ミゲル・シフーコ、『イルストラード』

 フィリピンの小説を読んだのは初めて。『イルストラード』の感想を少しばかり。

 “全てのことにはいずれ終わりが来る。もうひとつ確かなことは、物事がひとつ終わると、人はどうしてもそれになんらかの意味を与えずにはいられないということである。突然そうでなくなった時まで、彼女は僕の最愛の恋人だった。” 145頁

 とても面白かった。今までに殆ど馴染みもなければ、興味を持ったことすらない国の物語を読んでいることに、ふっと不思議になりつつ。断片的な章が徐々に繋がり合い豊かな広がりと奥行きを見せる様には、思わず目を丸くした。語り手ミゲルの青臭さも、何とも言えずよかった。

 師であり友でもあったフィリピンの著名な作家、クリスピン・サルバドール(ノーベル文学賞の候補になったこともあるとか)の自殺に疑問を持った主人公のミゲルは、その真の理由を知るべく故国フィリピンへと旅をする。クリスピンが執筆途中だったはずの『燃える橋』の原稿は、なぜ彼の部屋から無くなっていたのか。それを世に出させたくない誰かがいたのではないか…?という疑いも、ミゲルの胸から拭い去れなかった。時にフィリピンの恥辱の歴史を辿るような作品を発表し、祖国の人々が寄せる期待に迎合しない大作家のことを、忌々しく思う者も少なくはなかったのである。
 若者ミゲル自身が“僕”として語る章もあれば、そのミゲルが三人称で“われらが主人公”になっている小説の章もあり、さらにそこへ、ミゲルが書きかけの作家の伝記、作家自身が書いた回想録『自己剽窃者』、それ以外にもクリスピン・サルバドールの長篇短篇インタヴュー、フィリピン的ユーモアのジョーク、ネットの書き込み…などがどんどん盛り込まれている。始めのうちは、いささか凝り過ぎなのでは…と思わないでもなかったが、それぞれの筋が絡み合うことで、フィリピンという国の様々な側面が見えてくるので興味深く読めた。それによって物語は重層性を増し、ミゲルが抱く故国フィリピンへの複雑な心境にも、説得力が感じられるようになってくる。政情が乱れ惨事が絶えない祖国に、イルストラード(知識人たち)の一人として抱く苦々しい気持ち。祖父の富に守られ続けてきた、特権階級の坊ちゃんとしての自分への忸怩たる思い…。

 ミゲルとクリスピンの間には様々な共通点があり、半生を振り返る記述の中で何度も二人が重なり合った。そんな中、ミゲルが失った恋人マディソンのことを幾度も思い返し、最後の別れへと至るまでの過程を傷ましいまでに具に省みていく箇所が、ほろ苦くて私は好きだった。そして、そんなミゲルが少しずつ変わっていく姿もよかった。

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9月25日(日)のつぶやき(「西洋食堂 木乃花」その3)

08:02 from web (Re: @pyoko45
@pyoko45 おはようございます。これのことでしょうか。以前新潮社から出ていた長篇が、岩波文庫から改訳版で。http://t.co/0FcGCwN2 あ、他にもあるのかも知れませんが^^
10:35 from web (Re: @hanakochia
@hanakochia え、お盛んは死語…(がーん)。あ、お役に立てて何よりです^^ 1時間の番組でどれだけのことが…とも思いましたが、面白かったですよ。それだけじゃない、の部分をもっと知りたくなりました。

 ☆    ☆    ☆    ☆

12:26
from twicca
30分歩いてやって来たお店でビールにゃう。甘露甘露~♪ 今日は、私たちには超珍しく洋食ランチ。ハンバーグなんて何年振りか…。きゃっ。
(後日追記)この日のお昼ご飯は、「木乃花」にて。
 選択肢の多いランチメニューから、二人ともハンバーグミックスランチに。


 だーさんが選んだのは、“和風デミソースときのこ”と海老フライ。


 私が選んだのは、“トマト&チーズ(デミソース)”とサーモンのサラダ。


 このハンバーグが本当に美味しくって…! 二人で吃驚して大絶賛してしまったことよ。ご馳走さまでした♪ 

14:25
from web
ランチして買い物して、帰宅にゃう。ハンバーグのランチは美味しかったよ。でも、この先また3年くらいは食べないかも知れないなぁ…。洋食がどんどん縁遠くなるよ。オムライスとかw
14:48 from web
それぞれにビールを呑んでから、二人で赤ワインを1本空けた程度なのだけれど、何だかこのままふうっと眠くなりそうだ…。眠くなるまでしばしカフカ。かふか、ふかふかふか。
18:36 from web (Re: @hanakochia
@hanakochia あああ~ん、「半所有者」私も好きです~♪ これ、文庫本では「秘事」と併せて一冊なので、そこも堪りませんでした。ひひひ。

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