7月1日

 ジョセフ・オコーナー/栩木 伸明訳『シャドウプレイ』を読んだ。
 
 素晴らしかった。
 舞台はヴィクトリア朝ロンドン。ブラム・ストーカーが劇場支配人としての役目を果たす傍ら『吸血鬼ドラキュラ』の執筆に至る経緯が、当代一の人気だった二人の名優との何とも名付けがたい交わり(深い愛も狂おしい嫉妬も憧れも)を軸に語られていく。
 作中には『ドラキュラ』からの引用や目くばせ、仄めかし、名優アーヴィングが得意としたシェイクスピア劇のセリフの引用やもじりなど惜しみなく鏤められている。

 繊細で人に優しく夢見がちだったストーカーが、その想像世界の中では邪悪な流血の物語を生み出していた…ということ、その、誰にも見せない昏い顔を持つ人物造形に感嘆した(そこがタイトルに繋がる)。
 
 当時の有名な事件(切り裂きジャックやオスカー・ワイルドの裁判など)との絡みも面白い。そして名優エレン・テリーが大好きだった。
 
 
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