軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

軌道エレベーターが登場するお話(20) ACE COMBAT7 SKIES UNKNOWN

2019-02-17 17:17:51 | 軌道エレベーターが登場するお話

ACE COMBAT7 SKIES UNKNOWN
(エースコンバット7 スカイズ・アンノウン)
バンダイナムコエンターテインメント(2019年)

 ゲームを扱うのは2回目ですね。前回の"CALL OF DUTY INFINITE WARFARE" 同様、シングルプレイのキャンペーンモードについて説明します。結末まで語っているので、ネタバレご注意ください。

あらすじ:エルジア王国は、オーシア連邦に宣戦布告し、国際軌道エレベーターを制圧。エルジアに対し、反攻作戦が展開される。人気フライトシューティングゲームのシリーズ最新作。プレイヤー諸君、軌道エレベーターのそびえ立つ空を存分に飛び回るがいい! (`∀´)/

1. 本作に登場する軌道エレベーター
 何よりうれしいのは、

 「各国が協力し建設した軌道エレベーターが、エルジア軍に占領された」
 「我々は速やかに、軌道エレベーターにたどり着かねばならない」
 
 ──などなど、たっぷり「軌道エレベーター」を連呼してくれるんですよ。ここんとこ、右も左も「宇宙エレベーター」ばっかりでしたから、なんか新鮮。いや愉快痛快! (゚∀゚)

 さて本作の舞台は、「もう一つの地球」とでもいうべき架空の世界です。生態系はまったく同じですが、私達の世界とは異なる大陸があり、多数の国に分かれて攻防を繰り返しています。
 このうち「ユージア大陸」の一端にある「ガンター湾」に「国際軌道エレベーター 」(International Space Elevator=ISEV)が建造されています。
 時代設定は2019年で、20年前に小惑星が落下。多大な犠牲が生じたことから、恒久的エネルギー源として宇宙太陽光発電を実現するため、ISEVが建造されます。ISEVは2005年に終わった「大陸戦争」の後に建てられました。



 ISEVの構造ですが、地上(海上)基部「アースポート」は、小惑星落下で出来たクレーターに建てられ、海上橋及びトンネルで沿岸とつながっています。地下の「ジオフロント」から6本のケーブルが宇宙へ伸びており、「クライマー」が1台あたり2本をつたって昇降します。
 高度12kmまでは「防風塔」によってケーブルやクライマーが大気の影響から守られています。名前の割にはスカスカで風通し良さそうなんですが。そこから上はケーブルのみの構造で、遥か上の方には太陽光発電システムがあるはずですが、詳細は不明です。

 大林組構想に準じた名称や宇宙太陽光発電など、各部のデザインやアイデアは、既出のものを参考にしているのがうかがえます。
 その意味で目新しさはありませんが、デザインは美しく、高空からアースポートを眺めた、海と空の青、雲とISEVの白というコントラストが映える景色や、夕闇を背景にシルエットになったISEVなど、軌道エレベーターの色んな眺めを堪能できる一作でもあります。




2.ストーリーについて 
 エースコンバットのシリーズは、過去作から続く架空戦記を描き続いており、本作はその歴史で「灯台戦争」と呼ばれる出来事を描いています。
 上述の大陸戦争で敗北したエルジアは領土縮小に追い込まれ、停戦監視軍に国力増強を抑え付けられている状況にあります。さらにかつて自国領だったガンター湾に、大国オーシア連邦の主導でISEVが建造されたことなどから不満が爆発し、オーシアに対し開戦。停戦監視軍に無人機による攻撃をしかけてISEVを含む地域を制圧します。

 プレイヤーはオーシア空軍のパイロット・トリガーとして戦闘機を駆り、ゲームはトリガー目線の仕様になっています(F-14のような複座機を選択した時、後ろに誰が乗っているんでしょう?)。彼は超一流のパイロットですが、序盤でISEV建造の立役者となった前大統領を撃墜した嫌疑をかけられ、左遷されます。
 ここからしばらくISEVは出てきませんが、トリガーは飛ばされた先でも戦果を上げ、終盤に戦線が再びISEVに迫るまでにエースに復活します。

 これはこれで一つのドラマではありますが、トリガー=プレイヤーだから画面に登場せず、喋りもしないので、物語の大筋はオーシアの航空機整備士のエイヴリル、エルジアの無人機の開発者シュローデルらにより語られていきます。ただし彼らも一面的で、人物描写はあまり深く掘り下げられていません。
 その中で比較的、物語の進展と共に変化や成長を見せたのはエルジアの王女コゼットくらいでしょうか。冒頭の彼女は性善説を本気で信じていたふしがあり、理想論を唱えていれば和平に至ると考えていたようです。
 しかし所詮プロパガンダの道具に過ぎず、情報通信の混乱によって敵味方双方とも混乱と内部分裂に陥り、彼女を主戦派と誤解した友軍に撃墜され、遭難することになります。この間に戦争は激化し、果てはエルジアが進めてきた無人化技術により、人間の統制を離れたAIが、兵器を勝手に生産して前線投入するという事態に陥ります。
 彼女は前線に駆り出されたエイヴリルに拾われ、戦争を止めようと、全自動の兵器工場と化したISEVに乗り込んで破壊し、さらにISEVの送信機能で世界によびかけを試みるというクライマックスへ向かいます。ここで主要人物同士が本格的に絡み、トリガーの部隊は彼女たちを空から支援します。

 全体としてキャラクターの行動の動機づけが弱く、「人々が意思を持ち歴史をつくっていく」という印象は薄い。エイヴリルは軌道エレベーターを諸悪の根源みたいに言うのですが、人間悪をハードウェアに転嫁するあたり、少々こじつけも感じました。戦争は外交の延長であり利害の衝突なのだから、武器を壊してアジれば解決するなんてものじゃなかろう。

 しかしゲームは購入者に楽しんでもらってなんぼですからね。本作のメインガジェットである軌道エレベーターを最後の戦場にし、ドッグファイトやアクロバティックな飛行を体験できるクライマックスへ持っていくためにあつらえたストーリーに人物を載せたのでしょうから、仕方ないことでしょう。

 色々言ってしまいましたが、最終ミッションでエイヴリルが万全の状態に整えた戦闘機にトリガーが乗り、無人機と決着を付けに発進する場面や、闘いを終え、ピラー内部を上昇してISEVから脱出し、大団円を迎えるエンディングは、ドラマチックで感動的です。トリガーの機体が紺碧の空へ飛び抜けていく姿に全てが結実し、シビれる幕引きでありました。


3.プレイ感想 
 実は、ISEVに自由に接近して飛び回れるミッションはわずかで、その一つ目のミッションで最初にやったことは、ISEVに体当たりしてみることでした。ビクともせず壊れたのは機体だけ。どんだけ頑丈なんだよ。
 あと、試しにピラーに沿って上昇してみたところ、防風塔より上に行こうとしても強引にコースが曲がってしまい、それ以上の高さに行けるのは最終ミッションになります。
 実際は、プレイを始めてしまうと、攻防に夢中になって軌道エレベーターどころではなくなっちゃいます。しかし、近づいたり離れたり、見下ろしたり中をくぐったりと、自由な角度から軌道エレベーターを眺められる本格体験ができ、とうとうこんな商品が出たかと思うと隔世の感ありです。
 
 VR体験は、本編とは別に3ミッション体験できるそうです。私はVR機器を持っていないのですが、宇宙エレベーター協会に潜伏している軌道派の密偵・SS木君から感想をいただきました。そのまま紹介します。
 
「VR良かったです。3ステージだけですが、本当に空を飛んでいる感じで
 旅客機に乗って雲を抜けたり地上を見下ろすのと同じような体感(視感?)でした。
 あと背面飛行して地上や海を見上げたり、
 ドラゴンボールの筋斗雲みたいにグルグル回ったり
 一度はやってみたかった系が一通りできて満足しました。
 望むらくは軌道エレベーターをVRで抜けられると良かったのですが、、、
 今後のアップデートや追加配信で対応されないかなーと期待してます」


 ぜひ体験してみたいです。SS木君、ありがとうございました。

 私は過去に、エースコンバットのPS2版をいくつかプレイしたことがあり、とても楽しめたのですが、このシリーズ、結構トンデモSFの要素が盛り込まれているんですよね。
 PS2版のあるミッションで僚機のパイロットが「今、空が光らなかったか?」と呼びかけてきます。これ伏線でして、空戦が一段落すると、稲妻?と思った直後に「ずどーん!」と空から巨大な光の帯が降ってきて、友軍機が壊滅してしまいます。
 衛星軌道からのレーザー攻撃でした。思わず「なんじゃこりゃあああ!」と叫んでしまいました。オリンポスシステムかよ!? 本作でもそのテイストは健在で、ISEVを護衛する巨大無人機がバリアを張ったり、レーザー砲を撃ったりと、ビックリ超兵器がふんだんに登場します。

 トリガーは、実験機に乗るエルジア軍の老パイロット・ミハイと対峙することになり、これがキャンペーンモードの山場の一つでもあります。全ミッションをクリアすると、ミハイの乗機X-02Sをプレイヤーも使用できるようになりますが、このX-02Sもなかなかトンデモ兵器だったりします。
 高速飛行時は主翼の一部を格納し、カナード翼と垂直尾翼が水平になって前進翼からデルタ翼機のように変型するこのX-02S、乗ってみるとスピードも機動性も武装も並はずれていて、「こんなチート機に乗ってたのかよあの老人 (`д´)」と叫びたくなる高性能機です。そりゃ強いはずだわ。

 どの機体も、対地・対艦・対空あらゆる目標にロックオンでき、全部撃ち尽くしても一定時間経てば2発ずつ復活するという、謎の万能ミサイルを標準装備しています。X-02Sはパイロンが四次元ポケットになってるらしく、この謎ミサイルを146発装備でき、オプションでレールガンも使えます。
 ミハイは戦闘中、上から目線でトリガーたちに渋く語りかけてましたが、とんでもない曲者でした。「ただ空が飛びたかっただけ」とか言いつつ、新型機で遊ぶのが楽しかったんでしょう。
 ちなみにレールガンは非誘導式で真正面にしか撃てないので、照準を定めるのがひと苦労ですが、1発で艦艇を撃沈できる威力があり、当たれば快感です。

 全20ミッションを攻略Wikiに依存しながらクリアしたのですが、上述の通り、最後にISEV内部を上昇して脱出するシーンは胸熱で、特に私はF-104スターファイターを使っていたので、映画『ライトスタッフ』のクライマックスでイエーガーがF-104で高度記録に挑戦する場面を思い出しました。

 PS4の映像クオリティで、地球上に建つ軌道エレベーターが本格的に描かれた一作。久々にゲームに没頭して存分に楽しめました。次回作が出るとしたら、当然軌道エレベーターもまた登場するでしょう。本作には軌道エレベーターが沢山そびえ立つ絵も出てくるので、続編では、その世界が実現しているといいなと思います。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アルツターノフ氏死去 静止軌... | トップ | 10周年 »
最新の画像もっと見る

軌道エレベーターが登場するお話」カテゴリの最新記事