写真:「西夏文字とはこんな文字」
昨夜、夕刊を開いてふと目に止まった訃報記事がありました。西田龍雄京大名誉教授死去、83歳。西夏研究の道を開き世界的に評価された文化功労者。
西田龍雄先生。直接には一度も会ったことはありません。しかし私には一番忘れられない先達の一人です。
高校生の頃、この西田先生が幻の西夏文字を解読したという、小さな新聞記事を目にしました。えっ、西域のあの西夏国に挑戦している日本人がいたのか。凄い。当時、シルクロードに嵌っていた自分には衝撃的な事件でした。
よし、大学は京大に行こう、そして西域に行こう。こう決めて京大を受験したのです。当時京大には梅棹忠男、今西錦司、吉川幸次郎らキラ星のごとき人たちがおられました。しかし落第します。
仕方なく東京での学生生活となるのですが、シルクロードという地名の持つロマンはいつまでも自分の脳細胞に刻まれて今日に至っています。大学を出て暫くして未だソ連領だった頃にサマルカンドやブハラを訪れ、60代の今もチベット(吐蕃)に行く等、病膏盲(こうこう)に入ってしまったのです。
かように西田先生は、10代の若く苦い思い出であり、私の60年の足跡にもう一つの方向をつけてくれた人なのです。