軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

アルツターノフ氏死去 静止軌道エレベーターの始祖

2019-02-10 12:44:05 | ニュース
 静止軌道エレベーター構想を確立した人物として知られるロシアの工学者ユーリ・N・アルツターノフ氏が、今年1月1日に死去した。享年89歳。

 アルツターノフ氏は旧ソ連時代、現在の軌道エレベーターの基礎理論となる、静止軌道に質量中心を置く軌道エレベーターを発案。1960年に『電車で宇宙へ』と題し、7月31日付『コムソモルスカヤ・プラウダ』に発表した(書題の邦訳は『SFマガジン』1961年2月号に基づく)。

 同じくロシアの学者で、ロケット工学の父とも呼ばれるコンスタンティン・E・ツィオルコフスキー氏(1857~1935)は、軌道エレベーターの原初的アイデアを打ち出したが、この時は地上から建ててゆくモデルを想定していたとされる。
 これに対しアルツターノフ氏は、静止軌道から吊り下げた構造のモデルを発案し、位置エネルギーを利用した電力の回収や月面上の軌道エレベーターなどのアイデアなど、軌道エレベーターの利用可能性の多様さを示す基本的アイデアも盛り込み、軌道エレベーターの標準モデルを確立した。
 以来、軌道エレベーターに関する学術論文や、SF作品で描かれるモデルは、大多数がこの基本構想に基づいている。世界初の軌道エレベーター専門書でもある『軌道エレベーター -宇宙へ架ける橋-』にも次のように記されている。

 「これこそ、軌道エレベーターの原理上の必要条件を正確に示し、
 かつその利点のすべてを正確に指摘した、史上初の構想であった」
(早川書房版より)

 アルツターノフ氏は、ツィオルコフスキー氏と並び、いわば「軌道エレベーター学」の父とも呼べる。当サイトでは、プラウダに記事が発表された毎年7月31日を「軌道エレベーターの日」と定めている。(軌道エレベーター派 2019/2/10)

(以下は軌道エレベーター派の雑記です)
 アルツターノフ氏がお亡くなりになりました。軌道エレベーター史をひもとく時、欠かせない最重要人物と言ってよく、当サイトでは「軌道エレベーターの殿堂」の人物の1人として紹介もしております。
 
 ソ連崩壊など西側諸国とは比べ物にならないほどの激動の歴史を経験した方でもあります。冷戦時代のソ連といえば、ルイセンコ(科学的根拠のない植物学を唱え、これに基づく農業政策により多くの餓死者を出す原因をつくった農学者)に代表されるような似非科学が権力と結びついて人々を弾圧し、自由に学問を追求することも難しい社会体制だったようです。そんな時代を生き抜き、静止軌道エレベーターという、かくも壮大で美しいアイデアを打ち出したことに、深く敬服するばかりです。
 心よりご冥福をお祈りします。

最新の画像もっと見る