嶋津隆文オフィシャルブログ

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長江の事故に思う中国の国家プロジェクト三峡ダム

2015年06月04日 | Weblog

長江での事故ニュースが報じられています。6月1日の夜、南京から重慶に向かっていた大型客船が竜巻にあおられて転覆したとのこと。乗客456人のうち、大多数は行方不明という大惨事です。

現場長江の三峡界隈は「三国志」の舞台であり、かつて李白が「朝に辞す白帝 彩雲の間」の白帝城を擁した絶景の地です。三峡ダムに沈む前に見ておきたいと、北京の副市長に案内されてこの地を訪れたのは15年ほど前のことでした。

三峡の現地責任者はその時の説明で、この大プロジェクトの意義を3つあげていました。①多くの人命を奪う洪水の予防、②不足する電力の確保、③水運の整備による経済振興、というものです。

「しかしデメリットもありますね、歴史の舞台が水没してしまう。しかも100万人以上の住民の転居も実行せねばならないのでは…」。こう質問した私たちに返ってきた返事に驚かされました。

「いえ、私たちが心配するのは、この三峡ダムが有事に敵のミサイルの攻撃目標にされることです。ここが破壊されれば膨大な人命が失われるだけでなく、経済的打撃も計り知れません。国家的な危機となります」。

ダム開発で懸念する事項は歴史文化遺産や自然の喪失ではなく、100万人の土地収用と生活の心配でもなく、はっきり国防的視点であったのです。平和ボケしている私たち日本人には目から鱗でした。

それにしても一昨日に起きた転覆事故。ミサイルによるダム決壊で100万の命が失われることが危険と発言していた中国政府担当者にとって、観光客458人の人命はどれほどの重みを持つものでしょう。そんな思いに気持ちが重く沈むのは否めません。

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