南北朝鮮の首脳会談が終わった。金正日が会談途中で盧武鉉に言ったことに、彼の独裁性を垣間見た気がした。会談日 程の一日延期を提案して、難色を示す盧武鉉に対して「あなたが決めれば済むことでないか」と言ったのである。
彼には、韓国の政治体制を基本的に了解していないのである。国民に何を問うこともなく、何の実績もないまま、世襲だけの理由で国家のトップに長年君臨してきたこの男にとって、民主体制など知る由もないのである。国家のトップが決めれば、あらゆることがそれに従って決められると思っての発言である。
北朝鮮のあらゆる問題は、この金正日の独裁体制にある。核問題も、ミサイル問題も、国内の人権問題も、食糧問題も、拉 致問題も、偽札問題も全てが、金正日体制にある。したがって、彼れらの6者協議も南北首脳会談も、体制の維持が何よりも前提になるのである。
6者協議でも、結局はアメリカがこの国の体制を維持することを認めるかどうかを問うことから、話し合いが進展する。イラクなど中東に多忙な、ブッシュの、内容はどうあれ政権末期になって実績を残したい思惑に、巧みに乗った形で2者会談を行い要求を成し遂げたのである。これからの多少の動きはあるだろうが、基本的に北朝鮮の思惑は着々実を結んでいる。思惑の中には、明確な日本外しもある。
今回の南北首脳会談も、北朝鮮の主導によって行われてきた。朝鮮戦争の終結宣言への動きは、国際社会に存在を認めさせたい北朝鮮にとって願ってもいないことである。アメリカのテロ指定国家からの脱却も当然視野にある。韓国が利用されているだけである。
この21世紀に、独裁の世襲体制を堅持する、全く私的な欲望で国家を支配する愚かさを、どのように非難しようが、巧妙な彼は生き残るのである。国内の失政と飢餓それに人権問題を外交によって見事に克服する、その手練手管には感服するばかりである。
富山県ほどの生産力しかない国家が、世界最大の超大国と堂々と渡り合う姿は、それこそ独裁体制でなければ達成できないことかもしれない。この旨みを手放すことがない以上、北朝鮮の人たちは救われないだろう。