ブログ 「ごまめの歯軋り」

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曝露趣味の愉快犯のしわざ、自民党の政府攻撃は的はずれ 

2010年11月12日 | 時事問題
asahi.com 2010年11月12日5時8分
「記録媒体は壊して捨てた」 保安官、事情聴取に説明
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、「自分が流出させた」と名乗り出た神戸海上保安部の男性保安官(43)が、警視庁と東京地検の事情聴取に「インターネットカフェのパソコンから映像を投稿する時に使った記録媒体は、壊して捨てた」と話したことが11日わかった。映像については、翌朝ネットで騒ぎになっているのを確かめた後、自宅のパソコンから動画投稿サイトにアクセスして削除した、とも説明したという。

asahi.com 2010年11月12日3時5分
ビデオ映像、海保内に拡散か 情報共有の慣行が裏目に
 「映像は船上のパソコンで、職員ならほぼ誰でも見ることができた」。尖閣事件のビデオ映像が流出した事件で、神戸海上保安部(神戸市)の男性海上保安官(43)が捜査当局の事情聴取に答えたことで、問題の映像が広範囲に流布していた疑いが出てきた。「捜査資料」が厳格に管理されなかったのはなぜか。海保内で事件や事故の映像や資料を「共有」し、職務に役立ててきた慣行が裏目に出た。
 海保では経験の少ない若手保安官らのために、活動の様子を収めた映像を研修用に編集することは多いという。元海保警備救難監の武井立一さん(70)は、「大きな事件や事故の場合、担当の管区本部だけでは人が足らず、全国に11ある他の管区本部と映像などの資料を共有して対策をとることは一般的。石垣海保が当時、内部の研修資料として配ったことは理解できる」と話す。

事件当日から秘密扱いであったことはないだろう。その間、情報共有で関係者が閲覧するのは組織として当然な行為である。問題はその情報を一般公開した海保官にある。だからこれは情報拡散ではなく、情報遺漏事件である。この新聞記事はそこを間違えてはいけない。官僚の秘密主義を助長し復活させるような世論を導いてはいけない。

読書ノート 正田 彬著 「消費者の権利」新版 岩波新書

2010年11月12日 | 書評
消費者庁施行時点で、消費者の権利を再検討する 第11回

3)消費者が市場の価格決定に参加する権利 (2)

 独占禁止法による「不公正な取引方法の禁止」において、公正な競争を疎外しないために事業者による取引上・競争城の力の不当な行使は禁じられている。しかし事業者がガリバーのような強大な力をもって支配することは必ずしも必要ではない。流通過程における力を行使することにより、取引相手方に自社の製品を中心に扱わせるようにする「流通系列化」が行われている。また「再販売価格維持行為」は卸売業者や小売業者への「不当な事業活動の拘束」に当たるとして独占禁止法で禁じられている。これらの力の濫用とは少し違うが、「不当表示」は消費者と事業者の商品・サービスの認識能力の差異に基づくとして、競争秩序の前提を崩すものとして独占禁止法の枠で対応することになっている。「不当廉売」(ダンピング)は独占禁止法では「不当な低価格販売」も不公平な取引として禁止している。廉売は消費者のために行っているわけではなく、不当な客寄せにあたる。資本力の大きな事業者による競合相手の一掃であり、この廉価で資本の小さな事業体は赤字になり首の根を絞められるのである。シェアー第1位の事業者がよくやる手である。景品や懸賞を巡る競争が独占禁止法の「不当な顧客誘引行為」として一定の制限内で規制されている。広告については今のところ規制はない。また中小企業の共同組合が行う相互扶助のための共同行為は独占禁止法の適用除外である。新しい問題として、いまや百貨店やスーパを抜いて流通業界の雄ともてはやされるコンビニのフランチャイズシステムに関する独占禁止法の考えによるガイドラインがある。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サンクスの4強の店舗数は35000店(全国50000店)である。ここで問題となるのが商品販売価格の均一化、値引き禁止販売を強いることである。2009年6月公正取引委員会はセブンイレブンに対して値引き販売を不当に制限したとして排除命令を出した。
(つづく)

文藝散歩 永井荷風 「断腸亭日乗」

2010年11月12日 | 書評
永井荷風42年間の日記 個人主義者の孤独な生 第35回 

永井荷風著 磯田光一編 摘録「断腸亭日乗」岩波文庫 第18回 

1928年(昭和3年 荷風50歳)
1月2日壺中庵に立ち寄りお歌を伴って雑司ヶ谷の先考(故父)の墓と柳北の墓を掃う。 
1月20日関氏より人形町の舞踏場の警察の手入れの話を聞く。閉場後は客の誘いでどこでへでも行くようで、娼婦の一夜の値段は30円から100円とのこと。 
1月25日春陽堂より全集本の印税5万円受け取る。 
2月3日お歌、芝玉木屋の味噌醤油を買ってきたる。玉木屋は江戸以来の老舗で味の変わらないことに驚く。そして当世批判「初めのうちは勉強して精を出すが、少し繁盛すると見れば忽ち品質を悪くし不正の利を貪る。商人のみならず日本人一般の通弊なり」  
2月5日荷風は毎夜惣菜をこしらえて来るお歌のことを「正直にて深切なり、かくの如き可憐なる女に出会いたることは誠に老後の幸福というべし」と誉めている。 
2月15日愛宕山の放送局焼失。
3月24日神楽坂の待合「蔦の屋」を買い、お歌は待合「幾代」を開くつもり。壺中庵を引き払い三番町に移る。
5月6日夜は毎晩3番町へゆく。 
5月30日森先生全集の「ゲーテ伝」を読む。 
7月25日在留シナ人、南京新政府樹立祝の行列練り歩く。 
8月25日永代橋のたもとから春本浄瑠璃脚本4冊を投げ込む。人に見られることを恥じるためである。 
11月27日終日病床に臥し「論語」を読む。 
12月2日飛行機の飛ぶを見て児童喜ぶ。之は日本人の発明にあらず「日本人の得意とするところは他国の人が苦心惨憺の余発明せし物を窃取して恥じないことである。開国以来60年一物の創造発明する所なきもまた一驚に値す」と文明批評の目は厳しい。 
12月28日築地劇場にて小山内薫氏の葬儀があるが行かず。 
12月31日除夜の繰言。「白髪も1,2本はあるが、されど淫欲の失せたること驚くばかり。わが身に定まりたる妻のなかりしも幸いのひとつなり。予は平生文壇の士を目して人間の屑なりとせり。文壇の輩のとやかく言うが如きは蚊の鳴くに異ならず」
(つづく)

筑波子 月次絶句 「寒風到来」

2010年11月12日 | 漢詩・自由詩
雖自陽斜日未甫     自と陽斜めと雖も 日未だ甫ならず

梧桐褐色已凋枯     梧桐褐色に 已に凋枯

風鳴葉散知多少     風鳴き葉散ること 知る多少
   
庭樹遺花問有無     庭樹の遺花 有無を問う


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(韻:七虞 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)