癌春(がんばる)日記 by 花sakag

2008年と2011年の2回の大腸癌手術
   ・・・克服の先に広がる新たな春を生きがいに・・・

吉村昭著『大黒屋光太夫』

2016年12月07日 | 読書・映画

 やはり、吉村昭の歴史小説は面白い。斜め読みや飛ばし読みなどせずにじっくり読んでしまう。

 大黒屋光太夫は、江戸時代後期の伊勢国白子(現三重県鈴鹿市)の港を拠点とした回船(千石船)の船の頭だったが、天明2年(1782年)、嵐のため江戸へ向かう回船が漂流し、アリューシャン列島のアムチトカ島に漂着。長い年月を掛けて、17名の水主(かこ)の内12名の死を乗り越えて、極寒のシベリアを横断し、ロシア帝国の帝都サンクトペテルブルクで女帝エカチェリーナ2世に謁見して帰国を願い出、漂流から約9年半後の寛政4年(1792年)に根室港入りして帰国している。帰国後には、その後の幕府の日ロ関係への進展に大きな役割を果たしている。
 なお、映画化されている井上靖著『おろしゃ国酔夢譚』も、この大黒屋光太夫が主人公である。
 
 8ヶ月にわたる漂流、想像を絶する極寒のシベリアを旅する厳しさなどの臨場感溢れる描写、当時の時代背景、極東やロシアの風土や集落や都市の様子、一番の恩人となるキルロ・ラクスマンを初めてとする不思議なほどの次々と現れる支援者とのふれあいなど、実にきめ細かな取材に基づく細やかな表現に、どんどん引き込まれて朝から夕方まで掛けて、一気に上下巻とも読んでしまった。

 非常に助かったのが、下記の地図だった。このお陰で地理的な距離感や要した年月などが分かり、とてもイメージ豊かに読み進めることができた。

相原秀起著『ロシア極東 秘境を行く』より抜粋