上砂理佳のうぐいす日記

7月18日(木)~23日(火)まで、茶屋町の「ギャラリー四匹の猫」で「夏への扉」展に参加します★

プルさんのおばけ点はなぜ出るか

2006-02-19 | トリノ五輪
先日、「男子の上位10人位は実力は横一線」と書きましたが、結局終わってみればプルシェンコ圧勝でした。やはり、17歳の頃から世界トップで滑っていた「経験力」が大舞台で生きたように思います。彼はなぜあんなに点数が「おばけ」?そのナゾを、プロトコルを見ながらひも解く私(シロートの推測)。

★エレメンツ(TES)=昔で言うところの技術点
強い秘密はココにあり。彼は「苦手なエレメンツがひとっつも無い!」これに尽きます。そう思わん?
・ステップ速い…速ければいいというもんでもないが、確かにナイフみたいにシャープ。バリエーション豊富。サーキュラーは、SPとFSで逆回りもOK。
・スピン…もともと体が柔らかいので、ドーナツでもビールマンでも出来ちゃう。高速でなくてもきっちり変形させるワザあり。
・ジャンプ確実…4回転をフリーに2度入れて、なおかつ4-3-3もやってきたおヒト。とにかく安定度抜群。回転とひきつけの速さと…どんなジャンプでも苦手なし。コンビネーションでループやフリップをつける等、もともと「ジャンプ跳びたい派」のヒトだから、一時は(ヤグ&プル時代)探究心も旺盛でした。最近、軸が曲がり気味なのが気になりますが、そして以前ほどのシャープさにやや欠けますが。でも、本番での4回転の確率がやはりズバ抜けてる(時々、なんでもない3回転でポカもあるけど、あれはご愛嬌?)。「俺はジャンプに自信がある」という精神的な裏付けが大きいか。

全ての要素がレベルの高いところで出来るので、ジャンプは無理やり盛りだくさんにせず、8割くらいにおさえてスタミナに余裕を持たせる→余裕があるので、成功率はグッと高くなる(PG前半の体力のあるうちに、ヘビーなジャンプを跳んでおく)→成功率が高いので、加点がたくさんつく→ジャンプ以外の要素のレベルを高くする(4種のスピンのうち、2つがレベル4、2つがレベル3。ステップはレベル4とレベル3)→スピンとステップはまず失敗しないので、ここでも加点を稼ぐ=ミスなく高得点!

…もともとプルシェンコの演技スタイルが、この新採点法に良くマッチングしてるのも有利ではなかろうか。女子のスルツカヤとタイプが似てるっちゅうか。ビールマンのポジションでスパイラル、とかプルさんも昔やってましたもんね。
もちろん天才プルシェンコと言えども、すご~い努力の積み重ねでここに至る、とは思いますが。でもでも、デビューした時からスゴかったので「あ~よく成長したな~」と思いづらい(笑)。ずずず~っとスゴイままで今に至る…なんだもの。
怪我したりで、確かに全盛期の勢いには欠けるかもしれないけど、やっぱり新採点法に合わせてスピンなんかも研究してきてる。そして「失敗の確率が少ない演技構成」にしてきてるのも、ポイント?
普段のトレーニングというか、体作りも相当しっかりしてるのだと思います。昨年の怪我・手術からここまできっちり持ってくるのはサスガです。

★コンポーネンツ(PCS)=昔でいうところの芸術点
これが「おばけ」なんだけど。うう~ん。
ヤグディンの「Winter」には、一体いくらのPCSが出るんだろうか…ぜひ見てみたいよ~。そうでないと、プルシェンコのPCS8点台ってのが、正しいのか正しくないのか解らないではないか(笑)。
この5項目、私はジェフとランビ、ジョニーとプルさん、どっこいどっこいだと思うのですよ。「スケート技術」が高いってのは解るんだけど、「音楽の表現」が今回なら8.43。ジェフ8.00。ランビ7.82。ジョニー7.61。その差って一体なんやねん(笑)。
コンポーネンツを出すのは、人間(ジャッジ)の主観だから、どうしても「芸術に点数はつけられない」ってところに行き着いてしまう。
プルさんの演技から、「勝つぞー!」「どうだー!」ってのは伝わるんですが、「曲想を表現する」ってのはどうだろ?高度なエレメンツを並べてるだけで、フィギュアの本当の素晴しいところとはちょっと違うと思う。全体の流れといいますか、ひとつの完結した世界がどうしても見えてこない。滑りと音楽が溶け合ったあの独特のフィギュアの味~が…感じられないのは私だけだろうか。
でもこの「プルさん・PCSの謎」を解いてくれるジャッジ(解説者)には、まだ巡り会えない。
それはまるで…「ルイ・ヴィトンのバッグは素晴しいんだよー!素晴しいと思えないアンタが間違ってんだよ!」と言われて、「でも私、ヴィトン嫌いなんだもん…」と力なく答えるかのような。
世間一般では「ルイ・ヴィトンはイイ。価値高し」ということになっている。では、同意できない私は間違っているのだろうか。そんな感じ。だからもう好みの問題なのね…。
でもせっかくこれだけの技術を持つ人なのだから、花の五輪の舞台で、斬新なセンセーショナルなPGを作ってきて欲しかった。今回のPGは、SP、フリーとも芸術的印象が弱いような気がしました。ソルトレイク五輪でフリー逆転を狙った「カルメン」とか、その前年度、世界王者になった時のPGのほうがはるかに気迫に満ちていたというか。

なんだかんだ言ってますが、ロシア2強時代にヤグディンを強くしてくれたのはプルシェンコ。彼の存在が無かったら、ヤグの数々の名演は生まれなかったかもしれない。モロゾフは「グラディエーター」を作らなかったかもしれない。ジュベールも成長しなかったのかもしれない(?)ランビは4回転を習得しなかったかもしれない(??)
そう思うと、男子シングルにカツを入れる男=プルシェンコの存在は、マコトにありがたいと言えますか。
(有明では、「肉襦袢」久しぶりに見たい)
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2 コメント

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プルさんのPCS (hiro)
2006-02-20 22:12:25
同感です。

プルさん、「すごいなあ~」って見てしまいますが、もう演技に酔うことが無くなってしまいました。

魅せるためのプログラムではなく、勝つためのプログラムを滑っているからでしょうか。

競技者だから当たり前なんでしょうが・・・。

私はやはり、ジョニーのアプローチの仕方に共感します。
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ニュータイプを見たい~ (うぐいす)
2006-02-21 21:19:49
プルさん、今回の目的は「金メダル」だから、仕方ないのかな~。でもやはり何度も見返そうと思わないのですね。前半にジャンプ固め打ちの構成もずっと同じだし。

新採点法の影響もあるかなあ。うーん。



ジョニーは来季は、速いテンポ、ステップのものを見せて欲しいです。コミカルものとか。そのへん、本人はどう考えてるのかなあ?ふむむ。

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