あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

中佐の片影・其十九 『 現代の典型的武人 』

2022年02月27日 18時08分59秒 | 相澤中佐の片影


相澤三郎中佐

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相澤中佐の片影
( 二 )  中佐の片影
其十九  ××少尉


自分が親しく中佐殿の薫陶を受けたのは士官候補生時代である。
當時聯隊は満洲事變の爲め出勤中のこととて若い將校は殆んど居らず、
繁激な勤務に追はれて誰も相手にしては呉れなかつた時
一人此の多忙の中にあつて、
愛撫され手を取つて指導された人は實に中佐殿であつた。
而も懇切丁寧、熱誠宛も親の子に對するが如くであつた。
一見硬骨な中佐殿はその接するや
慈母の如く温情溢れ、血もあり 涙もある 言ひ知れぬ懐しみを皆齊しく抱いて居た。
一度劍をとれば教士の腕ある人などとはどうしても見えなかつた。
一度口を開いて、皇室を説くや、熱誠言外に溢れ赤心鐵をも熔かす慨があつた。
昭和八年九月本科に入校
中隊長森田中佐は
候補生に對する訓話の時間、

現代の典型的武人として
相澤三郎中佐殿の偉大なる人格を引用して
我々に斯くあれと教へられた。

偉大なる中佐殿の人格。
その中に何処か大西郷に相通ずる何ものかが
多分にあるやうに思はれるのである。

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