桜庭一樹さん、『少女には向かない職業』

 一気にざくざく読めてしまいました。桜庭さんの作品を読むのはこれで3作目です。

 金曜日に読み終えた作品なので、報告程度ですが。
 『少女には向かない職業』、桜庭一樹を読みました。
 

 ラストで思わず、うぎゃ…と呻いてしまった作品です。主人公と一緒に脱力して、がっくりと膝をつきそうでした。でも読んでいる間はぐんぐんと、まるで何かに背中を押されているように前のめり気味になって文字を追っていました。
 桜庭さんの文章にはやや荒削りなところがあるかも知れませんが、それを補って余りあるほどの、「この物語を書くんだ!」という心向きの強さが作品全体に満ちているように感じます。何か…きっと少女たちがいるのと同じような崖っぷちでこの物語を書いていたんだろうなぁ…と思わせてくれる強さが、その読み応えの中にあったから。『私の男』もそうでした。

 限界まで追いつめられた少女たちの心が、一矢報いんとて精一杯の牙を剥く姿に、ずきっとくるものがありました。子供であり少女であることの無力さは、痛いほどにわかるよ…と。 
 もう2度と決して、相手が大人であるというただそれだけの理由で、尊敬出来ない誰かの命令をきかされることはないのだと思うと、暗い喜びを感じるくらい…私もまた、自分の無力さを憎んで地団駄踏んでいた少女だったから。

 ちょっと個人的に残念だったのは、私が所謂ゲームというものを一切したことがなく、だから主人公葵がゲームに夢中になっていることに、共感はおろか理解も出来なかったことでしょうか。ゲームの話がイヤな訳ではなくてただどうしても、ちんぷんかんぷんになっちゃうのですよ。“バトルモード”とか、おおよその意味はわかるけれど、肝心なところでゲーム用語みたいなのが出てくるのはちと辛かったです。
 章のタイトルがちょっと可笑しくて、そういうバランス感覚も好きでした。物語の主旋律はシリアスなのに、ちょっとしたところでクスッと笑える。どうして静香はゴスロリなんだろう…とか。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )