本が好き!な、りなっこのダイアリーです。週末は旦那と食べ歩き。そちらの報告も。
本読みの日々つらつら
鹿島田真希さん、『白バラ四姉妹殺人事件』
以前から読んでみたかった鹿島田さん。ルネ・マグリットの絵を使った表紙と、タイトルに惹かれて手に取った。
『白バラ四姉妹殺人事件』、鹿島田真希を読みました。
〔 自分の中に自分のものじゃないなにかがあるという感じは前からしていたわ。家や役所、そうね。それでもいいかもしれないわね。そして私に名前をつけて、独断と偏見であれこれ決めつける。だけど私はそれが苦ではないのよ。 〕 70頁
面白かった。噛めば噛むほどじわじわ面白い、という印象。くずおれるように歪む現実の中、迷い込んだ袋小路の輪郭さえ、みるみるその形を変えていく。掴まれるものは何もなく、虚実の混淆が次第に描く、狂ったマーブル模様が見えてくるだけ…。ぐるぐる。
いきなり冒頭から、ひどく異様な感じの女の科白が始まり気持ち悪くなる。そこにいるのは、情緒不安定でどことなく不気味な、更年期を迎えた一人の女だ。くるくるかき混ぜられてぼーっと膨らんでいく、綿飴のように茫漠とした思惟に付き合ううちに、彼女の撒き散らす不穏さに、ねっとり纏わりつかれてしまう。
父親の喪に服す四姉妹の家族。そこへ投げ込まれた異物としての長女の婚約者が、こっそり末娘とつき合っていて、激昂した母親に半殺しにされたという。そしてショックを受けた末っ子は、自殺をしてしまったという。
地域新聞に連日掲載されている、町内で起こった殺人(未遂?)事件に、同調するようにのめり込んでいく姉弟。二人はまるで劇中劇を演じるみたいに、当事者たちの物語をなぞり合い、いつしか己自身の感情との区別を見失って揺れ動く。そしてその外側には、そんな姉弟の関係をねたむ母親の狂気がある。
徐々に溶け合い渾然となっていく、二つの壊れた家族。その、家族という名の幻想が、形骸を晒してぼろぼろになっていく。どろりと巣食う、妬み嫉み。名前もない似通った女たちの稚拙な自我は、癒着と断裂を不毛に繰り返す(依存し合う母娘関係がもう、もう…)。
偽り隠された真実、本当に殺されたのは誰だったのか?
誰かに似ている女なのか、女に似ている誰かなのか。そして彼らは、未だに家族だろうか。お互い全くの別人に、なり代わってしまっているのではないか。女と女、女と男、女とママと愛人と男。まるで交換の可能な仮面のように、彼らの顔は区別がつかない。この人たち、実はどこかで分裂増殖したんじゃあないの…?と、またぞろ気持ち悪くなってしまう。
だが、そんな劇は、唐突に幕をおろされる。
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