アンドレイ・ベールィ、「ペテルブルグ」

 「ペテルブルグ」の感想を少しばかり。読んだのは、世界文学全集(講談社版)82。

 “いやいや、ここには、すべての上に、青酸のように常に魂を中毒させる悪魔的な、何か過剰なるものの発する香気があった。” 369頁

 お目当ての「ペテルブルグ」は、凄まじい読み応えだった。悪疫をもたらした沼地に建設された、霧とカオスの都市ペテルブルグ。“走り去る大通りの無限”と、“それとともに走り去る交差する幻影の無限”が、ただ悪夢のように目くるめくってゆく物語に幻惑されっぱなしだった。封じられた沼沢地の瘴気がいつしか充満し、主要人物たちの魂を中毒させていく。革命前の混沌。合わせ鏡の如く増殖する錯乱と狂気が、ほぼ二日間に凝縮されている様は、圧倒されて息苦しいほど。分裂した主人公ニコライ・アポローノヴィチの行動が招く結末まで、すっかり呑まれていた。

 「どん底」、「イタリア物語」もよかった。ゴーリキイを読むよい機会になった。

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