嶋津隆文オフィシャルブログ

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倉本聰の「こだわり」に久方ぶりに納得する

2010年04月16日 | Weblog

写真:フジテレビ「北の国から」

一昨日、近くの寺院で脚本家の倉本聰の講演会があり、桜吹雪の中を旧立川飛行場界隈に足を運びました。彼の作品「北の国から」などは、いうまでもなく全国民の生活と想い出の中にしみ込んでおり、私にとっても彼の存在は殆ど事件といってよい強烈さで身体にしみ入っています。それだけに大いに期待して会場に向かいました。

倉本聰とは、20年前のニューヨーク駐在時にお会いしました。その時の話しはまだ鮮烈に記憶にあります。彼はこう言っていたのです。私は声を出して笑ってしまったものです。

「現代人はこだわるということを忘れてしまっている。それだけに自分はこのこだわるということにこだわりたいと思うのです。例えばハヤシライスです。ハヤシライスには必ず色鮮やかなグリーンピースが乗っていなくてはなりません。しかもそのグリーンピースの数は必ず3粒でなくてはいけません」。

しかし今回も、その物事にこだわるという姿勢は、いささかも変わっていないことを感じさせました。「あたり前の暮らしを求めて」と題しての講演で、省エネやリサイクルのこだわり、自然や環境の保全にこだわる必要性を、穏やかに、整然と、時にユーモアを織り込みながら語り通したのです。

彼の豊かな表現力を前に、私の貧弱な文章で講演内容を記すことは不遜でしょう。ただ強烈だったのは、77歳の倉本聰が、不自由な身体を杖で支えながら、何と90分の長講演を立ったまま語り続けていたことです。このこだわりには、やはり圧倒されたのです。このことだけは、記しておきたいと思います。

僕ら現代人にとって不幸なことは、どんな著名な人物に対してであれ、いやむしろ著名だからこそ、常に斜に構え、時に意地悪く荒探しに走ってしまうことです。倉本聰の自然志向はどこまで本物か、世に警告を出せるほどに誠実なのか。こう卑しく追及してしまうのです。しかしそんな私達の卑しさを晒し出すかのように、倉本聰は静かに足を引きずって壇上を去っていったのです。大きな人物です。

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