上砂理佳のうぐいす日記

7月18日(木)~23日(火)まで、茶屋町の「ギャラリー四匹の猫」で「夏への扉」展に参加します★

「PLAN75」と「ソイレントグリーン」★

2022-08-05 | うぐいすよもやま日記
是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」と、早川千絵監督の「PLAN75」をたて続けに見ました。
お二人の監督は師弟関係にあるそうですが、緻密な脚本作りは共通してます。
是枝監督は「上手いなあ」
早川監督は「リアリティ!」
細かなリアリティは圧倒的に早川監督に軍配が上がります。でも、映画としての魅せ方・エンタメ力は是枝監督。
どちらも佳作でしたが、私は女性の早川監督の「PLAN75」の方により深い感銘を受けました。
自分自身がこれから「人生の終い方」を考える時期に入ったから。。。なのも大きいです。
自分が若かったら、父親に認知されない赤ちゃんをめぐる物語の「ベイビー…」の方がよりインパクト大だったかも。

75歳になったら「安楽死」を選択出来るようになった近未来日本で、旦那さんに先立たれた78歳、ホテル清掃業で生活している主人公のミチさん。
倍賞千恵子が上手いですね~。リアル・ミチさん。吉永小百合ではこの役無理だよな。。。とか思っちゃった。
都営団地?でつましくも身綺麗に暮らし、たまに仕事仲間とカラオケに興じるのがお楽しみ。
なのに、たたみかけるように仕事・友達・住居を失い、生活保護を勧められるようになります。
そもそも78歳で気楽なご隠居さんになることも許されない日本って。なんなんだろう。

国の財源が苦しいから、老人は切っていきましょう。。。という姥捨て山思考は、古い古い映画「ソイレント・グリーン」を思い起こさせます。
確かスティーブ・マックィーン?が主人公の青年で、劇中のテレビからは「食糧危機を解決してくれる奇跡の食べ物、ソイレント・グリーンが発売されました」とニュースが流れてます。
ソイレントグリーンってなんだ?原材料が謎。
主人公が疑問に思ううちに、彼の尊敬する友人でもある高齢の男性が、「俺も年老いた。ホームに行くよ」と言い出しました。
「ホーム」とは、安楽死センターのことなんです。
広い個室ベッドで寝かされると、目の前の巨大スクリーンに花畑や森や川や自然の美しい映像が流される。バックにはクラシックの名曲。そう、最後に見るのは「極楽」の世界なんです。
気持ちよくなるうちに目は閉じられ眠り、完全に死に至ります。
主人公はこの「ホーム」にこっそり忍び込み、老人の最期の一部始終を目撃。
死体はベルトコンベヤーの向こうに消えていったのに、工程の最後のところで、淡いグリーンのビスケットみたいなものがどんどん吐き出される。
これは?
ソイレント・グリーンでは!

警察に見つかり捕らえられますが、彼は「ソイレントグリーンは…ソイレントグリーンは!人間の肉で出来てるんだ」
と叫びます。ここで映画終了。
小さい時にテレビで見て、ゾーッとしましたね。印象深いSF映画でした。

PLAN75 では、さすがに食べ物には加工されませんが、やはり「安楽死センター」みたいな所に行き、眠るようにご臨終。
遺体が「ただのゴミ」として扱われることも悲しいし、ご遺体になった人の所持品も、外国人バイトに「あ。この時計いいやつだから貰っとこ」とネコババされるのが腹立たしい。
ミチさんは最後の最後で、ある選択をします。そのおかげで「ソイレントグリーン」みたいな「モヤるラスト」ではなく、救いと希望が見えました。

私は実は「そんなに長生きしたくない。人間は75歳ぐらいで死ぬのがちょうど良い」と近年思ってたんですが。
この映画見た後には、その願望が粉砕されてしまいました。
つくづく、「生きている限り人は懸命に生きねばならないし、また生きる尊厳は保たれなくてはならない」と思うのでした。
治らない病気で痛くてたまらない、とか、重度の認知症になったら、安楽死もアリかもしれませんが。
少なくとも映画の中のミチさんは高齢でも健康で、生きる意欲もあり努力もしてるのに、行政側から「死んだ方が楽ですよ」と促されるのは間違ってる。
国って、人が健全に生きられるために機能してるはずで、生きたい人には全力でサポートをしないと、動物と同じになってしまう。

早川監督が映画留学先のアメリカから日本に帰ってきたとき、「“自己責任”という言葉が横行する日本社会の空気に驚いた」という。
確かに近年、何でもかんでも「自己責任で」ばかりです。
貧乏になること、無職になること、住む所が無くなること。社会に身の置き所が無いこと。
みんな、自己責任ばっかりじゃない。本人の責任だから助けないよ、ではあまりに悲し過ぎる。
こんな社会はゴメンだわ。。。さりとて、今後も高齢者は増えるばかりなんですが。そして私もそのうちの1人になるんですが。
ミチさんみたいな人が、幸せにラストまで走り抜けられるような、社会にしていく。市民レベルで出来ることを考えて実行する。
高齢者自身も動いて頭を働かせる必要があります。そしてそれがマストかも。
自民党政府に期待してるばかりでは、そのうちPLAN75システム作られちゃうかも。
色々なことを考えさせられる、深い映画でした★
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2 コメント

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Unknown (通行人)
2024-06-08 11:24:56
チャールトン・ヘストンですね。
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なつかしの映画 (うぐいす)
2024-06-10 13:28:34
そうでした!
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