湊かなえ著 文春文庫
湊かなえさん、
「告白」贖罪」などを書いている作家さんです。
話が意外な結末になる。
また謎を残したまま終わる小説も少なくなく。
あまり読むと、感動より後味が悪くなるので
最近、ご無沙汰していました。
この「望郷」は
瀬戸内海に浮かぶ白綱島という架空の島を舞台にした
短編小説集です。
6本の短編が入っています。
白綱島というある意味閉塞した世界で生まれ、
自分の意思を持っても出ることができなかった人。
また縁あってきた人たちの物語です。
推理小説っぽくない推理小説になるらしく、
謎解き感がないのに最後に謎に気づかされる感が
おもしろいです。
実際、日本推理作家協会賞をとった作品も入っています。
いつものドロドロした作風はありませんので
サクサクと読めます。
ネタバレなしであらすじを。
「みかんの花」
白綱島市は吸収合併することに。
その閉幕式に
高校生の時に駆け落ちして音信不通だった姉が
来賓として参加するという。
姉は作家になっていた。
今まで音信不通だったのに
なぜ突然閉幕式に参加するのか。
疑問に思う妹・私。
姉や姉の想い人、母の言葉の端から、
姉の失踪は駆け落ちではなかったのではと疑い、
自分の推理を姉に話す。
「海の星」
父親がある日帰ってこなくなった。
父の行方を捜す母と息子・洋平。
父が行方不明になったことで
母は働きに出るが貧しくなった。
洋平は家計の足しにと釣りを始める。
釣りをしているときに「おっさん」に
声をかけられ、魚をもらう。
おっさんはその後も洋平に声をかけて
魚を渡したり、
洋平に家の勝手口からあがりイカをおろして
刺身にした。
あるときには娘が作った菓子を渡した。
ある日、おっさんは正装してゆりの花束をもって
いつもは勝手口からあがるのに
この日ばかりは玄関からきた。
そして母に
「だんなさんは死んだと区切りをつけて、
もっと楽な生き方をしてもいいじゃないか」
といった。
男やもめのおっさんからのプロポーズ。
母は激昂し、おっさんを追い返し、
それきりおっさんに会うことはなかった。
数年後、高校生なった洋平は、
おっさんの娘、美咲と同級生になり
おっさんが「ボランティア」として
洋平に接していたことをしり、洋平は激怒する。
さらに数年後、洋平は結婚して家庭をもっていた。
そこに美咲から
「お父さんのことでどうしても話したいことがある」
と連絡が入り、会うことに。
おっさんは肝臓がんになり、
「墓場まで持って行こうと思ったがやはり」と
美咲に洋平に接したいきさつを話した。
そのいきさつは。。おっさんの正装の真相は。。
「夢の国」
夢都子はあこがれのドリームランドの前に
家族で並んでいた。
夢都子は旧家に生まれた。
超封建的で嫁や子供には発言権はなく、
祖母に生活のすべてを管理されていた。
友達がドリームランドにいき
いろいろな話をしてくれるのをうらやましく聞いていた。
ある日、家族でドリームランドに行く話が出て
喜ぶが、翌朝には、
「おばあさまは許してくれないわ」といわれる。
贅沢や楽しいことは禁止なのだ。
くじ引きでドリームランドご招待券があたっても
返上してしまう母。
「くじであたっても当てたあなたが悪いと
おばあさまにいわれるでしょう」
と母。
ご招待であってもドリームランドに行くことは贅沢であり
楽しむことは許されないのだ。
そして、例年、高校の修学旅行はドリームランドに行くことに
なっていたが、
夢都子の学年からスキーにいくことに。
修学旅行にかけていたのに残念がる夢都子。
また隣に席の平川も残念がった。
高校もできる子は、島の外に高校に行ったが、
「女のくせに島の外までいって勉強する必要はない」と
祖母に言われて、島内の高校に進学した。
高校出たら就職して自立しようとしたが、
「大学を出なかったら世間様からなんていわれるか」と
反対を受け、しまいには、
「家から通える大学にいくこと」と条件が付けられてしまう。
自宅から通える女子大に進学しても
島への帰りの足が早くなくなってしまうため、
友達の誘いもすべて断るしかなかった。
教育実習で平川に再会する。
教育実習の準備で帰りのバスがなくなる。
車で来ていた平川が送ってくれる。
しかし、平川の車に乗っていたことを
近所の人に見られて、
平川のおっさん顔から「不倫している」と疑われる。
そして平川に食事に誘われるが、
祖母になんていわれるか想像ができてしまい断るが、
車をUターンしてきた平川に
「やっぱり食事に行こう」という。
どうして食事に行きたくなったのか。
夢都子をしばっていたの祖母だったのか。
「雲の糸」
ヒロタカは母が昔犯した罪のため
島中から虐げられながら育った。
大きくなり島を逃げるように飛び出し
歌手になった。
そんなある日、見慣れぬ電話番号からの
電話があった。
島の同級生の的場裕也だった。
ヒロタカの姉は
裕也の親が経営する会社で働いていたので、
電話番号を教えてほしいという依頼を
断ることができなかったのだ。
裕也の父が経営する会社が操業50周年記念に
パーティーをするのでゲストして参加してほしい。
パーティーの日は、ヒロタカの休みに合わせるという。
母と姉を人質に取られているため
参加するしかなかった。
裕也は
昔のことを反省して、応援するというが。。。
島に帰ると、歓迎されつつも
理不尽なことがたくさんあり、
断り切れずに対応するヒロタカ。
パーティーでも母の過去を持ち出されたり、
「島中で面倒をみて応援してきた」と言われたり。
裕也に頼まれて、書いたサインを渡せば
「いや結構。
経歴がクリーンじゃない君は
紅白歌合戦は無理だな」
「空を登るなんて演技に悪い歌なんて
歌うな」
と突き返される。
心のバランスを崩したヒロタカは
海へ飛び込む。
母の犯した犯罪の理由はなんだったのか。。。
「石の十字架」
千晶は、娘志穂が登校拒否になり、
ふたりだけで白綱島に引っ越す。
白綱島は、千晶の父の故郷で、
父が自殺した後、祖母に引き取られたところだった。
台風のため、あっというまに床上浸水し
屋外に避難をしようとするがドアが開かない。
窓には鉄格子がついていて出ることもできない。
水かさがもっとあがってきたら、
天井を破るしかないと思う。
おびえる志穂を励ますため
千晶は石鹸で十字架を作る。
そして千晶の昔話を話すのだった。
千晶の父は会社のお金を横領し自殺し、
母は精神病院に入っているという噂が立ち、
千晶は孤立していた。
同じくクラスで孤立していためぐみと
一人でいるよりはいいかという気持ちで
一緒に行動するようになった。
めぐみは島の歴史をよく知っていた。
白綱山、別名観音山は
都から流されてきた盲人の僧侶が
死ぬまで掘り続けた観音様が何体もあった。
その観音様に十字架のしるしをつけて
祈る隠れキリシタンもいた。
キリシタンを捕まえるため役人が
白綱山を登ろうとすると山崩れが起きて
役人は死に、キリシタンは逃げ切ったという。
めぐみたちは、その彫られた十字架を見つけて祈れば、
キリシタンのように願いが叶うのではないかと思い、
必死で見つけて願う。
けれどめぐみの願いは重いものだった。
そして、孤立した千晶たちの運命は。
「光の航路」
航は小学校の教師。
のどかな田舎にはいじめなんてないと思いつつ
赴任したら、加害者の親が
「証拠は?うちが加害者です。
警察に訴えます」
といわれて、ゲンナリする。
警察、弁護士といわれたら
それ以上押さずに
帰って来いと校長から言われていた。
いじめの対応にいやになった航が、
病気かケガで数か月休みたいと思った矢先、
航の家は放火に遭い、
熟睡をしていた航は火傷をして
数日入院することになった。
そこへ父の元教え子の
畑野が訪ねてくる。
新聞記事をみての見舞いだった。
畑野の「お父さんを尊敬して教師になったのか」
の質問に対して、「安定した職業だから」と答える航。
そして父の行動に対して納得のいかなかったことを
畑野に対して話すのだった。
父の納得がいかなかった行動の真相を話し始める畑野。
父の教師としてとった行動を知るのだった。
父がしたことと畑野のひみつはなにか。
そして自分の進むべき道が見えてきた航だった。
長く長くあらすじを書いてしまいましたが。。。。
感想の前に。
偶然ですが、年内の予定で
テレビ東京系列でこの望郷の中の
「みかんの花」「海の星」「雲の糸」が
ドラマ化されることになりました。
なんと「海の星」の「おっさん」を
椎名桔平様が演じることになりました。
おっさんが椎名桔平。。。。
おっさんっていうと中野秀雄とかピエール瀧とかムロツヨシあたりが
似合っていると思いますが。。。
ずんぐりむっくり系が。。。
でも、桔平様の正装して百合の花をもっての姿を見ると
ホレてしまうではないか
話の結末そっちのけになりそう
とにかく、「みかんの花」と「海の星」と「夢の国」
のインパクトがすごかったです。
「みかんの花」は推理小説と思って読んでいないので
え。。なんでそんな推理をしてしまうの???
とびっくりしました。
「海の星」では、
おっさんは娘に何を伝えたんだろうと興味津々で読み進めました。
その伝えたかった内容にびっくり。
地元の人でも知らないことってあるんですね。
そして、あのおっさんの正装。
真相を告げるためにした正装だけでなく、
プロポーズのための正装だったような気もします。
「夢の国」はおばあさまが死んだ真相にびっくり。
結局、夢都子はおばあさまが死んでも
白綱島に縛られる運命だったんですね。
ちなみに白綱島は、因島のことらしいです。
湊かなえさんの出身地とか。
合併する前に人口は2万7千人。
ここの有名人は、
湊かなえさん、ポルノグラフティ、東ちづるさんとか
少ない人口でインパクトの強い有名人を輩出しています。
ちなみに吸収合併した先は尾道市。
湊かなえさんの作品に嫌悪感がある人でも
本当に湊かなえさんの作品なの???という感じで
読める良い本です。
やっぱり。。。。ネタバレを。。。
「みかんの花」
姉はヒッチハイカーの健一と駆け落ちをしたのでなく、
殺し、オブジェの下に埋めたんじゃないか。
そのオブジェには「ようこそ白綱島市」と書かれていて
閉幕式で壊される、壊されて健一の遺体が出てくるのを
恐れて見に来たんじゃないかと。
その健一を埋めたのは、姉のことを好きだった宮下で、
罪を共有しているんじゃないかと私は推理します。
姉と宮下の会話から、姉が帰ってきた理由を推測し、
それをストレートの姉にききます。
姉は否定しませんでした。
健一が私の家で土地を売ったお金が入金されている
通帳を探しているのに出くわして包丁で刺したというのです。
姉が去ったあと、認知症の母がつぶやく。
「お姉ちゃんは帰ってこない。
私の罪を背負って島を出て行ったんだから。
私のせいで」と。。
もしかして、姉が殺したんじゃなく母が健一を刺したのでは
ないか。
健一がいなくなったことで人が騒がないように
姉は健一と駆け落ちしたことにして島を出たのではないかと。
ネタバレはこんな感じですが。。
でも島を出た後の姉の生活費ってどうしたんでしょうかね。
計画的ではないので、働くところもリサーチしていない。
大金の入った通帳は島に置いて行って、
母が仕送りでも隠れてしていたのでしょうか?
仕送りすれば、個人情報保護のない島。
あっという間に「どこにいるみたいよ」と情報が流れるし。
ここを説得させる文がありませんでした。
「海の星」
おっさんは、漁に出ていて、
洋平の父親の遺体を引き上げたけれども
流してしまいます。
理由は、善意で引き上げても
丸一日犯罪者として警察の取り調べを受けなくてはならないし、
遺体がかかった網で取った魚を買う人はなく、
生活が成り立たなくなるからです。
しかし。。一生懸命に父親を探す洋平たち親子の姿を見て
伝えなければと思うのです。
電話や投書で父親は死んでいることを伝えるけれど、
嫌がらせと受け止められてしまう。
そして、ある日、釣りをしている洋平に声をかけ、
家庭の状況を聞いて、生活の糧になるように魚などを
渡していたのでした。
あの日の正装は、父親を引き上げたことを伝え、
引き上げた場所に連れていき花を手向けるつもりで
したものでした。
美咲にはこの遺体を引き上げ流したことを言えず
「ボランティアで行っている」といっていたので、
それを信じた美咲がそのままを言ってしまい、
洋平は不信感をもったのでした。
母はいつのころからか父は海で死に、
遺体は流されたと思い、
「自分が死んだら墓はいらない。海に流してくれ」と
父と一緒に海で眠ることを願っていました。
これはよくできた小説でしたが、
海の星の真相がわからない。
どうして海の水をすくって海面にぶちまけると
海の星ができるのかがわかりませんでした。
解説で、夜光虫が刺激で発光するのが海の星と
書いていました。
本文で書いてほしいな。。
海から離れたところに住む人間には意味不明です。
消化不良になります。
「夢の国」
Uターンしてきた平川に車に乗り
「食事に行こう。帰りたくない」といった真相は
家に入ったら、井戸の前で祖母が倒れていたのです。
夢都子は母がこの日は帰宅が遅いことを知っていて
このまま放置すれば祖母が死ぬ。
そのためには家にいなかったことをするために
平川の車に乗ったのでした。
衝撃ですね。
だから、朝帰りになっても
祖母に叱られることもなく、
祖母が死んだことで家がバタバタしていることを
想像していたんです。
しかし。。オチがついていて、
危篤の祖母を放置し死なせて、
束縛から解放される予定が、
一夜の出来事で妊娠してしまうのでした。
だから、文頭からのドリームランドの門に並ぶ親子は
平川と夢都子とそのときにできた子供でした。
妊娠して別な意味で縛られる。
祖母が死んだあと、母をドリームランドに誘うけれど
行かないという。
本当に自分と母を縛っていたのは
祖母だったんだろうかと考えます。
本当に衝撃的でした。
「雲の糸」
雲の糸は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」からきています。
努力して高いところへあがり別世界にきたのに
どうして島の人は自分を見下すのか。
この糸は努力した僕だけのものだ。
だれも登ってくるな、来るなとと叫ぶ。
雲の糸は切れてヒロタカは海に落ちます。
「来るな」という言葉から自殺と思われるのでした。
意識が戻ったヒロタカは、
糸が切れてしまったから自分はダメだと思う。
別世界にいくことだけが救われると思っていた。
今回の『自殺未遂』で母親の秘密をファンにも
知られてしまったと思ったのです。
ヒロタカは母が父の暴力に我慢して、父を殺さなかったら
僕たちは苦しまなくてもよかったのにと思っていました。
しかし、母の殺人の真相は
父がヒロタカは自分の子ではないと思い、
ヒロタカの首を絞めようとしていたのを
止めるために刺したのです。
何度も刺し死に至るまで手を放さなかった。
母の犯罪の原因が自分と知ります。
また母がヒロタカの将来のために
自殺を図ったことも知ります。
母に常に守られていたことを知ったのでした。
これは意外性もあまりなかったので、
感想はありません。
「石の十字架」
めぐみちゃんは願いの真相は
母親の素行だったようです。
派手な格好をし昼間からビールを飲む母。
母は育児放棄をしていました。
そのことを知っていた祖母は、
めぐみちゃんが午後からの出発にしたのは
お弁当を作れないためと悟り、
きっとおなかもすかせているだろうと思い、
巻きずしをつくり千晶に持たせたのでした。
めぐみの告白から、
千晶の祖母の働きかけで民生委員も動いてくれても
あまり改善しなくて、
めぐみ親子の関係は悪化させたかもと
千晶は後悔していました。
千晶は消防隊に救助されます。
それは、めぐみの通報からのものでした。
千晶はめぐみに相談したくて
めぐみがいるから白綱島にきたことに気が付きます。
これは意外性もあまりなかったので、
感想はありません。
「光の航路」
島の最後の進水式のイベントを父は教え子らしき人と
いっしょにいっていたことが納得できなかった航。
まして末期がんだったらなおさら航に伝えたいことが
あったはずです。
父と一緒にいたのは畑野でした。
当時畑野は理不尽ないじめに遭っていて
死にたいと思っていたのでした。
そして船の進水式をみながら
父は畑野にいろいろなことを伝えます。
また畑野から父がいじめに対して
どのようなことをしていじめの真相などを
調べて行ったかを知ります。
父の偉大さ父の自分への想いを知ります。
畑野は父から受けた恩を多くの人に
伝えるために中学校の教師になったのでした。
そして、今抱えているいじめについて
父のような対応ができるように思うのでした。
感想は、
いじめの内容が壮絶で。。。。。
だけれど、
「進水式は子供が生まれた時の喜びを重ねたもの。
長い航海は助けてやることはできないけれど、
嵐や孤独に耐えられないときは
祝福されて送り出されたことを思い出してほしい」
は名言です。
湊かなえさん、
「告白」贖罪」などを書いている作家さんです。
話が意外な結末になる。
また謎を残したまま終わる小説も少なくなく。
あまり読むと、感動より後味が悪くなるので
最近、ご無沙汰していました。
この「望郷」は
瀬戸内海に浮かぶ白綱島という架空の島を舞台にした
短編小説集です。
6本の短編が入っています。
白綱島というある意味閉塞した世界で生まれ、
自分の意思を持っても出ることができなかった人。
また縁あってきた人たちの物語です。
推理小説っぽくない推理小説になるらしく、
謎解き感がないのに最後に謎に気づかされる感が
おもしろいです。
実際、日本推理作家協会賞をとった作品も入っています。
いつものドロドロした作風はありませんので
サクサクと読めます。
ネタバレなしであらすじを。
「みかんの花」
白綱島市は吸収合併することに。
その閉幕式に
高校生の時に駆け落ちして音信不通だった姉が
来賓として参加するという。
姉は作家になっていた。
今まで音信不通だったのに
なぜ突然閉幕式に参加するのか。
疑問に思う妹・私。
姉や姉の想い人、母の言葉の端から、
姉の失踪は駆け落ちではなかったのではと疑い、
自分の推理を姉に話す。
「海の星」
父親がある日帰ってこなくなった。
父の行方を捜す母と息子・洋平。
父が行方不明になったことで
母は働きに出るが貧しくなった。
洋平は家計の足しにと釣りを始める。
釣りをしているときに「おっさん」に
声をかけられ、魚をもらう。
おっさんはその後も洋平に声をかけて
魚を渡したり、
洋平に家の勝手口からあがりイカをおろして
刺身にした。
あるときには娘が作った菓子を渡した。
ある日、おっさんは正装してゆりの花束をもって
いつもは勝手口からあがるのに
この日ばかりは玄関からきた。
そして母に
「だんなさんは死んだと区切りをつけて、
もっと楽な生き方をしてもいいじゃないか」
といった。
男やもめのおっさんからのプロポーズ。
母は激昂し、おっさんを追い返し、
それきりおっさんに会うことはなかった。
数年後、高校生なった洋平は、
おっさんの娘、美咲と同級生になり
おっさんが「ボランティア」として
洋平に接していたことをしり、洋平は激怒する。
さらに数年後、洋平は結婚して家庭をもっていた。
そこに美咲から
「お父さんのことでどうしても話したいことがある」
と連絡が入り、会うことに。
おっさんは肝臓がんになり、
「墓場まで持って行こうと思ったがやはり」と
美咲に洋平に接したいきさつを話した。
そのいきさつは。。おっさんの正装の真相は。。
「夢の国」
夢都子はあこがれのドリームランドの前に
家族で並んでいた。
夢都子は旧家に生まれた。
超封建的で嫁や子供には発言権はなく、
祖母に生活のすべてを管理されていた。
友達がドリームランドにいき
いろいろな話をしてくれるのをうらやましく聞いていた。
ある日、家族でドリームランドに行く話が出て
喜ぶが、翌朝には、
「おばあさまは許してくれないわ」といわれる。
贅沢や楽しいことは禁止なのだ。
くじ引きでドリームランドご招待券があたっても
返上してしまう母。
「くじであたっても当てたあなたが悪いと
おばあさまにいわれるでしょう」
と母。
ご招待であってもドリームランドに行くことは贅沢であり
楽しむことは許されないのだ。
そして、例年、高校の修学旅行はドリームランドに行くことに
なっていたが、
夢都子の学年からスキーにいくことに。
修学旅行にかけていたのに残念がる夢都子。
また隣に席の平川も残念がった。
高校もできる子は、島の外に高校に行ったが、
「女のくせに島の外までいって勉強する必要はない」と
祖母に言われて、島内の高校に進学した。
高校出たら就職して自立しようとしたが、
「大学を出なかったら世間様からなんていわれるか」と
反対を受け、しまいには、
「家から通える大学にいくこと」と条件が付けられてしまう。
自宅から通える女子大に進学しても
島への帰りの足が早くなくなってしまうため、
友達の誘いもすべて断るしかなかった。
教育実習で平川に再会する。
教育実習の準備で帰りのバスがなくなる。
車で来ていた平川が送ってくれる。
しかし、平川の車に乗っていたことを
近所の人に見られて、
平川のおっさん顔から「不倫している」と疑われる。
そして平川に食事に誘われるが、
祖母になんていわれるか想像ができてしまい断るが、
車をUターンしてきた平川に
「やっぱり食事に行こう」という。
どうして食事に行きたくなったのか。
夢都子をしばっていたの祖母だったのか。
「雲の糸」
ヒロタカは母が昔犯した罪のため
島中から虐げられながら育った。
大きくなり島を逃げるように飛び出し
歌手になった。
そんなある日、見慣れぬ電話番号からの
電話があった。
島の同級生の的場裕也だった。
ヒロタカの姉は
裕也の親が経営する会社で働いていたので、
電話番号を教えてほしいという依頼を
断ることができなかったのだ。
裕也の父が経営する会社が操業50周年記念に
パーティーをするのでゲストして参加してほしい。
パーティーの日は、ヒロタカの休みに合わせるという。
母と姉を人質に取られているため
参加するしかなかった。
裕也は
昔のことを反省して、応援するというが。。。
島に帰ると、歓迎されつつも
理不尽なことがたくさんあり、
断り切れずに対応するヒロタカ。
パーティーでも母の過去を持ち出されたり、
「島中で面倒をみて応援してきた」と言われたり。
裕也に頼まれて、書いたサインを渡せば
「いや結構。
経歴がクリーンじゃない君は
紅白歌合戦は無理だな」
「空を登るなんて演技に悪い歌なんて
歌うな」
と突き返される。
心のバランスを崩したヒロタカは
海へ飛び込む。
母の犯した犯罪の理由はなんだったのか。。。
「石の十字架」
千晶は、娘志穂が登校拒否になり、
ふたりだけで白綱島に引っ越す。
白綱島は、千晶の父の故郷で、
父が自殺した後、祖母に引き取られたところだった。
台風のため、あっというまに床上浸水し
屋外に避難をしようとするがドアが開かない。
窓には鉄格子がついていて出ることもできない。
水かさがもっとあがってきたら、
天井を破るしかないと思う。
おびえる志穂を励ますため
千晶は石鹸で十字架を作る。
そして千晶の昔話を話すのだった。
千晶の父は会社のお金を横領し自殺し、
母は精神病院に入っているという噂が立ち、
千晶は孤立していた。
同じくクラスで孤立していためぐみと
一人でいるよりはいいかという気持ちで
一緒に行動するようになった。
めぐみは島の歴史をよく知っていた。
白綱山、別名観音山は
都から流されてきた盲人の僧侶が
死ぬまで掘り続けた観音様が何体もあった。
その観音様に十字架のしるしをつけて
祈る隠れキリシタンもいた。
キリシタンを捕まえるため役人が
白綱山を登ろうとすると山崩れが起きて
役人は死に、キリシタンは逃げ切ったという。
めぐみたちは、その彫られた十字架を見つけて祈れば、
キリシタンのように願いが叶うのではないかと思い、
必死で見つけて願う。
けれどめぐみの願いは重いものだった。
そして、孤立した千晶たちの運命は。
「光の航路」
航は小学校の教師。
のどかな田舎にはいじめなんてないと思いつつ
赴任したら、加害者の親が
「証拠は?うちが加害者です。
警察に訴えます」
といわれて、ゲンナリする。
警察、弁護士といわれたら
それ以上押さずに
帰って来いと校長から言われていた。
いじめの対応にいやになった航が、
病気かケガで数か月休みたいと思った矢先、
航の家は放火に遭い、
熟睡をしていた航は火傷をして
数日入院することになった。
そこへ父の元教え子の
畑野が訪ねてくる。
新聞記事をみての見舞いだった。
畑野の「お父さんを尊敬して教師になったのか」
の質問に対して、「安定した職業だから」と答える航。
そして父の行動に対して納得のいかなかったことを
畑野に対して話すのだった。
父の納得がいかなかった行動の真相を話し始める畑野。
父の教師としてとった行動を知るのだった。
父がしたことと畑野のひみつはなにか。
そして自分の進むべき道が見えてきた航だった。
長く長くあらすじを書いてしまいましたが。。。。
感想の前に。
偶然ですが、年内の予定で
テレビ東京系列でこの望郷の中の
「みかんの花」「海の星」「雲の糸」が
ドラマ化されることになりました。
なんと「海の星」の「おっさん」を
椎名桔平様が演じることになりました。
おっさんが椎名桔平。。。。
おっさんっていうと中野秀雄とかピエール瀧とかムロツヨシあたりが
似合っていると思いますが。。。
ずんぐりむっくり系が。。。
でも、桔平様の正装して百合の花をもっての姿を見ると
ホレてしまうではないか
話の結末そっちのけになりそう
とにかく、「みかんの花」と「海の星」と「夢の国」
のインパクトがすごかったです。
「みかんの花」は推理小説と思って読んでいないので
え。。なんでそんな推理をしてしまうの???
とびっくりしました。
「海の星」では、
おっさんは娘に何を伝えたんだろうと興味津々で読み進めました。
その伝えたかった内容にびっくり。
地元の人でも知らないことってあるんですね。
そして、あのおっさんの正装。
真相を告げるためにした正装だけでなく、
プロポーズのための正装だったような気もします。
「夢の国」はおばあさまが死んだ真相にびっくり。
結局、夢都子はおばあさまが死んでも
白綱島に縛られる運命だったんですね。
ちなみに白綱島は、因島のことらしいです。
湊かなえさんの出身地とか。
合併する前に人口は2万7千人。
ここの有名人は、
湊かなえさん、ポルノグラフティ、東ちづるさんとか
少ない人口でインパクトの強い有名人を輩出しています。
ちなみに吸収合併した先は尾道市。
湊かなえさんの作品に嫌悪感がある人でも
本当に湊かなえさんの作品なの???という感じで
読める良い本です。
やっぱり。。。。ネタバレを。。。
「みかんの花」
姉はヒッチハイカーの健一と駆け落ちをしたのでなく、
殺し、オブジェの下に埋めたんじゃないか。
そのオブジェには「ようこそ白綱島市」と書かれていて
閉幕式で壊される、壊されて健一の遺体が出てくるのを
恐れて見に来たんじゃないかと。
その健一を埋めたのは、姉のことを好きだった宮下で、
罪を共有しているんじゃないかと私は推理します。
姉と宮下の会話から、姉が帰ってきた理由を推測し、
それをストレートの姉にききます。
姉は否定しませんでした。
健一が私の家で土地を売ったお金が入金されている
通帳を探しているのに出くわして包丁で刺したというのです。
姉が去ったあと、認知症の母がつぶやく。
「お姉ちゃんは帰ってこない。
私の罪を背負って島を出て行ったんだから。
私のせいで」と。。
もしかして、姉が殺したんじゃなく母が健一を刺したのでは
ないか。
健一がいなくなったことで人が騒がないように
姉は健一と駆け落ちしたことにして島を出たのではないかと。
ネタバレはこんな感じですが。。
でも島を出た後の姉の生活費ってどうしたんでしょうかね。
計画的ではないので、働くところもリサーチしていない。
大金の入った通帳は島に置いて行って、
母が仕送りでも隠れてしていたのでしょうか?
仕送りすれば、個人情報保護のない島。
あっという間に「どこにいるみたいよ」と情報が流れるし。
ここを説得させる文がありませんでした。
「海の星」
おっさんは、漁に出ていて、
洋平の父親の遺体を引き上げたけれども
流してしまいます。
理由は、善意で引き上げても
丸一日犯罪者として警察の取り調べを受けなくてはならないし、
遺体がかかった網で取った魚を買う人はなく、
生活が成り立たなくなるからです。
しかし。。一生懸命に父親を探す洋平たち親子の姿を見て
伝えなければと思うのです。
電話や投書で父親は死んでいることを伝えるけれど、
嫌がらせと受け止められてしまう。
そして、ある日、釣りをしている洋平に声をかけ、
家庭の状況を聞いて、生活の糧になるように魚などを
渡していたのでした。
あの日の正装は、父親を引き上げたことを伝え、
引き上げた場所に連れていき花を手向けるつもりで
したものでした。
美咲にはこの遺体を引き上げ流したことを言えず
「ボランティアで行っている」といっていたので、
それを信じた美咲がそのままを言ってしまい、
洋平は不信感をもったのでした。
母はいつのころからか父は海で死に、
遺体は流されたと思い、
「自分が死んだら墓はいらない。海に流してくれ」と
父と一緒に海で眠ることを願っていました。
これはよくできた小説でしたが、
海の星の真相がわからない。
どうして海の水をすくって海面にぶちまけると
海の星ができるのかがわかりませんでした。
解説で、夜光虫が刺激で発光するのが海の星と
書いていました。
本文で書いてほしいな。。
海から離れたところに住む人間には意味不明です。
消化不良になります。
「夢の国」
Uターンしてきた平川に車に乗り
「食事に行こう。帰りたくない」といった真相は
家に入ったら、井戸の前で祖母が倒れていたのです。
夢都子は母がこの日は帰宅が遅いことを知っていて
このまま放置すれば祖母が死ぬ。
そのためには家にいなかったことをするために
平川の車に乗ったのでした。
衝撃ですね。
だから、朝帰りになっても
祖母に叱られることもなく、
祖母が死んだことで家がバタバタしていることを
想像していたんです。
しかし。。オチがついていて、
危篤の祖母を放置し死なせて、
束縛から解放される予定が、
一夜の出来事で妊娠してしまうのでした。
だから、文頭からのドリームランドの門に並ぶ親子は
平川と夢都子とそのときにできた子供でした。
妊娠して別な意味で縛られる。
祖母が死んだあと、母をドリームランドに誘うけれど
行かないという。
本当に自分と母を縛っていたのは
祖母だったんだろうかと考えます。
本当に衝撃的でした。
「雲の糸」
雲の糸は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」からきています。
努力して高いところへあがり別世界にきたのに
どうして島の人は自分を見下すのか。
この糸は努力した僕だけのものだ。
だれも登ってくるな、来るなとと叫ぶ。
雲の糸は切れてヒロタカは海に落ちます。
「来るな」という言葉から自殺と思われるのでした。
意識が戻ったヒロタカは、
糸が切れてしまったから自分はダメだと思う。
別世界にいくことだけが救われると思っていた。
今回の『自殺未遂』で母親の秘密をファンにも
知られてしまったと思ったのです。
ヒロタカは母が父の暴力に我慢して、父を殺さなかったら
僕たちは苦しまなくてもよかったのにと思っていました。
しかし、母の殺人の真相は
父がヒロタカは自分の子ではないと思い、
ヒロタカの首を絞めようとしていたのを
止めるために刺したのです。
何度も刺し死に至るまで手を放さなかった。
母の犯罪の原因が自分と知ります。
また母がヒロタカの将来のために
自殺を図ったことも知ります。
母に常に守られていたことを知ったのでした。
これは意外性もあまりなかったので、
感想はありません。
「石の十字架」
めぐみちゃんは願いの真相は
母親の素行だったようです。
派手な格好をし昼間からビールを飲む母。
母は育児放棄をしていました。
そのことを知っていた祖母は、
めぐみちゃんが午後からの出発にしたのは
お弁当を作れないためと悟り、
きっとおなかもすかせているだろうと思い、
巻きずしをつくり千晶に持たせたのでした。
めぐみの告白から、
千晶の祖母の働きかけで民生委員も動いてくれても
あまり改善しなくて、
めぐみ親子の関係は悪化させたかもと
千晶は後悔していました。
千晶は消防隊に救助されます。
それは、めぐみの通報からのものでした。
千晶はめぐみに相談したくて
めぐみがいるから白綱島にきたことに気が付きます。
これは意外性もあまりなかったので、
感想はありません。
「光の航路」
島の最後の進水式のイベントを父は教え子らしき人と
いっしょにいっていたことが納得できなかった航。
まして末期がんだったらなおさら航に伝えたいことが
あったはずです。
父と一緒にいたのは畑野でした。
当時畑野は理不尽ないじめに遭っていて
死にたいと思っていたのでした。
そして船の進水式をみながら
父は畑野にいろいろなことを伝えます。
また畑野から父がいじめに対して
どのようなことをしていじめの真相などを
調べて行ったかを知ります。
父の偉大さ父の自分への想いを知ります。
畑野は父から受けた恩を多くの人に
伝えるために中学校の教師になったのでした。
そして、今抱えているいじめについて
父のような対応ができるように思うのでした。
感想は、
いじめの内容が壮絶で。。。。。
だけれど、
「進水式は子供が生まれた時の喜びを重ねたもの。
長い航海は助けてやることはできないけれど、
嵐や孤独に耐えられないときは
祝福されて送り出されたことを思い出してほしい」
は名言です。