G・K・チェスタトン、『詩人と狂人たち』

 『詩人と狂人たち』、G・K・チェスタトンを読みました。

 “もし、あたり一面に付いた誰かの手の跡を見せられたら、その男が逆立ちをして歩いていたのはなぜか教えてあげましょう。が、そのわけを見つけ出す方法は、ぼくが何かを見つけ出すときに用いる唯一つの方法なのです。つまり、ぼく自身狂人であり、逆立ちをよくやるからこそ、それが分かるのです」” 205頁「紫の宝石」より

 名探偵と謳っているけれど、これは所謂ミステリーではないのでは…と惑わされる、まさにそこがこの作品の面白さでした。そんなに読み易くない文章ですが、風変わりな作風にずぼっとはまって楽しめました。
 いつも事件を起こすのが、いささか偏った思想や主義に捕らわれてしまった狂人たちならば、それを解決するガブリエル・ゲイルも、半ば狂人で非常にエキセントリックな詩人でして、だからこそ狂人たちの思考回路が理解出来る=事件解決、という8編です。読み始めてすぐに、なるほどこれはイギリス的だ…と感じ入ってしまう、一ひねり二ひねりもある緻密な文体。逆説的な思索に満ち溢れ、ある意味哲学っぽい会話が中心となり展開されていく、全く独自な世界が広がっています。いやはや、面白かったです。
 ミステリーという先入観を早々に取り払って読みましたので、他に類のないこの作品の不思議な味わいを堪能できたように思います。
 (2007.10.26)

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