嶋津隆文オフィシャルブログ

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数値のない行政の無責任さ

2007年08月05日 | Weblog

梅雨明けの暑い中で季刊『観光』(日本観光協会)の編集をしながら、先般6月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」を検証する機会を得ました。何よりも納得したのは、その計画に5つの基本目標が明示されていることでした。

1 訪日外国人旅行者を平成22年までに1000万人にする。
2 我が国の国際会議開催数を平成23年までに5割増やす。
3 国内観光での宿泊数を平成22年までにもう一泊増やし年間4泊とする。
4 日本人の海外旅行者数を平成22年までに2000万人とする。
5 国内での観光旅行消費額を平成22年度までに30兆円とする。

いつまでに、何を、どこまでやるか。観光行政の目標を、国土交通省はしっかりと数字を挙げて国会と国民に提示していたのです。行政担当者にとって、具体的な数値目標を上げることはシンドイものです。もし達成できなければ責任を追及されるからです。しかし国土交通省ははっきりと目標を明示し、自分たちの決意の程を提示しているのです。いや国交省だけではありません。いずれの自治体の長もその責任を明示するべく計画的な行政指針を公表するものなのです。

ふり返って我が国立市の、同じ6月の市議会での新市長による施政方針を聞いて驚きました。その長い方針の中で、なんと数字で規定された施策は皆無なのです。全国的にみても大変稀有な施政方針といえましょう。近々JRの新駅完成が予定されている国立駅周辺整備の全体計画を公式にいつ策定するのか。遅れている南部のまちづくりをいつまでに、どんな形で手をつけるのか。ピンチ宣言を出したままになっている財政改革をどんな形でいつまでにやるのか。触れられてはいないのです。なるほど平和、環境、福祉、教育、まちづくり、財政と課題は挙げ連ねられていました。しかし時間軸の設定と数値目標というものがどの分野にもないのです。

こんな楽な市政運営はありません。これではまちづくりが遅れようが財政改革が手付かずになろうが、責任の追及を免れていくからです。期限が限られるからこそ、職員は必死になるのです。市民は取り組みを監視できるのです。しかし財政改革に関する市議会の質問で新市長は、「財政ピンチの撤回は4年後になるか、8年後になるか、もっとかかるか分からない」と軽く応えていました。時間を軽視した行政運営は、行政コストすなわち市民の血税を軽視した行政運営であり、まさに市民への冒涜というほかありません。

そもそも行政計画を明確にしていくことは行政の基本です。それが何よりも一番大事な情報公開というものです。その基本となる営みを放棄して、市民参加も民主主義もありません。7月末に出席した「くにたち政治経済研究会」(政経研)でも、この新市政の無責任な姿勢が若い人たちから強く指弾されていました。当然の疑問と怒りといってよいのです。

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