ら族の歳時記

「道が分かれていても人は幸せになる道を選ぶ能力がある。」
能力を信じ、心の安らぎの場を求めて、一歩一歩。

旅猫レポート

2017-06-08 23:28:54 | 本を読みました

有川浩著 講談社文庫 


<あらすじ>
野良猫の「僕」は
銀色のワゴンの上で寝るのが好きだった。

幸いにもこのワゴン持ち主は
「僕」が寝ていても、追い払うことはなく
供物をささげてから、「僕」を触るよくできた人間だった。

そして、「僕」がいなくても
ワゴンの後輪の近くに餌を置いてくれるようになり
良い関係を保っていた。

ある日、「僕」は交通事故に遭い、
思わず、その人間に助けを求めた。

それから、「僕」はその人間の飼い猫になった。


「僕」はナナと名付けられた。
人間の名前は「サトル」だった。

何年か暮らして、
サトルは僕と暮らせなくなった。

昔の友達と連絡を取り、
その友達のもとへワゴン車で
僕を連れてお見合いに行く。

賢い僕は人間の言葉がわかり、
友達を悟との会話で
サトルの今までの出来事を知るのだった。

僕の住み家を見つけるための旅は続く。

サトルの僕と暮らせなくなった理由とは。。。







<感想とネタバレ>

さくさくと読めてしまいます。

有川浩さんは愛猫家とは聞いていたけれど
猫の描写や、
猫の思っていることをうまく伝えてくれます。


海=餌がある。

願わくは餌をとってしまおうと
わくわくしていたナナ。

しかし、海原の音にビビり、
サトルの頭に退避。

それでも安全ではないと思い、
逃げる姿には笑っちゃいました。



また、お酒をかけたささみを
餌として出されたとき、
エアー砂掛けをして
お断りするところも。

エアー砂掛け。

多分、有川浩さん宅の猫は
気を使ってするんでしょうね。





ネタバレです。


完全なネタバレです。












サトルは末期のガンでした。

それでナナの棲家を
見つけるために
友達に連絡をとって
友達の家まで旅をしていたのでした。



けれど、サトルが直感的に
この家にはナナは合わないと思ったり、
ナナは意図的に、
その家の猫と合わないようにしたり、
または、ご主人様思いの犬が、
サトルの命が長くないことにおいで感じ、
ナナがいることで
ご主人様が苦しむんじゃないかと思い
拒絶したりと、いろいろな拒絶理由が
ありました。

そして、サトルは、
ナナの棲家を見つけることが
できなくて、
遠からず寝たり起きたりの生活に
なったときのために
マンションを引き払い叔母のもとへ
ナナと共に身を寄せることになったのでした。


日に日に衰えていくサトル。

ついに入院することに。
もう家に帰ってくることはないと
サトルは覚悟して、
入院準備をします。

ナナは旅行鞄に荷を積めるのをみて
「旅に出るんだ」と勘違いをして
自分から移動用のゲージに入ります。

サトルはそんなナナの姿をみて
切なくなります。

そしてサトルは、
ナナが追いかけてこれないように
ゲージのドア側を壁につけて
「ばかやろう」といって
家を出たのでした。


数日後、病室には入れないけれど
庭で会うならなら猫をつけてきても
良いという許可をもらい、
ナナはサトルの叔母のノリコに
つられてサトルに会います。

面会が終わり、
ナナをゲージにいれ車で待たせます。
その間に、サトルを病室に連れていきます。

ノリコが車のドアを開けた瞬間、
ナナは車から飛び出します。
ナナはその時を待っていたのです。

それからは野良猫となって、
病院の庭に出てくるサトルに
「面会」するようにになります。

そして、サトルの最後の時、
ノリコはナナを呼びます。
ナナはノリコの胸に飛び込み
サトルの病室にはいって
サトルの最後をみとるのでした。


感動ですよ。
ノリコが師長さんに
「猫をつれてきていいですか」と
聞いて、
「聞かれたらだめだというしか
 ないじゃないですか」
と答える師長。

その言葉の意味をとらえて
ナナを迎えに行くノリコ。

病院中がナナのサトルに対する
思いを知って応援していました。



猫が飼いたくなる一冊です。
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神の守り人 下 帰還編

2017-03-02 22:48:39 | 本を読みました


<あらすじ>

隊商と共にロタに向かうバルサとアスラ。

その隊商を飢えた狼の群れが襲う。

絶体絶命の危機を、
アスラが「神様」と祈ったことにより
救われる。

アスラがタルハマヤを呼び出し、
タルハマヤが狼を切り裂いたのだ。

アスラは快感に酔いしれ、
笑いながら狼を虐殺したのだった。



敵のことがよくわからないバルサは
交易宿場で情報屋に会う。

会うが、情報屋にバルサの情報をもってくるように
依頼をしたのは、士族長の次男であり、
また、国王の弟イーハンにバルサが対峙している
ことになっていた。

まったく心当たりがないバルサ。

このままでは、どこで襲われるかわからない。
隊商に迷惑がかかると判断したバルサは、
隊商から離れることに。

そこへ、タルの民がイアヌが訪れ、
同族を見捨てることはできないと
タルの民の移動に紛れて
タルだけが知っている道を使い
ジダン祭儀場へいくことを提案する。


その道中、つり橋の上で
襲われるバルサ。

アスラと引き離し、
バルサだけを殺すために
用意されたものだった。


バルサは傷を負い、
凍てつく川に落ちていく。



アスラは、シハナに会う。

すべてはシハナが仕組んだものだった。

シハナはアスラの母トリーシアを洗脳し、
タルハマヤの神は人々に幸せをもたらすことができるとし、
そのためにアスラをタルハマヤの神にしようとした。

アスラはその母の考えを信じていた。

シハナはアスラの力を武力として使い、
南部の暴動を止め、
イーハン王弟の力になりたいと思っていた。
そのために、アスラを何としても
手に入れたかったのだ。



一方、スファルは情報収集しながら
タンダとジダン祭儀場へ移動する。

ある夜、タンダの枕元に
バルサが現れる。

バルサが死んで、それを知らすために
枕元に立ったのではないかと
うろらえるタンダ。

スファルの元へ一匹の狼が現れ、
スファルをある小屋へ導く。



そこには傷ついたバルサが寝かされていた。

抱きしめるタンダ。


そして、スファルは、シハナの野望の全貌を知る。

ジダン祭儀場へ急ぎ、シハナをとらえる。

シハナはある部屋に軟禁されるが、
その部屋を監視していたのもシハナの一味で、
シハナは逃走し、
アスラを祭儀場の特別な場所に案内する。

バルサとタンダも追ってジダン祭儀場へ来た。


そして、建国を祝う式典のさ中、
イアヌが
「タルハマヤは鬼子ではない。
 偉大なる神だ」
と叫ぶ。

タルの女を供物として処刑するべきだ
と声があがる。

イアヌが殺されてしまうと思ったアスラは
タルハマヤを呼んでしまう。

アスラがタルハマヤになるのを
阻止しようとするチキサ、バルサ、タンダと、
シハナたちと死闘が始まる。

チキサの声を聴いたアスラは
「人を殺しちゃダメ」と
タルハマヤを封じるため、
自分の体に張り付いたヤドリギの輪を
引きちぎり、深い闇に落ちた。


アスラは多くの人を殺したしまった罪悪感で、
自分を忘れようとして眠ったままだった。

バルサたちはアスラをつれて新ヨゴ皇国へ帰っていった。

アスラが目覚めるようにと
アスラの好きなサラユの花畑に
バルサはアスラを抱いて連れだす日々を送っていた。




<感想>
破壊神、タルハマヤは出てきますが、
ファンタジー館はありません。

対策です。

これを読むと、
NHKのドラマが大変残念な出来栄えということが
分かります。


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神の守り人 上 来訪編

2017-01-14 23:55:07 | 本を読みました

上橋菜穂子著 『神の守り人 来訪編』新潮文庫


あらすじ

『夢の守り人』でけがをしたタンダに寄り添っていたバルサ。

その生活に飽きが来ていた。

といっても年齢的に用心棒生活に限界を感じ、
今後はどのように生きていけばよいか悩む。

そんなバルサの気持ちを察して、
タンダは、バルサを草市に誘う。

年に3日だけ開かれる薬草の市だ。

宿で、チキサとアスラの兄妹が
人買いに売られそうになっているのを見たバルサは
二人を助けようとするが、何かに襲われて負傷する。

アスラは無傷、チキサも負傷。
そして人買いら4人は、首を切られて死んでいた。

この惨状をみたロタ国の呪術師スファルは
アスラを殺さないといけないという。

納得ができないバルサは、アスラを連れて
逃避行に出るのだった。

それを追うスファル。
人質として捕らわれるタンダ。







ネタバレと感想


タンダとバルサの中が急接近します。

アスラの診察をしたタンダは
アスラには何かがついている。
それは呪術ではとりようのないものだから、
関わらない方が良いという。

アスラの殺される運命に納得がいかない。
どうしてもアスラの命を助けたいバサラ。

バサラは旅立つ前に、タンダを抱き寄せます。


男女立場が逆じゃないか!

といっても急接近です。

言葉に表すことがなくても、
大切な存在なんですね。



この本はファンタジーにはなっていない(と思う)けれど、
異能の力を備えている人が出てきます。

まずは、スフィルたち「カシャル(猟犬)」。

ロタ王のために情報をあつめる種族です。

他の種族と比べて背が低いのが特徴。

呪術師であり薬草師でもあるけれど、
情報を収集するためには、
呪術や薬草を使って相手を眠らせたり
しゃべらせたりとかなりきわどいことをします。


また、自分の魂を動物に乗せることができる。

スフィルは、鷹に魂を乗せて飛ばせることができる。
それを使って逃避行中のバルサを見つけた。

スフィルの娘のシハナは、猿に魂を乗せることができる。

バルサたちが止まっている宿の火災は、
猿が小窓から入って、種火を掘り起こし、
そこに油壷を倒して起こしたもの。

猿はなぜこんなことをしたんだろうと思っていたら
なんとなんと、シハナの仕業だったのです。

その後も、シハナは猿を置き去りにして
話を盗み聞ぎしたり。。。。



そしてこの物語のもう一人の主人公アスラ。

この小説ではアスラの秘密を
バルサは知ることはないけれど、
スフィルは、惨事が起きた刑場にいた犬に
乗り移り、その原因がアスラの異能の力と知るのでした。



逃避行するバルサ、追うスフィル。

スフィルとタンダは協力しあうようになりますが、
シハナは、そのやり方は緩いと思い、
独断でいろいろなこと仕組み、
父を裏切り、ついにはタンダを捕らわれの身にします。


バルサは、隊商の用心棒をしながら
タンダを救う機会を狙おうとしていたところ、
「タンダ」を名乗る人物から、
ジタン祭儀場へ来いと手紙をもらいます。

バルサはアスラを連れて
新ヨゴ皇国からロタ王国へ隊商の用心棒をしながら
向かうのでした。


バルサはとアスラは無事にロタ王国へ
たどり着けることができるか。

シハナの目的はなに??

「帰還編」に続きます。
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望郷

2016-08-21 22:30:04 | 本を読みました
湊かなえ著 文春文庫

湊かなえさん、
「告白」贖罪」などを書いている作家さんです。

話が意外な結末になる。

また謎を残したまま終わる小説も少なくなく。

あまり読むと、感動より後味が悪くなるので
最近、ご無沙汰していました。




この「望郷」は
瀬戸内海に浮かぶ白綱島という架空の島を舞台にした
短編小説集です。
6本の短編が入っています。

白綱島というある意味閉塞した世界で生まれ、
自分の意思を持っても出ることができなかった人。

また縁あってきた人たちの物語です。

推理小説っぽくない推理小説になるらしく、
謎解き感がないのに最後に謎に気づかされる感が
おもしろいです。

実際、日本推理作家協会賞をとった作品も入っています。

いつものドロドロした作風はありませんので
サクサクと読めます。









ネタバレなしであらすじを。


「みかんの花」

白綱島市は吸収合併することに。
その閉幕式に
高校生の時に駆け落ちして音信不通だった姉が
来賓として参加するという。

姉は作家になっていた。

今まで音信不通だったのに
なぜ突然閉幕式に参加するのか。

疑問に思う妹・私。

姉や姉の想い人、母の言葉の端から、
姉の失踪は駆け落ちではなかったのではと疑い、
自分の推理を姉に話す。




「海の星」

父親がある日帰ってこなくなった。

父の行方を捜す母と息子・洋平。

父が行方不明になったことで
母は働きに出るが貧しくなった。

洋平は家計の足しにと釣りを始める。

釣りをしているときに「おっさん」に
声をかけられ、魚をもらう。

おっさんはその後も洋平に声をかけて
魚を渡したり、
洋平に家の勝手口からあがりイカをおろして
刺身にした。
あるときには娘が作った菓子を渡した。

ある日、おっさんは正装してゆりの花束をもって
いつもは勝手口からあがるのに
この日ばかりは玄関からきた。

そして母に
「だんなさんは死んだと区切りをつけて、
 もっと楽な生き方をしてもいいじゃないか」
といった。

男やもめのおっさんからのプロポーズ。

母は激昂し、おっさんを追い返し、
それきりおっさんに会うことはなかった。


数年後、高校生なった洋平は、
おっさんの娘、美咲と同級生になり
おっさんが「ボランティア」として
洋平に接していたことをしり、洋平は激怒する。


さらに数年後、洋平は結婚して家庭をもっていた。

そこに美咲から
「お父さんのことでどうしても話したいことがある」
と連絡が入り、会うことに。

おっさんは肝臓がんになり、
「墓場まで持って行こうと思ったがやはり」と
美咲に洋平に接したいきさつを話した。

そのいきさつは。。おっさんの正装の真相は。。




「夢の国」

夢都子はあこがれのドリームランドの前に
家族で並んでいた。


夢都子は旧家に生まれた。

超封建的で嫁や子供には発言権はなく、
祖母に生活のすべてを管理されていた。

友達がドリームランドにいき
いろいろな話をしてくれるのをうらやましく聞いていた。

ある日、家族でドリームランドに行く話が出て
喜ぶが、翌朝には、
「おばあさまは許してくれないわ」といわれる。

贅沢や楽しいことは禁止なのだ。


くじ引きでドリームランドご招待券があたっても
返上してしまう母。

「くじであたっても当てたあなたが悪いと
 おばあさまにいわれるでしょう」
と母。

ご招待であってもドリームランドに行くことは贅沢であり
楽しむことは許されないのだ。


そして、例年、高校の修学旅行はドリームランドに行くことに
なっていたが、
夢都子の学年からスキーにいくことに。

修学旅行にかけていたのに残念がる夢都子。

また隣に席の平川も残念がった。



高校もできる子は、島の外に高校に行ったが、
「女のくせに島の外までいって勉強する必要はない」と
祖母に言われて、島内の高校に進学した。

高校出たら就職して自立しようとしたが、
「大学を出なかったら世間様からなんていわれるか」と
反対を受け、しまいには、
「家から通える大学にいくこと」と条件が付けられてしまう。

自宅から通える女子大に進学しても
島への帰りの足が早くなくなってしまうため、
友達の誘いもすべて断るしかなかった。



教育実習で平川に再会する。

教育実習の準備で帰りのバスがなくなる。

車で来ていた平川が送ってくれる。

しかし、平川の車に乗っていたことを
近所の人に見られて、
平川のおっさん顔から「不倫している」と疑われる。

そして平川に食事に誘われるが、
祖母になんていわれるか想像ができてしまい断るが、
車をUターンしてきた平川に
「やっぱり食事に行こう」という。

どうして食事に行きたくなったのか。

夢都子をしばっていたの祖母だったのか。






「雲の糸」

ヒロタカは母が昔犯した罪のため
島中から虐げられながら育った。

大きくなり島を逃げるように飛び出し
歌手になった。


そんなある日、見慣れぬ電話番号からの
電話があった。

島の同級生の的場裕也だった。

ヒロタカの姉は
裕也の親が経営する会社で働いていたので、
電話番号を教えてほしいという依頼を
断ることができなかったのだ。

裕也の父が経営する会社が操業50周年記念に
パーティーをするのでゲストして参加してほしい。

パーティーの日は、ヒロタカの休みに合わせるという。

母と姉を人質に取られているため
参加するしかなかった。


裕也は
昔のことを反省して、応援するというが。。。


島に帰ると、歓迎されつつも
理不尽なことがたくさんあり、
断り切れずに対応するヒロタカ。

パーティーでも母の過去を持ち出されたり、
「島中で面倒をみて応援してきた」と言われたり。

裕也に頼まれて、書いたサインを渡せば
「いや結構。
 経歴がクリーンじゃない君は
 紅白歌合戦は無理だな」
「空を登るなんて演技に悪い歌なんて
 歌うな」
と突き返される。

心のバランスを崩したヒロタカは
海へ飛び込む。

母の犯した犯罪の理由はなんだったのか。。。





「石の十字架」

千晶は、娘志穂が登校拒否になり、
ふたりだけで白綱島に引っ越す。

白綱島は、千晶の父の故郷で、
父が自殺した後、祖母に引き取られたところだった。

台風のため、あっというまに床上浸水し
屋外に避難をしようとするがドアが開かない。

窓には鉄格子がついていて出ることもできない。

水かさがもっとあがってきたら、
天井を破るしかないと思う。

おびえる志穂を励ますため
千晶は石鹸で十字架を作る。

そして千晶の昔話を話すのだった。


千晶の父は会社のお金を横領し自殺し、
母は精神病院に入っているという噂が立ち、
千晶は孤立していた。

同じくクラスで孤立していためぐみと
一人でいるよりはいいかという気持ちで
一緒に行動するようになった。

めぐみは島の歴史をよく知っていた。

白綱山、別名観音山は
都から流されてきた盲人の僧侶が
死ぬまで掘り続けた観音様が何体もあった。

その観音様に十字架のしるしをつけて
祈る隠れキリシタンもいた。

キリシタンを捕まえるため役人が
白綱山を登ろうとすると山崩れが起きて
役人は死に、キリシタンは逃げ切ったという。

めぐみたちは、その彫られた十字架を見つけて祈れば、
キリシタンのように願いが叶うのではないかと思い、
必死で見つけて願う。

けれどめぐみの願いは重いものだった。

そして、孤立した千晶たちの運命は。





「光の航路」

航は小学校の教師。

のどかな田舎にはいじめなんてないと思いつつ
赴任したら、加害者の親が
「証拠は?うちが加害者です。
 警察に訴えます」
といわれて、ゲンナリする。

警察、弁護士といわれたら
それ以上押さずに
帰って来いと校長から言われていた。

いじめの対応にいやになった航が、
病気かケガで数か月休みたいと思った矢先、
航の家は放火に遭い、
熟睡をしていた航は火傷をして
数日入院することになった。

そこへ父の元教え子の
畑野が訪ねてくる。
新聞記事をみての見舞いだった。

畑野の「お父さんを尊敬して教師になったのか」
の質問に対して、「安定した職業だから」と答える航。

そして父の行動に対して納得のいかなかったことを
畑野に対して話すのだった。

父の納得がいかなかった行動の真相を話し始める畑野。

父の教師としてとった行動を知るのだった。
父がしたことと畑野のひみつはなにか。

そして自分の進むべき道が見えてきた航だった。






長く長くあらすじを書いてしまいましたが。。。。


感想の前に。

偶然ですが、年内の予定で
テレビ東京系列でこの望郷の中の
「みかんの花」「海の星」「雲の糸」が
ドラマ化されることになりました。


なんと「海の星」の「おっさん」を
椎名桔平様が演じることになりました。


おっさんが椎名桔平。。。。

おっさんっていうと中野秀雄とかピエール瀧とかムロツヨシあたりが
似合っていると思いますが。。。

ずんぐりむっくり系が。。。

でも、桔平様の正装して百合の花をもっての姿を見ると
ホレてしまうではないか

話の結末そっちのけになりそう




とにかく、「みかんの花」と「海の星」と「夢の国」
のインパクトがすごかったです。

「みかんの花」は推理小説と思って読んでいないので
え。。なんでそんな推理をしてしまうの???
とびっくりしました。


「海の星」では、
おっさんは娘に何を伝えたんだろうと興味津々で読み進めました。

その伝えたかった内容にびっくり。
地元の人でも知らないことってあるんですね。

そして、あのおっさんの正装。
真相を告げるためにした正装だけでなく、
プロポーズのための正装だったような気もします。



「夢の国」はおばあさまが死んだ真相にびっくり。
結局、夢都子はおばあさまが死んでも
白綱島に縛られる運命だったんですね。



ちなみに白綱島は、因島のことらしいです。
湊かなえさんの出身地とか。

合併する前に人口は2万7千人。

ここの有名人は、
湊かなえさん、ポルノグラフティ、東ちづるさんとか
少ない人口でインパクトの強い有名人を輩出しています。

ちなみに吸収合併した先は尾道市。



湊かなえさんの作品に嫌悪感がある人でも
本当に湊かなえさんの作品なの???という感じで
読める良い本です。








やっぱり。。。。ネタバレを。。。


「みかんの花」

姉はヒッチハイカーの健一と駆け落ちをしたのでなく、
殺し、オブジェの下に埋めたんじゃないか。

そのオブジェには「ようこそ白綱島市」と書かれていて
閉幕式で壊される、壊されて健一の遺体が出てくるのを
恐れて見に来たんじゃないかと。

その健一を埋めたのは、姉のことを好きだった宮下で、
罪を共有しているんじゃないかと私は推理します。


姉と宮下の会話から、姉が帰ってきた理由を推測し、
それをストレートの姉にききます。

姉は否定しませんでした。

健一が私の家で土地を売ったお金が入金されている
通帳を探しているのに出くわして包丁で刺したというのです。

姉が去ったあと、認知症の母がつぶやく。
「お姉ちゃんは帰ってこない。
 私の罪を背負って島を出て行ったんだから。
 私のせいで」と。。

もしかして、姉が殺したんじゃなく母が健一を刺したのでは
ないか。

健一がいなくなったことで人が騒がないように
姉は健一と駆け落ちしたことにして島を出たのではないかと。



ネタバレはこんな感じですが。。

でも島を出た後の姉の生活費ってどうしたんでしょうかね。
計画的ではないので、働くところもリサーチしていない。

大金の入った通帳は島に置いて行って、
母が仕送りでも隠れてしていたのでしょうか?

仕送りすれば、個人情報保護のない島。
あっという間に「どこにいるみたいよ」と情報が流れるし。

ここを説得させる文がありませんでした。





「海の星」

おっさんは、漁に出ていて、
洋平の父親の遺体を引き上げたけれども
流してしまいます。

理由は、善意で引き上げても
丸一日犯罪者として警察の取り調べを受けなくてはならないし、
遺体がかかった網で取った魚を買う人はなく、
生活が成り立たなくなるからです。

しかし。。一生懸命に父親を探す洋平たち親子の姿を見て
伝えなければと思うのです。

電話や投書で父親は死んでいることを伝えるけれど、
嫌がらせと受け止められてしまう。

そして、ある日、釣りをしている洋平に声をかけ、
家庭の状況を聞いて、生活の糧になるように魚などを
渡していたのでした。

あの日の正装は、父親を引き上げたことを伝え、
引き上げた場所に連れていき花を手向けるつもりで
したものでした。

美咲にはこの遺体を引き上げ流したことを言えず
「ボランティアで行っている」といっていたので、
それを信じた美咲がそのままを言ってしまい、
洋平は不信感をもったのでした。

母はいつのころからか父は海で死に、
 遺体は流されたと思い、
「自分が死んだら墓はいらない。海に流してくれ」と
父と一緒に海で眠ることを願っていました。



これはよくできた小説でしたが、
海の星の真相がわからない。

どうして海の水をすくって海面にぶちまけると
海の星ができるのかがわかりませんでした。

解説で、夜光虫が刺激で発光するのが海の星と
書いていました。

本文で書いてほしいな。。

海から離れたところに住む人間には意味不明です。
消化不良になります。




「夢の国」

Uターンしてきた平川に車に乗り
「食事に行こう。帰りたくない」といった真相は
家に入ったら、井戸の前で祖母が倒れていたのです。

夢都子は母がこの日は帰宅が遅いことを知っていて
このまま放置すれば祖母が死ぬ。
そのためには家にいなかったことをするために
平川の車に乗ったのでした。



衝撃ですね。
だから、朝帰りになっても
祖母に叱られることもなく、
祖母が死んだことで家がバタバタしていることを
想像していたんです。


しかし。。オチがついていて、
危篤の祖母を放置し死なせて、
束縛から解放される予定が、
一夜の出来事で妊娠してしまうのでした。

だから、文頭からのドリームランドの門に並ぶ親子は
平川と夢都子とそのときにできた子供でした。

妊娠して別な意味で縛られる。


祖母が死んだあと、母をドリームランドに誘うけれど
行かないという。

本当に自分と母を縛っていたのは
祖母だったんだろうかと考えます。


本当に衝撃的でした。




「雲の糸」

雲の糸は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」からきています。

努力して高いところへあがり別世界にきたのに
どうして島の人は自分を見下すのか。

この糸は努力した僕だけのものだ。
だれも登ってくるな、来るなとと叫ぶ。

雲の糸は切れてヒロタカは海に落ちます。
「来るな」という言葉から自殺と思われるのでした。

意識が戻ったヒロタカは、
糸が切れてしまったから自分はダメだと思う。

別世界にいくことだけが救われると思っていた。
今回の『自殺未遂』で母親の秘密をファンにも
知られてしまったと思ったのです。


ヒロタカは母が父の暴力に我慢して、父を殺さなかったら
僕たちは苦しまなくてもよかったのにと思っていました。

しかし、母の殺人の真相は
父がヒロタカは自分の子ではないと思い、
ヒロタカの首を絞めようとしていたのを
止めるために刺したのです。
何度も刺し死に至るまで手を放さなかった。

母の犯罪の原因が自分と知ります。

また母がヒロタカの将来のために
自殺を図ったことも知ります。

母に常に守られていたことを知ったのでした。



これは意外性もあまりなかったので、
感想はありません。





「石の十字架」

めぐみちゃんは願いの真相は
母親の素行だったようです。

派手な格好をし昼間からビールを飲む母。
母は育児放棄をしていました。

そのことを知っていた祖母は、
めぐみちゃんが午後からの出発にしたのは
お弁当を作れないためと悟り、
きっとおなかもすかせているだろうと思い、
巻きずしをつくり千晶に持たせたのでした。

めぐみの告白から、
千晶の祖母の働きかけで民生委員も動いてくれても
あまり改善しなくて、
めぐみ親子の関係は悪化させたかもと
千晶は後悔していました。

千晶は消防隊に救助されます。
それは、めぐみの通報からのものでした。

千晶はめぐみに相談したくて
めぐみがいるから白綱島にきたことに気が付きます。

これは意外性もあまりなかったので、
感想はありません。




「光の航路」

島の最後の進水式のイベントを父は教え子らしき人と
いっしょにいっていたことが納得できなかった航。

まして末期がんだったらなおさら航に伝えたいことが
あったはずです。


父と一緒にいたのは畑野でした。

当時畑野は理不尽ないじめに遭っていて
死にたいと思っていたのでした。

そして船の進水式をみながら
父は畑野にいろいろなことを伝えます。

また畑野から父がいじめに対して
どのようなことをしていじめの真相などを
調べて行ったかを知ります。

父の偉大さ父の自分への想いを知ります。

畑野は父から受けた恩を多くの人に
伝えるために中学校の教師になったのでした。

そして、今抱えているいじめについて
父のような対応ができるように思うのでした。



感想は、
いじめの内容が壮絶で。。。。。

だけれど、
「進水式は子供が生まれた時の喜びを重ねたもの。
 長い航海は助けてやることはできないけれど、
 嵐や孤独に耐えられないときは
 祝福されて送り出されたことを思い出してほしい」
は名言です。
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夢の守り人

2016-08-18 07:29:56 | 本を読みました

夢の守り人 上橋菜穂子著 新潮文庫


この本、読んでいると
情景が画像となるという想像力豊かな方には
かなり面白い作品です。


想像力が貧困でなおかつファンタジーだったので
私には????の世界でした。

読んでも分からず、他の人のネタバレを読んでも
腑に落ちず。

2度目を読んでなるほど。。と分かりました。





以下、ネタバレ兼あらすじです。










バルサは旅の途中で、
人買い商人に追われている歌うたいユグノを助けます。
人買いたちのほとぼりが覚めるまで
タンダの家に隠れることをアドバイスし、
道案内をします。

一方、タンダは姪のカヤが眠ったまま目覚めなくなり、
カヤの親などに責められます。
タンダの見立ては「魂が抜けている」。
魂をもとに戻さなければカヤは死んでしまいます。

この眠ったままの状態は、一の妃、チャグムなどいろいろな人が
なっていたのでした。

カヤを元に戻すため、タンダは危険を冒して
カヤの魂を追います。


タンダのたどり着いたところは、
大きな宮の中庭で、
大きな花が咲いていました。
大きな花の周りには小さな花房があり、
大きな花も小さな花房も暖かい灯色をしてました。
その小さな花房の中に眠って覚めない人が
また夢をみていたのでした。
夢が花の栄養になるようでした。

その花を守る花番に騙されて、タンダの体は動かなくなります。
動く魂で、カヤを探します。

カヤを見つける前にチャグムを見つけます。
夢をずっとみていたいというチャグムを説得し、
チャグムを現生に返します。

目覚めたチャグムは、シュガを通じて、
このままでは花に捕らわれた人は死んでしまうと
トロガイに助けを求めます。


一方、現生では、
タンダは体を乗っ取られて、ユグノの命を狙います。
タンダは驚異的な身体能力を身に着け、
バルサと対等に戦います。
タンダを殺したくないバルサ。。

トロガイの機転により、
タンダを追い払い、結界の中に入るバルサたち。

ユグノが花に関係する人物と知ります。
そして花の世界に異変が起こり、
タンダが花守りとなっていることも。
花の世界を正常に戻そうと思うけれど
花の咲いている場所がわかりません。

シュガを通じて、花が咲いている世界、
いつ花が散るかを知ったバルサたちは
花が咲いているであろう湖をめざします。

チャグムに手配をしてもらった狩人に
タンダを殺さないで足止めするようにと
依頼しての旅でした。


湖につくと、チャグムがシュガを伴い現れます。
久しぶりの再会に喜ぶバルサとチャグム。

結界の中からトロガイが花の世界に行くと途端に
結界が解けて、タンダが襲ってきます。
しかし、タンダは体力の限界で
すぐに倒れて意識を失います。


花の世界についたトロガイは花番に会います。
しかしだまされ、危機一髪のところを
タンダに声をかけられ正気になります。

花番は一番最初に受粉した一の妃に乗っ取られて
いたのでした。

他の人たちの夢は花を成長させるために
必要でした。

花が成長したら風に吹かれて夢見る人たちは、
現生に帰るはずでしたが、
一の妃は、大切な子供を亡くした悲しみをいろいろな人に、
特にチャグムの母である二の妃に味会わせたく、
花の世界の終わりとともに、夢見る人たちを道連れに
心中をするつもりでした。

ユグノの歌は風でした。
風が吹かないようにするため、
ユグノを子供にして歌を歌えなくするつもりが、
ユグノが逃げたので、花守りを使い、命を狙ったのでした。

トロガイは一の妃を説得します。
夢見ていた人は現生に帰っていきます。
花の世界が終わる前にトロガイとタンダは脱出するのでした。


そして、タンダは目を覚まします。
かなり体にダメージを受けて。
それを労わるバルサ。

ユグノはまた旅に出るのでした。








二度読んだから、あらすじが書けたんだと思う。。。。

花の種は、花の世界で受粉し種を作るときと
種が人の体の中に入り、人の夢を糧に成長し、
また宿主が死んだときに、花の世界で芽を出すようです。


まえまえから、タンダのバルサへの対する思いは
感じていましたが、
まさかバルサもタンダのことが好きだったなんて。。

「タンダを殺すぐらいならタンダに殺された方が良い」
なんて。。すごい愛ですね。

愛する人とは常に一緒にいたいと思うものだけれど、
タンダとバルサの愛の形は違うようです。



そしてチャグムの運命。

バルサ、タンダ、トロガイの生活した日々を懐かしむあまりに
夢の世界に浸ってしまいました。

一瞬、バルサに会って、皇太子の座を捨てて、
バルサと共にどこかへ行ってしまおうと思ったようですが、
聖導師の「帝になれず挫折した人には病死か事故死という
運命しかありません」の言葉の意味を知ります。

つまり、病死か事故死に見せかけて死んでもらいますってこと。

自分の護衛に連れていく狩人が実は自分の見張り役で
逃げようとしたらその場で殺されるってこと。

だから、帝になるしかないってこと!


聖導師様。。。ブラックすぎる。。。。。。。。。

影の帝だったのね。。。。




この夢の守り人は、
読めば読むほど、読む返すほど味が出てきます。

おすすめです。



前回、闇の守り人が良いと書きましたが、
こっちの方が面白い。



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その時までサヨナラ

2016-07-02 16:28:28 | 本を読みました
その時までサヨナラ 文芸社文庫 山田悠介著

帯を見ると「最後は号泣」とか
「これは泣ける」と書いてある。

売り上げも1位。



裏表紙の説明は
別居中の妻子が、旅先で列車事故に遭遇した。
仕事のことしか頭にない悟は、奇跡的に生還した
息子を義理の両親に引き取らせようとする。
ところが亡き妻の親友という謎の女の登場で
事態は思いもかけない展開を見せ始めた。
はたして彼女は何者なのか。
そして自己現場から見つかった結婚指輪に
妻が託した思いとは?
ホラーの鬼才が切り拓く愛と絆の
感動ミステリー




「ミステリー」に魅かれ
買ってしまいました。





仕事ばかりで家庭をないがしろにしたばかり
妻は子供を連れて家を出てしまった。

その妻が事故に遭い死亡。
接したことがない子供の面倒を見ることに。。

と書くとあるある話に思える。



実際は話はかなり複雑。
ネタバレもありますのでご注意を。





出版社に勤める悟は、
無名の新人を作家を見出し、
超売れっ子の作家に育て上げ、
勢いに乗っていた。

とにかく仕事が面白いとき。
家庭には帰らない。
子供が病気で緊急入院しても
仕事を優先した。

妻が家を出てしまっても
詫びることもなく、
離婚届が送られて来たら印を
押すつもりでいた。

でき婚で結婚したこともあり
家庭に魅力はなかった。


悟には部下で愛人の紀子がいた。
紀子は家庭を望んでなく
都合のよい女だった。

紀子と逢瀬を楽しもうとしようと
したときに、電話が鳴る。

妻の亜紀は福島での地震により
乗っていた電車が脱線横転し
その事故により死亡したという。
一緒にいた4歳の息子裕太は無事だという。

とりあえず、福島の病院へ向かう。

義父は葬式の準備をするから
裕太を連れて帰ってくれという。

悟は裕太を連れて帰ってくるが、
悟は裕太と一緒に食事をしたこともなく、
箸を使えないことも知らなかった。
当然のごとく会話もなく。。

その後は弁当を買っても
部屋で食べさせて、
風呂にいれることもなかった。

妻亜紀の葬儀が終わり
裕太は義両親に引き取られると思っていたら
「実の親に育てられた方がいい」と
言われてる。


読書に夢中で裕太に弁当を与えることも
忘れてしまい、弁当を買いに行っている間に
裕太が家に、妻の友人の宮前春子を入れてしまう。

妻の友人といっても悟には初めて見る顔。

春子は亜紀に頼まれて面倒を見に来たという。
そして悟が家事ができるように教育するともいう。

悟は春子を拒絶し追い出す。

久しぶりの仕事。
夜11時に悟が帰宅すると裕太が春子を入れていた。
「くるなといっただろ」と怒るが
「来なかったら裕太君はおなかをすかせて
 待っていることになります」といって春子はひかない。

春子がインターホンを鳴らす。
悟は無視すると裕太が家の中にいれるということが
続いた。


ある日、悟が育てた作家の原稿が出来上がった。
これを出版すればベストセラーになり
悟が次期編集長になることが決まる。

悟はフラッシュメモリーで原稿を受け取り、
封筒に入れ、紀子に渡したが、
電車の中で、紀子はスリに遭い、
現金が入ったものと思われたのか封筒は取られてしまう。

原稿の紛失だけで済まず、
翌朝にはその原稿はネット掲示板にUPされて
批評されていたのた。

そして、悟は担当を外され閑職に。



時間ができたので、しぶしぶと家事をおぼえることに。


そんな時、福島の警察より
「結婚指輪が見つかった」と連絡がはいり取りに行くことに。

その指輪は亜紀の結婚指輪でなく、
悟の結婚指輪だった。

悟は亜紀が家を出た時に、外してしまっておいたもの。
その後、亜紀が取りに来たことがわかる。

なんで取りに来たんだろう、またその指輪をもって
どこにいくつもりだっただろうと思う。

警察ではなしているうちに
春子は復縁を願い「指輪御祓い」にいったのではいわれる。

復縁は望んでいないはずと納得がいかない。

その後、宮前春子が宮前春子であっても
宮前春子でないことがわかる。
正体がわかるが、なぜそんなことをするのかがわからない。

いろいろな謎が続く。


悟は「指輪御祓い」をしているお寺に向かう。

そしていろいろな謎が解けていく。

霊能者神崎一恵は
「死者の魂を自分の体に呼び戻す力」があり、
電車の中で乗り合わせ、事故で死亡した亜紀に
亜紀がやり残したことをやらせるために
自分の体を貸していたのだ。
神崎の体を借りた亜紀は宮前春子を名乗り
やってきたのだった。


悟は亜紀の想いを知り、
亜紀に会いたくなる。

どこにいけば会えるのか。

裕太が持っていたノートで
どこにいけば会えるかわかる。

車を飛ばして会いに行く。
そしていろいろ話し合う。

そして「また会う時までさよなら」といって
亜紀は「旅立つ」。





という話です。

「福島の地震」と書かれていますが、
これは東日本大震災の前にかかれた話なので
無関係です。

一瞬ドキとしますが。

よく考えると地震で電車が脱線し
死亡事故がおきたということはなかったですね。



怖いなと思ったのは
盗まれたフラッシュメモリーの原稿が
翌日にはネットで掲載されているということ。

きっと、私の知らないところで
そういう事件がいろいろ起きているんですね。

一昔前は、漫画家は宅急便で原稿を送り、
作家はFAXで原稿を送り。。といわれていましたが、
確かにFAXの原稿や紙の原稿を
再度打ち直すよりも、電子ファイルでもらった方が
効率がいいです。

これからはメールでの送信が主流になるのでしょうか??



ホント、謎だらけでした。

そのため
「どうなっちゃうの??」という感じで
読むのを止めることができませんでした。


特に悟がお寺で神崎の話を聞く件と
最後の悟、亜紀の話し合いのところは
素晴らしい出来栄えです。
きっと、それでみなさん泣けたんでしょうね。

仕事しかしらない父親が子供を面倒を見る
というのは難しい。
そのドタバタを扱った小説はあるあるだけれど、
死んだ妻の想いを書いた小説は皆無だと思います。


きっと悟は亜紀の想いを大切にして
裕太を育てているんだろうなと思います。

そしてやさしくて強いお父さんになるんだろうなとも。


買ってよかったと思った一冊です。


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さーたり先生

2016-06-14 22:36:54 | 本を読みました


知る人ぞ知る腐女医のさーたり先生のコミックエッセイ。

女医というキーワードから
コミックエッセイなのに
医学書として扱われていたとか。。。



さーたり先生は
某大学病院の消化器外科医。
専門は肝臓・胆嚢・すい臓。

時には移植手術も手掛けるといい
12時間も経ちっぱなしで手術をしたといいます。

さーたり先生は2女の母。
ご主人は同期の外科医で
親とは同居していません。

その中で時間をやりくりし、
睡眠時間をげずって漫画を描いています。


この本は、
女医としてみた病院の話、
子育ての話、
オタクの話。。。

この本ではオタク度は低くなっていますが。。

ちょっとほろりとする話が
いくつか書かれています。




外科医と検索すると
トップで、
「さーたり」が出てくるほど
有名なさーたり先生。


ブログもやっています。・・・・・

ブログだけで書かれていますが、
さーたり先生自身が受けられた
帝王切開の話は術前術後とも面白すぎて。。

女医らしく(?)いろいろなことを
やってくれました。

とにかく医局のメンバーとの出来事は
面白すぎる。



最近はツイキャスもやっていて。。。

でも深夜0時半過ぎに始まったりで
面白いのに聞き逃してしまうことも。。



とりあえず、導入書として
この本を読んでみてください。
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闇の中の守り人

2016-06-07 22:41:58 | 本を読みました

「闇の守り人」新潮文庫 上橋菜穂子

あらすじ
チャグムの護衛を無事に終えたバルサは、
ジグロの供養のため自らの故郷のカンバル王国に向かう。
バルサが幼い頃、王の主治医であったバルサの父親は
王弟ログサムにおどされて王を毒殺させられた。
口封じに自分共々バルサが殺されるのを恐れた彼は、
親友で100年に1人の天才と言われる短槍使いジグロに
バルサをつれて逃げるように頼んだ。
それ以後バルサはログサムが死ぬまでジグロと共に逃げ、
短槍を習い、生き抜いてきた。
その後ジグロが死に、用心棒となったバルサは、
チャグムの護衛を終えて自らの過去を清算しようと思い立ったのだった。
しかしカンバルに帰ってみると、
ジグロは王即位の儀式に使う国宝の金の輪を
盗んだ謀反人の汚名を着せられていた。
黒い闇に包まれたカンバルをバルサが救う。





以下、ネタバレと感想です。


「精霊の守り人」よりこっちの方が面白い。

止まりません。



今回も設定がすごい。

裏切者のジクロに放たれた元仲間の刺客。

それはジグロを殺すために
放たれたのではなく、他に理由があった。

ジグロも刺客もその理由を知らずに戦うのです。


作者はどうやって設定を考えるんでしょうか?

いろいろな糸が意外なところにつながっていて、
ホント、思い付きで書ける小説ではありません。



今回は、同じ世界に住みつつも、
違う種族、違う文化をもった生物が出てきます。

ファンタジー。。。理解できないんですけれど。。

と思いつつ、読んでいると
この違う種族・牧童は、
一見、人に使われているように見える。

実際は人を監視していて、
山の神の臣下だったりして。

彼らの活動、信念がこのカンバル国を
守っているというところがすごいです。



バルサは女性なのに
体や顔を切りつけられそうになっても
ためらわず、攻撃を続ける。

それはジグロの教えなんだろうけれど、
だからこそ、
相手がケガをし怯んだすきに
攻撃をして相手を射止めたり、
また自分がひるまなかったことが最大の
防御になり、自分の命を守ることになる。

ジグロの教えはすごいです。

そのおかげでバルサは
戦いに勝つことができたのですから。




最後の闇の守り人とバルサの戦い。

読んでいてつらいものがあります。


生きるために選んだ道。

けれど助けてくれって頼んだわけじゃない。


この戦いで、すべての人の
気持ちが浄化されたと思う。

だから、バルサがカンバルに戻ってくることを
山の神も闇の守り人も待っていたと思う。

バルサが適任だったから。



あまり書いてしまうと、
面白くなくなってしまうので
この辺で。

本当に良い本です。
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精霊の守り人

2016-05-03 15:23:54 | 本を読みました
精霊の守り人 新潮文庫 上橋菜穂子著


守り人&旅人シリーズ」のHPから

腕ききの女用心棒・バルサはある日、
川におちた新ヨゴ皇国の第二皇子・チャグムを助ける。
チャグムは、その身に得体の知れない”おそろしいモノ”を
宿したため、「威信に傷がつく」ことをおそれる父、
帝によって暗殺されそうになっていたのだ。
チャグムの母・二ノ妃から、
チャグムを守るよう依頼を受けたバルサは、
幼ななじみの薬草師・タンダの元へ身を寄せる。
そして、バルサとチャグムは、
タンダとその師である呪術師のトロガイから
驚くべきことを告げられるのだった
── チャグムに宿ったのは、
異界の水の精霊の「卵」であること、
孵化まで守らないと大干ばつがおこること、
そして、異界の魔物がその「卵」をねらってやってくること ── 。
帝のはなつ追っ手、
さらに人の世の力をこえた危険から、
バルサはチャグムを守り抜けるのか? 
バルサとチャグムの出会いから始まる、「守り人」シリーズの第1作。



これがあらすじと一部ネタバレです。



テレビで綾瀬はるか主演でこの小説のドラマ化するということで
NHKが大々的に特番を作ってPRしていました。

「大河ファンタジー」というふれこみ。

ファンタジー苦手分野。

でも特番を見ていると、
女用心棒というキャラが合いそうもない綾瀬はるかは
低い声を出して立ち回りをしている。

その立ち回りがかっこいいのなんのって。

また、吉川晃司が渋いのなんのって。

ちょっとみてみようとテレビドラマを見ました。



綾瀬はるかは確かにかっこよかった。

なにかで、
今は年齢的に合わないけれど、
江角マキコがバルサに合っているというのを
見かけたけれど、
バルサの言葉遣いが、
ショムニの時のセリフが重なっているからか。

ドラマを見ているときはそう思った。




ドラマはちょっと消化不良。

どの年齢層を狙ったものなのか。。

元が児童文学ならもっと
子供向けに作るべきじゃないかと
思ったりして。



この消化不良を直すために
原作を読もうかと思う。

しかし、

原作は、野間児童文芸賞新人賞受賞、
産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞、
日本児童文学者協会賞受賞の作品。

児童が連呼している。

子供向けの本なんて読めるか。。と思う。




しかし、しかし、
本屋に行ったら、
今週の売れ筋のところに
山積みになっていた。

で。。ぱらぱらめくってみる。


字が小さい。。厚い。。。

子供向けじゃないじゃん!


と思い、買ってしまいました。




原作を読み終わって、
バルサは、
綾瀬はるかでよかったんじゃないかと
思いました。

バルサは、
本当は女性として、人間として
生きたかったのに、
生きるために非情にならなくてはならなかった。

言葉遣いも立ち振る舞いも荒々しい。

男にならなくては生きていけなかったからか。

だからこそ、
女性的な面うかがわせる体型が
この話には合っているような気がしました。





さてさて。。

話の出来はすばらしいものがあります。

思い付きで、勢いで書いた作品でなく、
いろいろなところで物語のキーとなることが
書かれています。

キーを読んでいるときは何とも思わず、
あとで
「そういうことなのね」と感心することが
しばしば。

ナージの魔除け、
ナージの歌。

意味があって書いているのね。



本を読んでいて
情景が浮かぶ人には
すっごく面白い本だと思います。

私は情景を浮かばせる前に
どんどん読み進めてしまうタイプなので。。


ただ、チャグムの母の描写で
「まだあどけなさが残る」と書いていますが、
12歳の男の母親で、16歳で産んだとしても
28歳。

20歳代後半にあどけなさというものが
あるんかいな???




面白かったので、続編の
「闇の旅人」を買ってしまいました。



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ストーリー セラー

2016-04-23 22:06:33 | 本を読みました


有川浩著 幻冬舎文庫 「ストーリー セラー」





背表紙の概要が。。
妻の病名は、致死性脳劣化症候群。
複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、
やがて死に至る不治の病。
生きたければ、
作家という仕事を辞めるしかない。
医師に宣告された夫は妻に言った。
「どんなひどいことになっても俺がいる。
 だから家に帰ろう」。
妻は小説を書かない人生を選べるのか。
極限に追い詰められた夫婦を描く、
心震えるストーリー。




致死性脳劣化症症候群ってなに???


大好きな有川浩さんなので
試し読みもせずに買ってしまったのでした。



この本は中編2作からなっています。
ともに作家の妻と会社員の夫の話。

一つは上記の作家の妻が死ぬ話で
もう一つが会社員の夫が死ぬ話です。






まずはsideA 作家の妻が死ぬ話のあらすじ

二人は会社の同僚として知り合う。

「食費」を「エンゲル係数」
「贅沢」を「潤沢」という
微妙に口語らしくない言葉を使う彼女。

彼は彼女の持っているUSBから、
彼女が小説を書いていることを知る。

彼女を押さえつけてまでも小説を読む彼。

その小説のツボにはまる彼。


彼女の小説が読みたくて読みたくて
たまらなくて、
彼女の家に入りびたり。。
そして結婚。


彼女に小説賞への投稿を勧める。

彼女は初投稿で賞を射止め、
あっという間に売れっ子になり、
専業作家になった。



それからは苦難の連続。


大学自体の文芸部仲間のいやがらせ。

彼女才能をねたみ、
学生時代に「才能なし」といって
つぶした連中。

彼女が作家になり成功したことをねたみ
ありとあらゆるところで
悪意の書評を公表する。

メインストリームから外されると
ペンネームを替えてまでも
悪意の書評を書き続ける。

彼女は精神を病んで
精神安定剤を飲むようになる。



今度は、親戚。

あったこともない申請のお金の無心は
かわいい方で、
親戚、特に父親が
彼女の作品をけなす。
「文学とはこういうもので
 おまえの作品は成っていない」
と自分の文学論、作品論を
ある時は電話で、
ある時は突然訪問してきて語る。

それは一度だけでなく、
以前言ったことも
わすれたかのように
同じことを何度も言う。



最後に痴ほう症になったひとりぐらしの祖母。

祖母宅の周囲に住む人は
施設への入居を勧めるが、
それを受け入れることができない父親。
そしてどうしようもできなくなったときに
誰かに問題をなすりつける。

民生委員が作家として
有名になった彼女に
祖母を施設にいれるため
力を貸してほしいと訪ねてきた。

祖母の家はゴミ屋敷と化しており
ありとあらゆるところに人糞があった。

彼女と彼でなだめて
祖母を家の外へ連れていき
施設の車に乗せた。



自分はまったく玄関の中に入ろうとはせず、
祖母に一言も声をかけなかった父親が
「あんなにも嫌がっていたのに
 無理矢理に。。。
 家には土足であがるし、
 お前たちは情がない。
 迎えのサービスなんて
 余計にお金がかかることを
 勝手に決めて、だれがお金を払うんだ」と
娘夫婦にいう。

父親と彼女のいくつかのバトルがおきて。

あなたのしてきたことは
放置であり虐待です。
感謝されることはあっても
非難されることはないと
きっぱりいう彼。

そして、
「僕の妻を侮辱するのであれば、
 殴るのであれば、
 僕はあなたを殴ります」ともいった。



その後、彼女はいろいろなことがストレスとなって
記憶があいまいになった。

痴呆とかうつ病とかいろいろな病名がついたが
症状と治療に効果が出ず。
「致死性脳劣化症候群」と病名がついた。


映画をみても感想をいえば、
病気が進行する。

もちろん、原稿を書いても。

小説を書かない人生を選ぶことはできなかった。




彼女の脳は、「休息」が必要と感じることが
でききなくなり、
脳も、体も疲れ果てて。。

彼女の死は突然やってきた。

彼への最後の手紙を書き残して死んだ。





SideB

昼休み、彼女は
ケータイを使うため
電波状況の良い屋上へあがろうとしたとき、
涙目で段ボールを抱えて階段を下りてくる
彼に遭遇する。

男の涙。。。なぜ。。。

まずいと思った彼は彼女に言う。
「この作家の作品が好きで
 屋上で段ボールひいて読んでいたら
 泣けてきて。。。」

その告白にびっくり。

「それ、私が書いたんですけれど。。」
と彼女は小説を書いていることを告白する。


彼女の作品をきっかけに交際が始まり、
結婚。
彼女は専業作家になる。



そんなとき、彼が交通事故に遭い、
精密検査で彼がすい臓がんであることがわかる。


彼女は、夫が死ぬ小説を書いたことを悔やみ
「覆れ」と何度も何度も書く。


逆夢になることを信じ、
執念で小説を書く。


結局、逆夢になることはなく
彼は死んだ。






<感想>

SideAの冒頭の病院でのくだりは
共感が持てず。。

読むのを止めようかと思うくらいでした。


いつもの有川浩さんと文体がちがうような。。

初期の作品かもしれませんね。



sideBの作家が書いたのがsideAの設定だそうです。



けれど、SideAの方が、
いろいろなことが盛りだくさんで
「そんな苦労があるんだ」と思いながら
読みました。

身近にある事件を深く書いていたという意味です。



だけれど、
自分の作品を一番愛してくれて
一番に最初に読みたいと思ってくれている人が
身近にいる作家さんは幸せですね。

作家さん夫婦はこんな感じなのかな???





編集さんによると
sideBの猫を飼う、猫の名前、
会社組織にする、
旦那の交通事故は
最近の有川浩さんとリンクするとか。

「この話はどこまでが本当なんですか?」

「どこまでだと思います」

それは誰にも言わない。

私は、この物語を売って
逆夢をお越しにいくんだから。



意味深なあとがき。。。


旦那が病気で、
これ書いて逆夢にしようとしているとしか
思えない。。。

逆夢って結果だけを替えておけばいいのかしら?
最初から替えなくてもよいの???



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境遇

2015-12-12 22:54:05 | 本を読みました

湊かなえ著 双葉文庫



あらすじ

県議の夫を持つ高倉陽子は、
夫の後援会の仕事などをして忙しく過ごしていた。

5歳になる一人息子の裕太に接してやる時間がない。
裕太が寂しくないようにと自作の絵本を描いた。

しかし、その絵本を後援会長夫人が、
話題性の提供のため、
勝手にコンクールに投稿してしまう。

大賞をとってしまい、時の人になる。

そんな陽子に付きまとう謎の女。

ある日、裕太が誘拐されて、
「世間に真実を公表しろ」と
脅迫状が届く。

真実とは県議の夫の過去?
それとも???

犯人は謎の女?

そこに新たな脅迫状が届く。
ヒントとしてある殺人事件の名が
書かれていた。






感想です。
ネタバレも含まれています。





殺人事件が起きた年に生まれ、
その殺人事件があった養護施設に
捨てられた子だから、
加害者と被害者の子になる。

すごく短絡的な発想。

自分は殺人事件の被害者の子、
相手は加害者の子と思い込む。

「ママはお空から見守っています」と
いう手紙だけで、
母親は死んだと思い込む。

母親が死んでいるから被害者の子。


まだ、顔写真があって
「似ている」ならともなくも、
被害者には子供がいたことも
わかっていないのに。

結局、被害者の子ではありませんでした。


すごい思い込みから事件が起きています。

緻密なストーリー構成の湊かなえさんとしては
短絡的ではありませんか。。。






また、誘拐した裕太くんをどこに預けたんでしょうか?

誘拐したあと、自分の家でお泊りさせた。

夜も「先に寝ていて」と寝かせ、
外出する。

子供にとっては夜は怖いもの。
何度も泊まったことがある家でも、
ひとりでいることができるのでしょうか?


翌朝早く、コンビニにいって、
それから、朝7時に高倉家に向かう。

高倉家で話をして、帰宅すれば
8時過ぎてしまう。

裕太くんは起きていると思います。
知らないところでひとり起きて、
作りおきのごはんを食べて、
おとなしく待っていられるものでしょうか?



その後も、待ち合わせて、
ランチして、養護施設に向かいます。

その間は、どうしているのか。

幼稚園に行かせる。
高倉家からお休みの連絡が幼稚園にいっているはずだから、
なのに登校させれば、
幼稚園側が動揺して動きがあると思う。

それ以外、どこかの一時保育に預ける。
子供だから知らないところは動揺して泣くと思うし、
自分の身上を話してしまう可能性がある。

天涯孤独であれば、
預かってくれる親兄弟はいないし、
友達でも預からないと思う。


まさか、テレビやゲームをさせて、
ひとりで留守番させた?

無理でしょう。
5歳児には。。
それも自分の家でも無理。
ほかの人の家となるとなおさら無理。

薬を飲ませて寝かせれば別ですが。。。。


つじつまがあっていないと思うのです。




ぐいぐいと「どうなるの?」と読み進められる半面、
犯行に及んだ理由が、しょぼい。。



湊かなえさんの作品は
後味が悪い場合はあります。
インパクトが強すぎるのです。

強すぎるから、
続けて湊かなえさんの作品を
読もうという気になれない。

そして謎も残る。


謎はわざと作っているのかもしれませんが、
今回の謎は、
謎、でなくて話の設定に無理があることにつながるので、
インパクトがない反面、
かなり残念な作品になってしまったような気がします。

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風に立つライオン/さだまさし(小説)

2015-02-21 23:46:03 | 本を読みました

さだまさし著「風に立つライオン」幻冬舎文庫


さだまさしさんの名曲「風に立つライオン」を
小説にしたものです。

よーくみるとこの本、
カバーが2重になっています。
上の「映画化」のカバーは少し短め。
その下のもともとのピンクの表紙が見えるようになっています。


歌の方は、
ケニヤの野戦病院にひとりの日本人医師がいます。
その医師の元に、以前付き合っていた彼女から手紙が届く。
手紙の返事の内容か、それとも使えようとして考えていることか、
医師の語りでケニアでの生活、いろいろな思いがわかる。
どうやら彼女は他の人と結婚が決まったようだった。
「幸せになってください。おめでとう。さよなら」で
歌は終わる。


詳細はUチューブで。

風に立つライオン/さだまさし





この歌が映画になるときいて、
「ケニアでの出来事をベースに彼女との思い出を描くのかな?
 彼女よりケニアでの僻地医療を選んだ理由も加えて?
 無理がある。。。」と思いました。

それも、主役が大沢たかおとなると。。。。。

無理。。。




映画はどうなるかわかりませんが、
小説は、歌とまったくちがう内容でした。






ネタバレも含む感想です。
読んでない方はご注意してください。







小説は、序章は震災直後の石巻を
医療活動をするためにアフリカ人医師のンドゥングが訪れ、
石巻の現状を和歌子「おかあさん」にメールで伝えるところから
始まる。
「航一郎、やっとあなたの国に来ましたよ」

第1章は島田航一郎について、
上司、同僚が回顧または述懐という形で語ります。

航一郎自身は、全く語りません。

航一郎がどうして医師になったのか、
どうしてケニアに赴任したのか。
そのケニアで何があったのかが、
みなによって語られます。


第2章はンドゥングについて、
当時、野戦病院にいた人が
回顧または述懐という形で語ります。



航一郎はケニアでは
「ミスターダイジョウブ」と呼ばれるほど
楽天家でありながらも、
人々に希望を与える存在でした。

ケニアでは、金目当てに家を襲撃して
親を殺し、子供を連れ去ることは
よくあることでした。

目の前で親を殺された子供たちは
大きい子たちは、麻薬を打たれて
少年兵として使われたり、
小さい子たちは、兵士の前を横一列になって地雷原を歩き、
地雷のスウィーパーとして使われていました。

ケガをした子供たちは使い棄てで荒野に
置き去りにされていました。

そのように戦いで負傷した大人の兵士だけでなく、
ケガをし心を病んだ子供たちが
航一郎が働く病院に運ばれてきたのでした。

航一郎は子供たちが閉ざしてしまった心を
開かせるために、
いつも笑顔で話しかけていました。

ある日、12歳の少年兵ンドゥングがケガをして
運ばれてきます。
脱走しようとして撃たれたようでした。

ンドゥングは他の子供たちようには
なかなか心を開きませんでした。

航一郎の努力により、ようやく心を開いた
ンドゥングは
「僕は9人、人を殺した。
 そんな僕でも医者になれますか」と聞きます。
航一郎は
「なれるよ。
 だったら10人、人を助ければいい。」といいます。


その後、日本人看護師の和歌子は、
病院に保護されていて、
教育を受けることができないンドゥングたちのために
戦傷孤児保護院小・中学校を作り、運営するために
奮闘するのでした。


そしてその後、航一郎は、僻地の医療に向かう途中に
ゲリラに襲われ行方不明になるのでした。



航一郎が日本に残してきた女性も医師でした。
しかし、父が九州の離島で医師をしていて
その医師が倒れたため、父のあとを継ぐことになり
日本に残ったのでした。

そして幼馴染と結婚することになり、
航一郎に手紙を書いたのです。

航一郎はたった一言だけの返事を書きます。
「お願いだから幸せになってください」と。

(歌と全然違う返事なんですよね。。。。)



第3章、石巻の避難所のリーダー木場さんについて語られます。
ここでは、ンドゥングと和歌子とのメールと
避難所「明友館」に集まった人々の
回顧または述懐という形で語ります。


年月が経って、ンドゥングは医師になります。

日本が壊滅的な被害をうけたと聞いて
ンドゥングは人々を助けるために日本に向かいます。

しかし、東京も被害をうけていて、
東北への交通手段はまったくなく、
石巻で頼るはずだった医師との連絡も取れません。

ンドゥングは新潟経由で仙台に入ります。
そして石巻の病院で医療活動をします。


被災地では外国人の姿はめずらしく、
それも黒人は大変目立ちます。


ある日、お休みの日、
ンドゥングは木場に声をかけられます。

「アー・ユー・ドクターケニア?」

ンドゥングはドクターケニアと呼ばれたことに
大きく心が震えます。
航一郎はダクネリ・ジャポネと呼ばれていました。
他にも日本人医師がいたのにも関わらず。

ンドゥングは日本語で答えます。

木場は「日本語、んめえじゃん」と
ひまわりのような笑顔でいいます。

旧友に会った感じのようでした。

「そお?
 僕、ケニア育ちの日本人。
 コイチロだよ。
 姓はンドゥング、名はコイチロ。
 ケニア一の日本人だよ」とンドゥングは答えます。

ンドゥングは名前を
ミケランジェロ・コイチロ・ンドゥングに
改めていたのでした。

「俺達、友達になれるか?」の木場に問いかけに
「あたぼーよ」と答えるンドゥング。

木場の運転するバイクに乗って
ンドゥングは避難所「明友館」に患者の診察に行くのでした。


木場は、航一郎に似た感じの人で、
ンドゥングは、早速和歌子に報告します。
安請け合いとしてしまうけれど、
必ずそれに応える人でした。

また、木場の人徳人脈で、
木場のいる避難所には日本中から支援物資が届き、
木場はその支援物資を他の避難所に届けたり、
自宅にて生活している人に届けていました。


明友館に「あきお」という震災のショックで
口がきけなくなった子供が保護されてきます。

ンドゥングは休み時間になると、
また時間があるときは必ず明友館を訪れ、
航一郎が自分にしてくれたように
「おめえよ」と声をかけてハグをしました。


ある日、ンドゥングが明友館の子供たちと
外出した先で、初老の男性が石段で転倒します。

誰かが「あぶない」と叫んで、
あつおが身をなげだして、
その男性が石段で頭を打つ前に下に入り込みます。

ンドゥングの応急処置で、男性は意識を取り戻します。


けれど、あの「あぶない」と叫んだのは誰?ということになり、
「あつお」が声が出たことがわかります。
そして笑えるようにもなっていました。

あつおの声が戻ったと喜ぶンドゥングと子供たち。


ある日、「あつお」は言います。
「僕もお医者さんになれますか」と。


ンドゥングの医療活動をみて、
自分も医師になりたいとおもったのでした。

航一郎からンドゥング、ンドゥングから「あつお」と
命のバトンがつながったのでした。






という話です。

大沢たかおさんが『「風に立つライオン」を小説にして、映画にして』
とさだまさしさんに直訴したそうです。

よって大沢たかおさんのイメージで島田航一郎は創られています。

大沢たかおさんはさだまさしさん原作の映画で
2回も医者の役をやっていますが、
その役とはかけ離れて
今回の役は『仁-jin-』のセンセに限りなく似た感じです。 


小説は、さだまさしさんの文章は
純文学的で理屈っぽくむずかしいところがありますが、
今回は医者などの高学歴の方々の回顧ですので、
かなりかなり理屈っぽい。。


でも、第三章の木場の
避難所の生活の場面については
みなさんに読んでもらいたいと思います。

避難所のシーンは映画では再現は難しいと思います。
震災のシーンで当時を思い出して
体調を崩す人があるでしょう。


50個しかないパンを避難民150人に配ばれない。
全員にいきわたらないから不平が起きると
もらうことを辞退する避難所のリーダーがいたそうです。

でも木場は、
「平等にするのだけがいいわけじゃない。
 だれが必要としているかみればわかる。
 その人を優先して渡せばいい」といいます。

平等に扱うことは難しいことです。
でも平等に扱えない時はどのように対応すればいいか、
また人との接し方について、教えてくれてくれます。

避難所だけでなく、生きて行くうえで
何を優先にすればいいかを教えてくれるそんな一冊です。
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Nのために

2015-02-11 14:41:44 | 本を読みました
ドラマ化もされた「Nのために」です。
双葉文庫 湊かなえ著

ドラマとの相違点はたくさんあります。




【あらすじ】

警察での事情聴取から始まります。

希美、成瀬、安藤、そして西崎と。


4人はある高層マンションで起きた
ある夫婦の殺人事件の現場にいました。

4人はそれぞれ面識はあるけれど、
偶然、その殺人現場にきて、居合わせた。
相談してきたわけではないと主張します。


西崎の判決がおります。


10年後
誰の想いかわかりませんが
ガンで死期が迫った人が語ります。
「自分が守ってあげたことを相手は知らない。
 知らせたいとは思わない。
 (略)
 誰のために、何をやったのか。
 (略)
 真実を知りたい」



その後、一人一人事件までのおいたちのことを語る。

10年たって、事件に対する思い、
相手に対する思いと真実を知りたいと語る。


4人の話から事件がどのように起きたのか
4人の各自の接点がどのようになっていたか
ジグゾーパズルのピースが埋まるようにわかっていきます。





【ネタバレ】

ドラマとの相違点は
駐在夫婦は全く出てこないってこと。

だから、料亭さざなみの火災について
「放火の可能性もあるかも」という感じで
その場だけのことに終わっています。

だれもいつまでも火事のことを気にしていません。


成瀬君のお母さんも出てきません。


希美のお母さんも出てきますが、
希美が島を出た後、同級生を結婚して
その後の消息はわかりません。

希美を追っかけて東京にくることも、
また死期が迫った希美と和解することもありません。




殺人事件は、野口が不倫相手の西崎と逃亡しようとした
夫人の奈央子を刺し、それをみた西崎が野口氏を花瓶で
殴って殺したことになっています。

実際は、奈央子は野口を奪われたくないという思いで
野口氏を花瓶で殴り、後追い自殺をします。

しかし、奈央子を愛する西崎は奈央子を殺人犯にしたくないと
思い、自分が野口を殺したと供述します。



奈央子は野口の暴力に支配されていると西崎は思います。
そして彼女を解放しようと奔走します。

実際は、奈央子は、野口氏の暴力により流産したと思われていましたが、
暴力で流産したにしても
「赤ちゃんに野口氏の愛を奪われなくてよかった」と思っています。

奈央子は「つれだして」と西崎にいいますが、
釣れ出して欲しい相手は自分でなく、
野口の将棋の相手をしている希美でした。
希美が野口を誘惑していると勘違いしていました。

奈央子が希美に贈ったドレッサーは
友情の印でなく、手切れ金としてだったのです。
「ドレッサーを贈ったのにわかってくれない」といいます。


西崎の中の奈央子と現実の奈央子の想いはかけ離れていました。




そして、みんなが相手のためにとうそをつきます。

西崎は奈央子のために殺人犯になります。

希美は、西崎の想いのために、
殺人の場をみていないと供述します。

成瀬はドアに鍵がかかっていたのに
かかっていなかったと供述します。


以前も希美は成瀬がさざなみの放火犯だと思いこみ、
成瀬のアリバイを作ったことがありました。



「Nのために」というタイトル。

一見、特定の誰かのためにみんなで協力してと
思うのですが、
実際は主要登場人物はみな「N」です。

西崎も安藤望も希美も成瀬も、
野口も奈央子も。
そして西崎、安藤、希美が住んでいた
野ばら荘の大家野原も。


西崎たちが野口に最初に近づこうとしたのは
野原のためです。


だれもがNを守ろうと動いていたのです。




湊かなえさんの小説はかならず謎を残します。

たとえば「告白」で大学の爆弾の爆発。
少年Aの母は生きているのか死んでいるのか。

「贖罪」では南条はその後どのようなことになったか。

など。

今回はありません。

あった方が読み応えがあるかとおもいますが。。。。


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悪人

2014-12-09 23:08:40 | 本を読みました
   


悪人。


妻夫木聡と深津絵里のダブル主演で映画化もされた作品です。



保険外交員が殺される。

同僚の供述から、大学生の増尾が犯人かと思われ、
警察は増尾を探す。。。





あとはネタバレです。






清水祐一が出てきます。

この人は物語にどのように関わっているんだろうと思う。



そして元風俗嬢が客としてあった清水について語られます。



この語りはなんなのか???
物語に必要なの?と思いながらも物語は進みます。



祐一のへんな吐き気などで
「もしかしてこの人が犯人?」と思う。



次は、被害者の佳乃の交友関係があった男の供述。
出会い系サイトで知り合っていたようです。



心さみしい光代は出会い系サイトで出会った祐一に会います。

祐一は無口。

でも、なぜか祐一に惹かれていく光代。



祐一も光代に惹かれていく。



そして、ある日祐一は自分が殺人犯だと告白します。

一度は、自首しようとしますが、
光代により阻止されて、二人は逃避行します。

光代の一緒にいたいという気持ちが
祐一を連れ回す。


「殺人犯になる前に出会いたかった」と思う祐一。



しかし、潜伏場所がバレてしまいます。




警察が突入すると同時に光代の首をしめる祐一。






さて。。

タイトルの「悪人」


「彼は本当に開く人だったのか」がこの話の
ポイントになります。


みなが語る祐一は、寡黙で純粋でやさしい青年と語られます。

光代もそんな祐一がすきになります。


しかし、逮捕後の祐一は
「苦しんでいる女性を見ると性的に興奮する。
 光代を脅迫して簡単には逃げれないと思わせて服従した。
 常にびくびくしている光代をみていて興奮していた」と
供述します。


警察が突入するときに首を締めようとしたことと
この供述を聞く限りでは、祐一は悪人です。


けれど、光代が自分の意思で祐一についてまわっていたという
供述をしたため、光代に犯人隠避の罪がかかる可能性があった。
刑事の祐一が「悪人」という思い込みを入れ智恵として
光代に罪がかからないようにとそのように供述したのではないでしょうか。


本当は失いたくないけれど。


風俗嬢の美保が接した祐一が本当の祐一のような気がする。


祐一の母親へのたかりも母親だけを悪くしたくないから
会いに行く口実に数千円でもたかった。
そんなことを考えることができるやさしい祐一が本当の祐一。



そう思いたい。

刑期を終えた時に、祐一のやすらぎとなる女性が
現れますように。




上下巻ですが、下巻は読み始めると止まらなくなります。
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もう一度読んでみたい本

2014-05-06 20:10:17 | 本を読みました
作家の渡辺淳一さん死去=ベストセラー「失楽園」―80歳(時事通信) - goo ニュース


渡辺淳一さんの作品は、伝記、医療、恋愛に分類できるという。
晩年は恋愛もので話題の中心にいた。

いろいろな人が追悼の文を書いているけれど
多くの人が「初期の作品の方が好きだった」と書いている。

私も同じく後期の恋愛ものは理解できなかった。



私の渡辺淳一さんの始まりは、SLEで入院した時
看護師さんに勧められたこと。

看護学校でブームになり、何冊か持っているから
貸してあげるということだったと思う。

実際何を借りたかは覚えていない。



同じ入院した時、
お見舞いとして持ってきてくれた本の中に
渡辺淳一さんの本があった。
「パリ行き最終便」だった。

短編集でその中に「桜色の桜子」という作品が
入っていて、
持ってきてくれた人の名が「桜子」さんで
「私と同じ名前だから思い入れがあるの」
ということで勧めてくれた一冊。

本のタイトルになっている
「パリ行き最終便」は男女の心理描写を表した本で
当時17歳の私にはかなり難しかった。
でも、ひっかかるものがあって
「いつか読み返してみよう」と思いつつ
今に至り、絶版になっている。

「桜色の桜子」は、女友達から
「明日、○時にきて、絶対に来て」といわれ、
女友達の家に行くと、友達がガス自殺を図っていた。
しかし、死体の肌色が桜色になっていて
なんと美しいことか。。
当時のガスには死後、数時間後に一時だけ
死体を桜色にする作用があったらしい。
彼女は彼が好きで自分の一番綺麗な時を見てほしいと
その時間を指定してきたものだった。



推理小説っぽいできに魅かれて
それ以来、渡辺淳一さんの作品にはまっていった。


大学生になって渡辺淳一さんを友人に勧めた。

「阿寒に果つ」に共感した友人がいて、
落ち込むことがあると
「私がいなくなったら阿寒湖を探して」という。
すると周囲が
「なにいってんの。まだ雪は降ってない。
 雪が降る時期までがんばるのよ。」
と励ます(?)あやしい会話が一時流行した。

それだけ「阿寒に果つ」の純子の行き方は
強烈なものがあった。


また、「花埋み」を読めば
「もっと勉強にがんばらねば」と言い出したり。。

なにかと登場人物に影響を受ける人が多かった。



個人的には感動したのは「廃坑にて」
これは実話ということ。

ある炭鉱の診療所で働いていた時、
一人の女性が子宮からの大出血で運ばれてくる。
婦人科は専門外であり、
前任の医師に相談する。
すると
「おそらく子宮外妊娠ではなく、
 何度も中絶を行ってきたので子宮壁が薄くなっていたところに
 妊娠により、子宮が裂けたのでは。
 子宮を縫うしか救えない」
との診断。
盲腸ぐらいの簡単な手術は教えてもらったけれど
それ以外の手術はできないが、
なにもしないわけにはいかず、開腹手術をする。

お腹の中は血の海。
ようやく見えた臓器を膀胱と子宮を見間違える。

やはり、子宮破裂だった。
手術中、女性の血圧はどんどん下がっていく。
「時間がない」と子宮をぐるぐる巻き(?)にしばって、
お腹を閉じた。

血圧は計れなくなった。
出血した量は、血液の半分は超えている。
人は、血液の3分の1を失うと死ぬと言われている。
女性は、まず助からない。

しかし、数時間後、血圧が測れるようになり、
翌日には起きて食事が取れるようになった。

女性のたくましさにびっくりしたと書いてあった。

おどろくことに、あの子宮でその後、3人も
子供を産んだという。

まさに女は強いと思った一冊だった。



怖いなと思った作品があった。
けれど、意外性があって
もっと作品を読みたいと思わせる作品。

堕胎した赤ちゃんの死体を
アルコール漬けガラス瓶にいれててもらってくる。
毎晩、瓶ごと抱いて添い寝していた。

赤ちゃんの父親が結婚することになり、
「赤ちゃん」を父親の元へ送りつける。
「パパにかわいがってもらってね」と。
(復讐ですね。。)


実際に、死体をもらえるはずはないとは
思うけれど、
渡辺淳一さんは、付き合っていた女性に
堕胎させたことが(何度か)あるそうで、
かなり危ない目をみたことを
作品にしたんでしょうね。。。。。



その後、恋愛小説に移行していく。

「化身」で、田舎から出てきた垢ぬけないホステスを
一人の女に育てていく小説ぐらいはまだ読めたけれど。。。



渡辺淳一さんは和服姿で巾着袋をもって
銀座の歩く姿は様になっていたという。

また、会話もおしゃれで
「天性のプレイボーイ」の才能がある方だったという。

天性のプレイボーイでも自分が傷つく前に、
恋愛を止めるのではなくて
どろどろになるまで恋愛をしてきたからこそ書けた
作品といわれる。

「今の人はそういう恋愛をしていないから
 僕のような作品は書けない」
といってきたとか。

こんな渡辺さんを見守ってきた奥様は偉い!




渡辺淳一さんのご冥福をお祈りします。

これを機に絶版になった本が再登場してくれないかしら。。。
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