計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

激しい横風と強烈な寒気

2006年01月25日 | 気になるニュース
今日は気になる記事を紹介します。

JR羽越線「35メートルの横風で転覆」風工学会が試算 (河北新報) - goo ニュース

 昨年12月のJR羽越線脱線事故で、現地調査をした日本風工学会の報告会が24日あったそうですけど、そこで「竜巻と考えるのが妥当」との見方が示されたようです。この事故に関しては、私も列車を脱線せしめる横風の強さを試算しました。12/27日の日記で紹介した内容を再掲しますと・・・求める風速Vは次のような式で表現できます。(図・参照)

● V≧{Mg・sinθ / [ρL(H+h)] }^0.5 ・・・(1)

 ここで、θ:車両の傾斜角、M:車両の重量、g:重力加速度、h:盛り土の高さ、H:車高、V:求める横風の風速、L:車両の長さ、ρ:空気の密度

 この計算式からは、車両がθ=45°傾く場合、横風としてはV=44.55m/sという猛烈な風が吹きつけることになります。そしてもう一つ、列車の進行方向と風向とが互いに直角ではないことから、さらに揚力が作用した可能性も考えられます。飛行機が飛び立つ原理です。揚力は

● 揚力=(1/2)×CL×ρ×A×V^2 ・・・(2)

CL:揚力係数、ρ:空気密度、A:空気の当たる断面積、V:速度

で計算できるように、速度の2乗に比例します。列車の運行速度を下げていれば揚力の影響は低減できた可能性が十分にあります。仮に揚力が働いていたとすれば、(1) 式のMgの作用は減少しますので横風の風速が40m/sに満たないものであっても転倒する危険性が増します。

 今回の記事の試算結果も大体同じような値になりました。ダウンバーストによる突風が原因かと推測していたのですが、実際には竜巻の影響との見解が出されました。しかしどちらにしても、非常に小さなスケールの局地的な現象であり、その発生を予測する事は困難です。

 ダウンバーストや竜巻は、積乱雲に伴う現象であることが知られています。寒冷前線の通過時など、積乱雲の影響を受ける時には注意が必要と思われます。ドップラーデーターなどの設置も然ることながら、気象観測と気象予測が的確に運用され、乗客の安全・安心の向上に活かされるよう希望します。


平成17年12月の天候をもたらした要因について(速報) - 気象庁HP

 2005年12月は私の故郷でもある山形県置賜地方も記録的な大雪に見舞われました。この冬の寒気は尋常じゃない、とは思っておりましたが、このメカニズムに関する見解が、気象庁から発表されました。それによりますと

 ①例年より大きく南に蛇行した偏西風に沿って、寒気の中心から強い寒波が次々と流入した。
 ②熱帯の活発な対流活動が偏西風の蛇行を強化し、寒気の流入がさらに活発化した。

 ・・・この2つが大きな要因とのことです。詳しい事は気象庁HPを見て下さい。pdf資料に詳しく掲載されています。なるほど~ぉ、勉強になります。
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