10月に読んだ本

10月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5090ページ

▼読んだ本
柔かい月 (河出文庫)柔かい月 (河出文庫)
面白かった!好き! 第一部一話目に収められた表題作で、ぐうっと引き寄せられた。蝋の滴りのような触角を夜空にくねらせ、地球に向けて差しのべる月の姿は、悪夢めいてグロテスクな美しさ…なのだが、その後の世界の眺めにも魅入られた。とりわけ好きだったのは第三部で、思わず始めに戻り読み返した。馴染みない緻密な思惟を繰り広げる言葉の連なりが、ぐるぐると巻き付いてくる。いったい何処へ連れて行かれるのだろう…と目を瞠る思いだったけれど、何処とも名指せる場所ではなかった。と、我に返る。ただ、牽引されていく感覚が気持ちよかった
読了日:10月28日 著者:イタロ カルヴィーノ
継母礼讃 (中公文庫)継母礼讃 (中公文庫)
素晴らしく面白かった。優雅な音楽と夜の喜悦、須臾の夢…。天使の如き美少年アルフォンソと、麗しい継母ルクレシア。そして夫であり父であるドン・リゴベルト。ずぶずぶと溺れていく禁断の関係と、夫婦の寝室の秘密が、六点の絵画を踏まえて描かれる。その絵解きと物語との繋がりには感歎した。全篇に行き渡るエロスの観念は、時に詩的な言葉で美しく飾り立てられ、神話の神々の放埒な戯れのように無垢をよそおい曝される。めくるめく幻想に絡め捕られる心地がして、いったい何を読んでいるのだろう…とくらくらした。(それにしてもアルフォンソよ
読了日:10月26日 著者:マリオ・バルガス=リョサ
小説神変理層夢経 猫未来託宣本 猫ダンジョン荒神小説神変理層夢経 猫未来託宣本 猫ダンジョン荒神
久しぶりに読んだ笙野さん。脊椎湾曲、癲癇から認知症へと老化が進んだ、愛猫の介護に明け暮れる日々。それでも、残された最後の時間を楽しく、ドラと幸福に過ごせるなら…と、猫ダンジョンを作り出した。“神はいない、そんなことはわかっているけれど信仰の形は必要、だから神も要る”という理屈からなるプチ信仰が、ここでは(家内)宇宙最強の神様、荒神様へとたどり着いている。確かドーラって、とても気品のある美猫さんでしたよね…と思いつつ。あとがき小説も相変わらず凄くて、深い溜息がこぼれてしまう。
読了日:10月25日 著者:笙野 頼子
フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)
読了日:10月24日 著者:メアリー シェリー
厳重に監視された列車 (フラバル・コレクション)厳重に監視された列車 (フラバル・コレクション)
面白かった。ナチス支配下のチェコ、見習員ミロシュの働く鉄道駅が物語の舞台である。ひいじいさんルカーシュと、催眠術師だったじいさんの件も大好きだし(町の人たちをむかつかせた家族…)、操車員フビチカが駅のゴム印を次々に電信嬢の尻に押しまくった…というエピソードも可笑しかった。性的失敗を苦に病んで……(むむむ)というミロシュの事情も、一連の流れの中で知らされると妙に納得してしまうが、それが終盤の行動に繋がっていくのは驚きだった。シュールな嗤いと猥雑でエロでメランコリックな作風を、こそりと愛好し続けたい作家である
読了日:10月22日 著者:ボフミル・フラバル
酒国―特捜検事丁鈎児の冒険酒国―特捜検事丁鈎児の冒険
流石の面白さ。兎に角泥臭いし、何とも独特な喧しさに溢れている。そも主人公が酒国へと赴くことになる、その任務の内容からして異様過ぎて不気味だが、そんな初っ端から掴まれて目を離せなかった。そして、丁鈎児の物語と並行して、作家莫言と小説家志望の院生との往復書簡、彼が書いた短篇小説…と交互に読ませていく構成も、現実と虚構がせめぎ合う様相を強めていく。特捜検事の腰砕けな活躍ぶりと好対照なのが、粗暴な女性運転手や、袁双魚夫人(アンチエイジング美女!)の強烈さ。とりわけ『燕採り』は忘れがたく、考えさせられる。中国の食…
読了日:10月21日 著者:莫 言
完全な真空 (文学の冒険シリーズ)完全な真空 (文学の冒険シリーズ)
素晴らしく、すこぶる好みな作品。のめり込みめり込み、夢中になって読んだ。とんでもない着想に感歎していられるうちはまだ序の口で、次第に頭からバネやら螺子やら飛び出そうになりつつ齧り付いている状態。突っこみどころ満載なはずなのに、畳みかけてくるロジックに語り倒されて茫然と立ち尽くす。で、すっかりご満悦なのだから世話がない…。始めの本書の(!)書評も含め16章。お気に入りの章はもちろんあるが、振幅が増大していく全体の流れも凄いと思った。最後まで読んでもう一度第一章へ戻ると、悪ふざけの企み深さに駄目押しの目眩が…
読了日:10月18日 著者:スタニスワフ・レム
プニンプニン
素晴らしかった。プニンがいい、とてもいい。不器用で頑なな生き方も、静かにたたえる郷愁も、文学への愛も、邪気のなさも、切々と胸に迫る。不運さえもがいじらしくて、これは所謂萌えか…と思ったりw でも、プニンのような人物の魅力をここまで描くのは、ナボコフだからこそ成せる業かと。何となれば“不条理な事物”と絶えず戦う彼の姿は、傍から見るなら、救いがたく滑稽な人物にしか映らないだろうから…。気紛れにどの頁を開いてみても、おとっときの文章が目に飛び込んでくる。終盤における苦味があまりにも周到で、ただただ舌を巻いた。
読了日:10月15日 著者:ウラジーミル・ナボコフ
ニセ札つかいの手記 - 武田泰淳異色短篇集 (中公文庫)ニセ札つかいの手記 - 武田泰淳異色短篇集 (中公文庫)
とても面白かった。渋くて黒くて、勘所を掴まれる感じが好きだー。とりわけお気に入りは、「『ゴジラ』の来る夜」と「白昼の通り魔」と表題作。「空間の犯罪」もよかったなぁ…。
読了日:10月15日 著者:武田 泰淳
北欧神話と伝説 (講談社学術文庫)北欧神話と伝説 (講談社学術文庫)
少しずつ読んでいた。興味深い内容が詰まっていて、凄く面白かった。締めくくりに「ウォルスング家の物語」を読めたのも満足。
読了日:10月12日 著者:ヴィルヘルム・グレンベック
ペガサスの挽歌 (シリーズ 日本語の醍醐味 4)ペガサスの挽歌 (シリーズ 日本語の醍醐味 4)
素晴らしかった。妖しと小昏い背徳の魔界へふみ入り、至福の心地にしばし耽溺した。70年代の単行本未収録作品ばかりの一冊だが、既に完成されていることに深い溜息がこぼれる。研澄まされた狂気と残酷を賞する後ろめたさの、甘美な味わいと言ったらどうだ。初期の児童文学を読めたことも嬉しい(コンクリ虫可愛い~)内容の中、とりわけ好きだったのは「天使」や表題作、「家族の死」「朱妖」…といった辺り。「試罪の冠」「声」もよかった(もう殆ど)。息を呑む幕切れの刺し止められる感覚は、やがてやめられない毒のように胸奥で変容していく…
読了日:10月11日 著者:皆川 博子
冷たい川が呼ぶ 下 (創元推理文庫)冷たい川が呼ぶ 下 (創元推理文庫)
とても面白かった。期待していた以上にホラーな展開なのが、嬉しい誤算だったなぁ…と。
読了日:10月09日 著者:マイクル・コリータ
冷たい川が呼ぶ 上 (創元推理文庫)冷たい川が呼ぶ 上 (創元推理文庫)
読了日:10月09日 著者:マイクル・コリータ
金の仔牛金の仔牛
ひやひやはらはら…で、面白楽しかった! 株とお金儲けのからくりを解く箇所もひっくるめ、ひき込まれた。濃ゆい登場人物が各々に策を弄する筋立てから目が離せない。舞台背景も堪能した。…と言いつつ何をおいてもまず、悪党なのにすれてないアルノーと、頗る付きの別嬪でおきゃんなニコルが大好きだ。アルノーを見込んでカンカンポワ街に深入りさせる黒幕老紳士を始め、ニコルへの邪な欲を抱きアルノーを追い詰める悪役、腹黒いニコルの父…(まだまだいる)と、一筋縄ではいかない面々の騙くらかし合いなんて、身を乗りだすほどに魅入られた。
読了日:10月06日 著者:佐藤 亜紀
卑しい肉体 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)卑しい肉体 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)
面白かった。刊行当時話題だった“陽気な若者たち”を描く群像劇。まさにパーティ小説。虚無的ではあるものの、所々のずれ加減があまりにシュールで思わず笑ってしまう。軽くて、飽いていて、徒に陽気な彼ら…。数え切れない登場人物たちが、入れ替わり立ち替わり現れる数々のパーティには、退屈なダンスと倦み果てた空気があるばかり。そして「退屈」と「素敵」が口癖の彼らは、拠り所の希薄な淡い恋をする…。ゴシップ記者になったアダムが“発明”にいそしむ件は、本人のあやふやさとの比が皮肉で、実のない仕事ぶりもさもありなん…と可笑しい。
読了日:10月04日 著者:イーヴリン・ウォー
トウェイン完訳コレクション  アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)トウェイン完訳コレクション アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)
面白かった。アーサー王宮廷にヤンキーという、ちぐはぐな組み合わせに些かの抵抗があったが、実際に読んでいても時折溜め息がこぼれた(だって、イメージが…)。でも、突っこみどころ満載な設定といい、諷刺の効きまくった偏屈な語り口といい、思わず噴き出す箇所も多くて楽しめた。奇妙な男が語る、驚きに満ちた身の上話。如何にして彼は、アーサー王宮廷の新参者でありながら、王に継ぐ偉い人物に成りおおせたのか。かの地にもたらした新しい文明とは…。序盤が乗れなかったけれど、武者修行(?)の始まる辺りから俄然面白くなった。
読了日:10月02日 著者:マーク・トウェイン

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