゲンの指輪ー第1日 ワルキューレ」

2010年11月19日 | 音楽
ワーグナー 楽劇「ニーベルンゲンの指輪ー第1日 ワルキューレ」(CD 2枚組)
ピエール・ブレーズ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団
芸術総監督:ヴォルフガング・ワーグナー 演出:バトリス・シェロー
DDD 1980 PHILIPS


大空想劇の始まり始まり、「ワルキューレの騎行」は管弦楽として演奏されることも多い。