Mars&Jupiter

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ギュンター・ラファエルの合唱交響曲「大いなる知恵に」作品81を聴く

2022-02-19 21:02:52 | 古典~現代音楽ドイツ編
今回取り上げるのは1903年生まれのギュンター・ラファエルが、
1956年に作曲した合唱交響曲「大いなる知恵に」作品81である。
ギュンター・ラファエルの交響曲は作品集のCDの中に、
交響曲第1番が収録されていないので、紹介は今回で終わる。
聴いたCDの演奏はツヴェトゥカ・アーリンのアルト、
ライムント・グルムバッハのバリトン、ミヒャエル・ギーレン指揮、
バイエルン放送交響楽団および合唱団のものである。
3つの部から構成されている交響曲である。
テキストには老子の言葉が使われているようで、
マーラーの「大地の歌」との類似性もみられる。
第一部は神秘的な音で始まり、道の概念が合唱で歌われて始まる。
「道の道とすべきは常の道にあらず。名の名とすべきは常の名にあらず。」
この内容が歌われていき、金管楽器によるファンファーレのあと、
バリトン独唱が入り、人間による認識とは何かという内容の歌が歌われる。
そのあとアルトの独唱が入り、あとは合唱とバリトン独唱が交互に歌っていく。
宇宙の根源とは何か、世界とは何か、道の思想の深遠さが伝わってくる。
音楽は荒涼とした感じを与え、激しく荒々しい部分もある。
やがて音楽は壮大な感じになっていき、なかなか聴きごたえがある。
第二部は武器についての老子の考えが合唱によって歌われて始まる。
「そもそも、立派な武器は災いをもたらす道具である。誰でも武器を嫌う。」
合唱に続き、アルト独唱とバリトン独唱が入ってくる。
武器を為政者が使うことの危うさをこの音楽は伝えている。
武器を為政者が使う時は、いいことは起こらない。
多くの人々が犠牲になり、災いは広がり、そこに平和はなく、
際限のない戦争が続いていくことは、2つの大戦で人類は経験した。
しかし、今でも兵器開発は進んでいるし、現在も何も変わっていないのである。
弦楽器の独奏が入り、その悲惨さを訴えているようでもある。
フルートがそれに絡み、室内楽的な響きの中で空虚感が伝わってくる。
アルトとバリトンの独唱者が歌い盛り上がったところで第二部は終わる。
第三部は、「知恵出でて大偽あり」の内容に関係するようだ。
弦楽器による激しく重々しい感じの旋律で始まり、合唱が入り、
「偽善的な知識から立ち去れ」といった意味の歌詞から歌われる。
バリトンとアルトの独唱がその合唱の間に入ってくる。
管弦楽は金管楽器も加わり、狂乱したような音楽になっていく。
その盛り上がりのあとは静まり、バリトン独唱が入る。
そしてバリトン独唱と合唱のやりとりが続いた後、アルト独唱に続き、
バリトンが「道(タオ)」と歌い、その崇高さが両者の掛け合いと、
合唱によって歌われていき、徐々に盛り上がっていく。
この作品を通して何を作曲家が伝えたいかは知らないが、
私はこの「道」という思想の一つに小国寡民の考えがあることから、
突き詰めるところ平和な世界の実現を訴えていると思いたい。
曲は盛り上がりをみせたあとは静かになり、最後は消え入るようにして終わる。
ロシアとウクライナの間の軍事的緊張が高まっているが、
とにかく戦争には発展してほしくないものである。
老子の言葉、「大いなる知恵」に耳を傾けてほしいと思うところである。
コメント
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