「ふるさとは遠きにありて」を選んだ団塊世代(2)
(月刊「地方財務」(ぎょうせい)8月号・【シリーズ】もう一つの団塊世代論②より転載)
(前号ブログ続き)
「帰りたいのに帰れない」背景は
第一の要因は、依然として続くムラの土着的な生活規範である。すっかり都会の合理的生活に慣れた人間にとって、故郷とは言えプライバシーのない生活には違和感をもつ。既に価値観を異にし始めた幼なじみ達の、過激な私生活介入劇に耐えられる人は少ない。
第二は、のんびりライフと言われながら田舎ではヘンにカネの流れが大きいことだ。地元の旅行会、老人会、冠婚葬祭などの出費は月10万円だともいわれる。年金がまともに支払われるか不明になった老後生活で、団塊世代がUターンに二の足を踏み始めるのも頷ける。
第三は、親兄弟との相克である。老後の親を誰が面倒見るか。田舎に戻れば、曖昧にしてきた親の介護と兄弟姉妹での相続トラブルの種はすぐにでも顕在化する。団塊世代が帰郷に躊躇し、本格的に警戒し始めたとしても不思議はない。
そして第四のネックに妻たちの現実的な在都傾向がある。女性の多くは都会を離れたがらない。しまね定住財団の求職希望の性別比で男性83.3%で女性16.7%という大差が、何よりも男のロマン主義と女のリアリズムのギャップを浮かび上がらせている。
さらに地元では「Uターンで戻ってきても5~6年で65歳。すぐ手のかかる老人だ」との冷ややかな声もある。
ことほど左様の人生風景なのである。結論を言おう。地方行政にあって、団塊世代に期待をかけることは止めた方がよい。Uターンを考えるなら、むしろ若手の20代、30代に照準をあわせるのが効果的であり、正しい姿勢というべきなのである。