スティーヴ・エリクソン、『彷徨う日々』

 スティーヴ・エリクソンの処女作、『彷徨う日々』を読んだ。

 胸を締めつける。美しいのと同じくらいに寂しくて哀しくて忘れがたい情景の数々が、まるで本当にその場所に立っていたみたいに眼裏に残って疼くような読後感だった。たとえば冒頭にあらわれる、まだ幼かったヒロイン・ローレンの目に映っていた、氷と星と猫の目がきらめくカンザスの青い野原。その野原をおおう青い葉を揺らす風のイメージは、その後の物語を読み進めていく間にも何度も何度も呼び起された。たとえば、ひかれ合う二人が初めて結ばれる、砂嵐の夜の月明かりだけが照らしていた砂丘の眺めも、幻想的でありその先の何かを暗示するようでもあり…素敵だった。
 時空を超えて見えない糸が張りめぐらされているように、登場人物たちや彼らをとり巻く事象が繋がり合っていく展開と、そこに焙りだされていく模様にはただただ魅了されていた。正反対の方向へと走る二つの電車がすれ違うほんの一瞬、それぞれの車窓から投げられた眼差しが一瞬絡むような、そんな刹那過ぎる邂逅の場面も印象的である。でも、結局のところそんな風に誰かと誰かが繋がり合っていても、そしてそれをまた別の誰かが確認できたとしても、それでもやっぱり確かな絆など何一つ残されないの…?と、そんな問いに胸が苦しくなるのだった。

 何と言うかあまりうまく言えないが、たぶん人生の早い段階で(ひょっとしたら生まれてくるときから?)あまりにも致命的な失くし物をしてしまった男女が、もう一度それを思い出して取り戻そうとしてもがきあがいて求め合って疲れ果ててしまう…というのが、むき出しにされた人の生の姿そのものなのか。そうしていつしか本来の目的を見失ってしまっても、それでも心は失われた何かを狂おしく追い求め続ける…その道程こそが人生そのものなのか。そういうことを感じさせる、切ない人ばかりが彷徨う世界だなぁ…という印象を受けるのだ、エリクソンの作品には。それでいて残されるものは、決して虚しさではないのだが。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

3月9日(火)のつぶやき

06:51 from web
おはようございます。こーしーなう。冷たい雨が降ってたんだなぁ、とわかる寒い眺め。
08:38 from web
そう言えば今日は「週末婚」の再放送が…。ひい、ちゃちゃっと片そう(みる気満々)。
09:56 from web
窓の向こうが白い…?と思って確かめたら、雪。すぐに様子が見えるように、レースのカーテンを開けておく。氷霰だったら音でわかるけれど、普通の雪は静かに降る。
10:46 from web
「あの子が幸せになる権利ないわ」、by陽子。うーん、一回目をみてないからその確執の根本が分かりにくい…。
10:50 from web
「明日もお楽しみに!」、はい…。
11:52 from API
【彷徨う日々】を読んだ本に追加 http://book.akahoshitakuya.com/b/4480831738
13:45 from web
エリクソンを読んで感想をばばっと書いて、脱力感。
13:58 from web
今にも雨になりそうな雪が降っていて気が進まないけれど、図書館に行っておかねば。桜庭さんの読書日記を借りようとしたら貸し出し中で、予約しておいたのの受け取り期限がいつの間にか迫っていた。ふー、楽しみ。
18:34 from web
雪の積もった道をもたもた歩き、図書館に辿り着いて財布を忘れたことに気付いた。カードがないので返却だけして家に戻った。借りる気満々で色々選んだ後じゃなくて幸いだったし、気付く場所がスーパーのレジじゃなくて幸いだったし、お蔭で長靴にも履き替えられたから、多分まあまあよかったのだろう。
18:49 from web
あーでも、一応予約した本があるから明日また受け取りに行かなければ。たまたま貸し出し中だっただけだとは思うけれど、何となくやっぱり。ふう。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )