嶋津隆文オフィシャルブログ

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“私もあなたの数多くの作品の一つです”

2008年08月21日 | Weblog

朝夕に思わぬ涼しさを感じるようなった昨日今日、そのせいか、タモリの8月7日に行った、赤塚不二夫の葬儀での弔辞の一節をすがすがしく思い出しています。
「赤塚先生、本当にお世話になりました。ありがとうございました。私もあなたの数多くの作品の一つです。合掌。」

ホンモノの人たちの一言は、時に感動を与えるものです。自分のもつ思いをどう言葉として表わすか、それが感謝であれ哀悼であれ、人はあれこれと悩むもの。言葉だけで飾ろうと思うと、どうしようもなく軽薄な感じとなることは、多くの人は常に味わっていることでしょう。しかしタモリの弔辞の言葉は、恩人赤塚不二夫への深い感謝の思いを、まさに芸人という表現者の才を通じて、心から発せられている形で表明していました。

ホンモノの人たちの一言。何とも感動的なものです。そういえば、宮崎駿の言葉にも何とも深いものがあったと、以前ジブリの美術館のオープニングの時、家人とともに館内を案内してもらった時のことを思い出しました。
「“猫バス”はどこまでも柔らかくなくてはいけません。」

それはこういうことです。以前東京都は多摩モノレールを開設するにあたって、車体全体を包むデザインとしてアニメ「となりのトトロ」のキャラクターである“猫バス”を使用しようと考えました。そこで、宮崎監督のオフィスにお願いに行ったのです。しかし返事ははっきりと“NO”でした。

「先生、その節は同僚たちがご無理なお願いに上がり、お手数をおかけしました。」
そう、申し上げると、宮崎監督はこう返事をしたのです。
「“猫バス”はどこまでも柔らかくなくてはいけません。金属製の車体では、どう工夫しても、その柔らかさのイメージを維持することはできないでしょう。子供たちは、“猫バス”に限りない柔らかさを期待しているのです。」

そういえば当時、宮崎監督に直接接触した同僚が、使用の申込みを断られたにもかかわらず、監督の自らの作品に対する思い入れと責任の深さに、とても納得して帰路についたと興奮していたことを思い出しました。

秋風の雰囲気をふと感じるなかで、こんなすがすがしいエピソードを思い出しながら、原稿執筆に専念する昨今です。

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