計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

2021年1月の上越の大雪を振り返る

2021年12月20日 | 気象情報の現場から
 この週末は本格的な降雪となりました。現在はラニーニャの状態が続いています。北極振動も次第に正から負に転じ、冬型の気圧配置も強まりました。

 さて、昨シーズンに遡る事2021年1月7日~11日は上越を中心に大雪となりました。この時は「ラニーニャ現象」および「負の北極振動」に加えて「日本海寒帯気団収束帯」も新潟県に延びる形となり、さらに「この気圧配置が持続した」ことが、その背景にありました。

 まずはこの5日間の新潟県内の降水量の分布を見てみましょう。上越市高田周辺では200mm以上、新潟市秋葉区の新津周辺では100mm以上の極大域となっています。



 続いて、この5日間の降雪量と1月の降雪量(1か月分)の平年値を比較してみましょう。新津では5日間で平年の1か月分相当、高田では平年の1か月分を大幅に超える降雪に見舞われました。また、山沿いの地域よりも平野部を中心に大雪傾向であったことが判ります。



 さらに、この5日間の気圧配置の移り変わりを見てみましょう。7日に低気圧や前線が日本の東に抜けた後、8日~10日にかけて冬型の気圧配置が続きました。日本海上では等圧線は概ね縦縞模様となっていますが、幾重にも「く」の字に折れ曲がる所が見られました。この辺りに日本海寒帯前線集束帯(図中・赤太線)が形成されたことがうかがえます。


(※気象庁発表天気図をもとに加工・加筆)

 この日本海寒帯前線集束帯(JPCZ)が新潟県付近に向かって延びており、この形が持続したことが大雪の背景と考えられます。

 さて、冒頭の降水量の分布では、上越地方と下越地方に極大域が現れました。つまり、中越地方は極小域に対応し、相対的に降水量は少なかったということになります。この点についても少し考えてみましょう。


 この事例では日本海寒帯前線収束帯(JPCZ)を境に、その北側では北寄りの風、南側では西寄りの風となります。この両者が収束する所で上昇気流を生じ、対流が活発になります。また、水蒸気が海面から供給されることに鑑みると、主に北寄りの風に伴って輸送されると見ることができます。

 これらを踏まえて北寄りの風の流れに注目すると、中越地方から見たちょうど風上側には佐渡島があります。つまり、佐渡島によって北寄りの風の流れが妨げられ、中越地方では(上越や下越に比べると)風の収束や水蒸気の補給が顕著ではなかった可能性が考えられます(それでも、十分「大雪」でしたが)。

 いずれにしても、これからの時期は大雪への警戒と備えが必要です。
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