先週の2月5日の日曜は「遠雷忌」でした。63歳で逝った立松和平の14回忌。会場は菩提寺の下谷の法昌寺で、絶叫詩人としても知られ、立松のよき理解者であった福島泰樹住職の、朗々たる読経を聞きながら黙想の時を過ごしました。
直会は、いつもの近所の中華料理屋。時のたつのは早いもので、立松和平を「わっぺい」と呼ぶ、団塊世代の同僚も20数人ほどに固定化してきています。その一人、映画監督の高橋伴明がやや遠慮しながら「今回はキネマ旬報の映画監督賞をもらいました」と報告。大きな拍手を受けました。受賞作は『夜明けまで、バス停で』。
そういえば高橋伴明が、連合赤軍リンチ事件を扱った立松和平の小説「光の雨」を映画化したのは2001年。もう20年が経ちます。小説「光の雨」は雑誌に連載中の1993年に、死刑囚として獄中にあった坂口弘から盗作と抗議を受け、筆を折った作品です。しかし立松和平はその後、新たに「光の雨」を完成。そんな傷心の彼への、エールを込めて制作したのが映画「光の雨」といってよいでしょう。
連合赤軍事件の苦い過去。盗作事件の重い記憶。そうした経緯を皆知るだけに、直会の会場での伴明監督へ送られた拍手は、ひとしく「わっぺい」への供養であったことに間違いないのです。
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