ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 正田 彬著 「消費者の権利」新版 岩波新書

2010年11月07日 | 書評
消費者庁施行時点で、消費者の権利を再検討する 第6回

 2004年6月に制定された「消費者基本法」がある。「消費者保護法」を発展させたものであるが、「消費者の責務」とか「消費者の自立」とかいって事業者の責務をあいまいにし、消費者にも罪があるかのような表現が見られる。これは進歩ではなく「後退」であろう。2009年9月に消費者庁が発足したいま、各省庁のタテ割り行政で齟齬している消費者関係法を統一的に見直す時期ではないだろうか。結局消費者を守るのは法制度と消費者運動のパワーであろう。政府に圧倒的な影響力を持つ事業者団体と対等とは言えなくとも、、労働行政における企業、労働団体、政府の三者団体と同じような力を持たなければならない。ということで本書は消費者の4つの権利と、消費者行政、消費者運動の6つの項目について著者の言い分を聞いてゆこう。
(つづく)

文藝散歩 永井荷風 「断腸亭日乗」

2010年11月07日 | 書評
永井荷風42年間の日記 個人主義者の孤独な生 第30回

永井荷風著 磯田光一編 摘録「断腸亭日乗」岩波文庫 第13回 

1923年(大正12年 荷風45歳)
1月は帝国劇場でトスカ、トラウィヤタ、フォーストを聞き、モーリス・ラベルの評伝を読むなど音楽に浸る。 
5月3日庭の若葉較べを楽しみ、郁子の蔓の植え替えなどごく普通の庭好きの側面が見られた。 
5月17日森鴎外の「渋江抽斎伝」を読み、言文一致と古文体の文致高達の味を賞賛。 
5月19日中川に遊び、銀座で食事をして帰る。 6月8日深川より行徳に行き船に乗って中川放水路に遊ぶ。 
6月18日素人女紹介家に行き10円で遊ぶ。 
7月6日市川に遊ぶ。  
7月11日唖々氏逝去の報を受け東大久保に行き焼香をして帰る。 
8月5日鷲津先生の考証せんとして、「春濤詩抄」、「東京才人絶句」を読む。 
8月19日谷中瑞輪時に大沼枕山の墓を展する。 
9月1日関東大震災起きる。愛宕山に登り市中の火を展望する。河原崎長十郎一家が偏奇館に避難した。 
9月3日放火するものありという噂が流れ人心恟恟として警備にでたという(大杉栄や朝鮮人虐殺の記事はない)。 
10月3日日比谷公園を通ると仮小屋が建ち糞尿の悪臭が堪えられないほどで、愛宕山に登ってみると一望渺渺たる焦土にして、房総半島までよく見えたという。そして「つらつら明治大正現代の帝都を見ると、いわゆる山師の玄関に異ならず、愚民を欺くいかさま物に過ぎざれば、灰燼になりとしとしてさして惜しむに及ばず」といって、強がっていた。 
10月16日池之端にて神代氏に会う。 
11月3日鷲津・大沼枕山二家の伝を起草し「下谷のはなし」と命名した。この年に付き合った女にはお房、秀梅、お栄などの名が見える。
(つづく)

筑波子 月次絶句 「晩秋山痩」

2010年11月07日 | 漢詩・自由詩
青霄後岳白雲浮     青霄の後岳に 白雲浮かび

香靄前渓紅葉秋     香靄の前渓は 紅葉の秋

疎雨連暁山骨痩     疎雨暁に連り 山骨痩せ
  
群林落葉水痕収     群林落葉 水痕収まる


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(韻:十一尤 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)

CD 今日の一枚 ハイドン 「交響曲全集」

2010年11月07日 | 音楽
ハイドン 「交響曲全集」(CD33枚組)
交響曲第1番ー第104番
アダムフィッシャー指揮 オーストリア・ハンガリー・ハイドンオーケストラ
DDD 1987-2001 BRILIANT

交響曲の父といわれるハイドンはシンフォニー形式やソナタ形式の祖でもあり、生涯104曲の交響曲、83曲の弦楽四重奏曲、52曲のピアノソナタ、4つのオラトリオ、34曲の歌劇を作曲した。ハイドンの本質は大らかさと平明さにある。この全集は33枚のCDからなるので、いちいちコメントはしない。