松浦理英子さん、『裏ヴァージョン』

 明日から地元で一泊してきますので、少々気もそぞろです。そわそわと。
 郊外の駅で待ち合わせをして高校からの友人宅へ押しかけ、夕方からは岐阜の居酒屋で催される忘年会に顔を出してくる予定なのですが、移動に時間がかかるのでスケジュールがきちきちです。失敗なく移動できるどうか、心配…(だーさんとは途中別行動)。
 昨夜は夜更かしだったし、今夜は早めに寝ます。 

 さて。
 先日読んだ『犬身』がとてもよかった松浦さんの、七年前の長編が文庫になっていたので手に取りました。
 『裏ヴァージョン』、松浦理英子を読みました。


 すみません、報告程度でお茶を濁させていただきますけれど、すごく面白く読めました!
 読み出してしばらくは、まるで普通の短篇集ですが、一話ずつで完結している体裁の短篇の末尾に謎のコメントが入っていて、その、批評というには皮肉たっぷりなコメントをいったい誰が付けているのか…?という疑問が、だんだん気になってくるのです。そして少しずつ少しずつ、小説の書き手と、その小説を受け取る側の女性二人の関係が、連なる幾つもの短篇小説の向こう側からうっすらと見えてくるのですが、そのあたりから俄然と雰囲気がきな臭くなり、それにつれて物語全体が面白くなってきました。
 所謂メタ小説としても読めますけれど、そんな一面的な読み方をしなくても充分楽しい作品だと思います。 
 
 性愛を介在しない絆って、どれだけ強くなれるのでしょうか? 
 一緒にいれば愉快に過ごせる…なんて、ただそれだけの友達じゃあない。抱いてもいいぐらい好きだけれどお互いの嗜好上そういう訳にもいかなくて、けれどもお互いに清濁併せ呑むぐらい受け入れたいと願い、本当に受け入れあえる絆…。そんな絆を結びあぐねて立ち尽くす二人の不器用な姿が、とても愛おしい作品でした。

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