ブログ 「ごまめの歯軋り」

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研究関連独法(文部省) 組織巨大化に待った

2010年11月02日 | 時事問題
asahi.com 2010年11月2日7時29分
国立研究機関構想に蓮舫氏「焼け太り」 文科省を批判
 研究開発の独立行政法人(独法)を統合する「国立研究開発機関」構想に、蓮舫行政刷新相が「待った」をかけている。省庁の縦割りを廃し、効率的な研究を可能にすることを理由に文部科学省などが検討している構想だが、独法の人員や予算などを見直す基準を策定中の行政刷新会議は「文科省の焼け太り作戦だ」と反発している。
 今回の構想は、理化学研究所や宇宙航空研究開発機構など38法人を再編し、新組織へ移行させるというもの。関係する9府省の副大臣らでつくる「研究開発に関する検討チーム」が4月に策定した中間報告に盛り込まれた。 一方、行政刷新会議は、4月と5月に研究開発関連の独法などを対象に事業仕分け第2弾を実施。年度内に独法全体の体制を見直す基準を策定する予定である。

蓮舫氏の指摘はするどい。官僚機構は研究機構再検討に先立ち、目潰しの再編計画をでっち上げ、組織の巨大化をもくろむ。いつもながらの官僚の手口を見破った蓮舫氏に感服する。官僚の計画に同調する海江田文部大臣の不見識では自民党時代と同じ。

読書ノート 正田 彬著 「消費者の権利」新版 岩波新書

2010年11月02日 | 書評
消費者庁施行時点で、消費者の権利を再検討する 第1回

 2008年9月5日農水省は「三笠フーズが輸入事故米穀を食用に転用して販売していた」と発表し、社会に衝撃を与えた。それより以前に2007年より問題となっていたメタミドフォスに汚染された中国輸入冷凍餃子が、実は中国国内でも発見されたことが2008年8月11日の毎日新聞が報じた。中国毒入冷凍餃子事件で明らかになったことは、輸入食品の検査体制の問題と、輸出入業者の契約と責任内容の問題である。想定外の化学(農薬)物質については税関を初め農水省や、輸入業者(JT)、販売業者(生協)の検査がどの段階でも実行されていないことである。まして数パーセントの抜き打ち検査では発見することは難しい。毒入りとなると警察が動き、輸入となると農水省や外務省が動くため秘密主義の壁に遮られて国民消費者に情報がすばやく的確に公開されないことも2次的問題と明らかになった。食の安全問題が連鎖反応のように連続しておき、連日賞味期限切れ食品の問題が報じられた。これにより当時の自民党政権の農水大臣と事務次官の首が飛び、福田首相は「消費者庁」の設立を約束し、2009年5月の消費者庁設立関連3法案が国会を通過し、麻生内閣交代のぎりぎりに9月1日消費者庁が発足した。この消費者庁発足と関連法案の施行で本当に消費者の安全と権利が守られるのかを本書の著者で独禁法の専門家正田 彬が検証しようとした。消費者問題とは食の安全だけではなく、商法でいう契約の不備問題までを含む幅広い消費者保護と権利の問題である。本書「消費者の権利」岩波新書は実に約40年前の1972年に刊行されて好評であった本であるが、著者は最近の社会活動の変化に鑑みて全面的に書き直したものであるが、「消費者の権利」は「環境権」と同じく消費者の生活を脅かすものに対する民主社会の基本的人権と捉える考え方は前書から貫かれている。
(つづく)

文藝散歩 永井荷風著 「断腸亭日乗」

2010年11月02日 | 書評
永井荷風42年間の日記 個人主義者の孤独な生 第25回

永井荷風著 磯田光一編 摘録「断腸亭日乗」岩波文庫 第8回 

「断腸亭日乗」(1917年ー1958年、大正6年ー昭和33年)(1)

1917年(大正6年 荷風39歳)
9月16日から起筆され、最初から胃腸の疾病で苦しむ様子が記されている。大久保の大石医師の来診を待つために木挽町に一屋を借りて往診を願っていた。当時荷風は故父の旧宅を永の住み家として住んでいたが、それとは別に書斎とベットのために一軒の陋屋を借りていた。「無用庵」と呼び、そこで「おかめ笹」を執筆した。父の旧宅は「断腸亭」と呼ぶ。
10月13日「文明」創刊にことで相談あった。
12月4日「腕くらべ」校正終了、翌5日脱稿なった「おかめ笹」を中央公論社に渡す。

1918年(大正7年 荷風40歳)
荷風は正月には必ず雑司谷の父の墓に参ることを習慣にしていた。毎年寒くなると、庭に一羽の山鳩が来る。群れないで孤立した山鳩を見ては自分の偏屈な生涯に似ていると嘆息する荷風であった。 
1月20日堀口大学が来訪し、書の序を請われた。 
4月唖々氏と雑誌「花月」の発行を企てる。 
5月3日築地に清元の稽古がえり麹町にて台湾人一行を引き連れる警官を見て、「今の世の中に人食うものより恐ろしき人種あり」と日本人の植民地人を蔑む様を罵倒している。 
8月8日土蔵の床下に父の遺愛の壺を発見して、母が自分から隠したのだと絶望感に襲われもはや父の旧宅から出てゆく決意をしたようだ。 
8月9日このころ付き合っていた新橋巴家の芸妓八重次入院すの記事あり。 8月15日米暴動が起きる。政府は暴動の記事を禁止したという。 11月12日断腸亭の買い手がついたので、12月中旬に手渡しと決定。 
11月21日日比谷公園で労働者のデモを見て、下層社会が窮迫していることを知る。 
12月22日築地の陋屋を買い引っ越す。なお大久保の父の旧宅は26216円で売れた。
(つづく)

筑波子 月次絶句 「秋日山行」

2010年11月02日 | 漢詩・自由詩
筑峰上下満山紅     筑峰上下 満山紅に

霊岳燃姿落日中     霊岳燃ゆる姿 落日の中

翠樹丹楓飄夕照     翠樹丹楓 夕照に飄り
  
林梢孤雁泣秋風     林梢の孤雁 秋風に泣く


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(韻:一東 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)