嶋津隆文オフィシャルブログ

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「ふるさとは遠きにありて」を選んだ団塊世代(2)

2008年08月06日 | Weblog

 

「ふるさとは遠きにありて」を選んだ団塊世代(2)

(月刊「地方財務」(ぎょうせい)8月号・【シリーズ】もう一つの団塊世代論②より転載)

 (前号ブログ続き)

「帰りたいのに帰れない」背景は

第一の要因は、依然として続くムラの土着的な生活規範である。すっかり都会の合理的生活に慣れた人間にとって、故郷とは言えプライバシーのない生活には違和感をもつ。既に価値観を異にし始めた幼なじみ達の、過激な私生活介入劇に耐えられる人は少ない。

 第二は、のんびりライフと言われながら田舎ではヘンにカネの流れが大きいことだ。地元の旅行会、老人会、冠婚葬祭などの出費は月10万円だともいわれる。年金がまともに支払われるか不明になった老後生活で、団塊世代がUターンに二の足を踏み始めるのも頷ける。

第三は、親兄弟との相克である。老後の親を誰が面倒見るか。田舎に戻れば、曖昧にしてきた親の介護と兄弟姉妹での相続トラブルの種はすぐにでも顕在化する。団塊世代が帰郷に躊躇し、本格的に警戒し始めたとしても不思議はない。

そして第四のネックに妻たちの現実的な在都傾向がある。女性の多くは都会を離れたがらない。しまね定住財団の求職希望の性別比で男性83.3%で女性16.7%という大差が、何よりも男のロマン主義と女のリアリズムのギャップを浮かび上がらせている。

さらに地元では「Uターンで戻ってきても5~6年で65歳。すぐ手のかかる老人だ」との冷ややかな声もある。

ことほど左様の人生風景なのである。結論を言おう。地方行政にあって、団塊世代に期待をかけることは止めた方がよい。Uターンを考えるなら、むしろ若手の20代、30代に照準をあわせるのが効果的であり、正しい姿勢というべきなのである。


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「ふるさとは遠きにありて」を選んだ団塊世代(1)

2008年08月06日 | Weblog

 

「ふるさとは遠きにありて」を選んだ団塊世代(1)

(月刊「地方財務」(ぎょうせい)8月号・【シリーズ】もう一つの団塊世代論②より転載)

期待ふくらむUターンだったが

島根県は人口があと数年で70万人を切るといわれる。高齢者率も全国一高い。それだけに人口増加策はもっとも大切なテーマとなっている。それ故都会に出た大量の団塊世代の退職期を迎え、ふるさと島根へのUターンに大きな期待を抱いたとしても不思議はない。平成17年に島根県知事は県出身の団塊人2000人にアンケートとラブコールを行った。すると何と、「迷っている」人を含めUターンしてもよいと答えた人が25%の500人余に上ったのである。

ふるさと回帰のこうした気運は、島根に限らず各地の調査でも示された。国も当時、農水省が50代の42%が将来田舎暮らしを希望しているとの調査報告を出した。果して全国の各自治体は、一斉にUターン団塊世代の確保策に奔走し始めたのである。財政の厳しいなかで工面し、空き家活用や農業体験事業、団塊世代の起業支援や就職あっせん事業などに着手したのだ。

【Uターン希望アンケート・島根県】(平成17年7月実施)
・早急にUターンを考えている  44件   2.2%
・いずれUターンしたい    113件   5.7%
・定年後にはUターンしたい  127件   6.3%
・迷っている         221件   11.1%
・現在のところ考えていない 1342件   67.1%
・その他・不明        153件   7.7%

昨日と変わらず都会暮らしを選ぶ団塊

あれから3年。果たして島根県への団塊世代のUターンはどんな事態となったであろうか。先日、当の島根県(しまね定住財団)に聞いてみた。するとU、Iターンの求職登録者は576人。その内訳をみると、先のアンケート当時のイメージと著しく異なっていた。すなわち団塊の世代(59~61歳)はわずか4%前後と推測され、逆に20代、30代という若手の層が回帰希望の67.1%を占めたのである。

考えてもみれば、団塊世代のふるさとフィーバーには、自他ともに勝手な思い入れがあったようだ。いわく、これからの時代は都会より田舎のスローライフが好まれる。ふるさとは山も友も両手を広げて歓迎してくれる。老いた親も泣いて喜ぶ。物価も安い。全共闘世代には地域活動の可能性が無限だ。しかし現実はそうではなかった。「ふるさとは遠き」に置き、今まで通り都会暮らしを選択する外ない幾つもの要因が存在したのである。

【UIターン希望者の求職登録者数・しまね定住財団】(平成20年3月現在)
(年代別)10代       0人   0.0%
            20代    169人     29.3%
       30代    212人     36.8%
             40代      94人   16.3%
             50代      79人   13.7%
             60代以上  22人    3.8%
(性 別) 男性        480人  83.3%
             女性    96人  16.7%


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