TPP推進する人たちあるいは政党が、手強い農業関係者たちに、関税を撤廃しても生き残れる農業を名指をしている。以前に指摘したように、帯広近辺の長芋農家が、台湾などの良質の製品を送り、好評を得て事業を伸ばしているが、こうした分野は自由化しても生き残れるというのが、自民党などの言い分である。
長芋は毎年同じところでつくれないことを知らない、愚か者の意見である。長芋を成長産業だからといって、そればかりを作り続けることなどできないのである。
同類のことが、酪農でも言われている。加工乳製品が主体の北海道酪農は、飲用乳に大きくシフトすることで、競争力のない府県の酪農を凌駕して、生き残れるという論理である。確かに、生産者価格として、キロ当たり20円近い飲用乳価格は北海道の酪農にとって魅力である。北海道酪農に、お前らはTPPに参入しても生き残る道はあるというのが、推進者の意見である。
これは府県の酪農家には、存在意義がないことを前提とした論議である。北海道に比べて自給飼料も少なく、半分程度の規模の府県の酪農家であるが、地域で生産される牛乳を地域で消費することの意味は少なくはない。
鮮度が求められる飲用乳は、目に見える形で消費者に提供される。周辺の蔬菜農家などの残債の利用が可能である。加工食品の廃棄物の利用が可能である。地域の活性化にとって、多様な産業が支え合う典型的な府県酪農は、存在意義が大きい。
北海道から運搬して飲用乳が賄われるようになれば、いずれ海外産にとって代わられる、切り口になりかねない。北海道酪農にとっても脅威となる。
北海道酪農と府県の酪農を、恣意的に対立させ分断するTPP推進者の思考は、地域や農業や循環を考えていない、極めて愚かな発想でしかない。
北海道酪農は、府県へ育成牛の販売などを通じて、乳牛や肉牛生産にも貢献している。お互いに支え合う関係にある。府県と北海道の対立を煽る人たちは、こうした内部事情にも全く無知な人たちである。
農産物(に限らないが)を、価格だけで判断するTPP推進者たちは、目先のことしか考えることができない、愚かな守銭奴のような存在でしかないのである。