そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

死刑を当然とする危険な社会

2012-02-24 | 死刑

光市の母子殺害事件は、心痛む事件である。この事件は、穏当にこれまでの判例を踏襲すれば、どう見ても無期懲役と思われる事件である。

被害者の主人がきわめて弁の立つ人であったことから、マスコミは一斉に彼を支援し始めた。被害者の権利の問題や未成年の問題それに、加害者男性の育った環境やその後の言動も大いに、マスコミを喜ばせるには十分に盛りだくさんであった。

面白おかしく掻き立てるマスコミは、死刑判決を期待させることに終始していた。

死刑を、報復手段として扱っているのである。日本には、赤穂浪士などの仇討を認める思想が、底流にある。また死んでお詫びするというような、割腹思想もある。死刑を報復手段として、大衆を扇動するマスコミには、量刑としての視点がない。

償うということもかなり主観的で、宗教的側面や歴史的、地理的、宗教的な風土も関係して、いまひとつ判然としない。量刑ならば、再犯防止、社会的抑止効果も考慮されるべきである。

1989年12月15日に、国連は死刑廃止条約を批准した。1997年以降、国連人権委員会は「死刑に関する決議」を繰り返している。日本にも死刑廃止を通告している。

1990年死刑を設けていた国は、96か国あったが、現在は54か国に減少している。しかもそのほとんどは執行していないのである。

死刑のもっとも多い国は中国である。推定で2000人以上が死刑を執行されている。次にイランとアメリカとロシアである。これらの国を列挙するだけで、死刑を増やせば、犯罪が減少するというわけではないことが判る。

アメリカの例を出せば、収監されている囚人の7割が、何らかの犯罪経験を持つ再犯者だといわれている。

人は過ちを犯すものである。犯罪においても判決においてもである。国家としておこなう、死刑という殺人も過ちであることも当然ある。人にはどんな状況でも生きてゆく権利がある。国家がそれを断つことを今後も続けることに、大いに疑問を感じるのである。

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6 コメント

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「人にはどんな状況でも生きてゆく権利がある。」... (紫錦唐松)
2012-02-25 09:37:30
「人にはどんな状況でも生きてゆく権利がある。」という基本理念は同感ですが、何でもやって良いと誤解する人種がいることも事実です。その典型が立法府である国会議員の選挙制度に関する無責任な発言と行動です。

 少年法改正以前は14歳以上でなければ少年院送致はありませんでした。昔々々ですが学校が全国的に荒れた時代がありました。その根底に「カンパ」と称して当時でも10万円程の恐喝があちこちであり解決するために半端でないエネルギーが必要でした。

 14歳になったら止めると挑発的に公言した加害者がいました。かって自分が被害者だったからとも言いました。その循環を断ち切るため、被害届を警察に出させると方針を決め伝えました。その結果、数件の恐喝事件が明らかになりました。今では考えられないけど夜中の11時頃まで何度も会議を続けたことがあります。
 最近、メモ類を整理・処分しましたがそんな記録を見て思い出しました。福岡伸一は動的平衡という言葉で説明していますが、胸にストンと落ちる説明です。
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この事件の最も大きな特徴は、被害者の夫が極めて... (そりゃないよ獣医さん)
2012-02-25 14:22:32
この事件の最も大きな特徴は、被害者の夫が極めて雄弁であったことである。そして、被害者に対して、法律は全く考慮するものを持っていなかったことが、当初の無期懲役の判決を覆させたのです。
唐松さんのおっしゃられる、未成年の問題もかなり中途半端な論議で終わっている。
犯罪者を、「前科者」と呼ぶ風潮も日本にあります。
この事件は、極めて多面的な側面があり、多くの日本人に深刻な問題を突き付けてきました。それらが、死刑判決の結審で何かがおいて行かれた気がします。
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>ブログ主さん (炉部源太郎)
2012-02-26 12:39:06
>ブログ主さん

初めまして、炉部源太郎と申します。
今回の死刑判決は非常に残念な判決だと思っております。
マスコミ連中が被害者遺族の本村氏の復讐感情に漬け込み、ほとんどの国民に「厳罰」にしろと厳罰化を煽り。ほとんどの日本国民煽った結果だと考えています。

まさに、司法の良心の敗北だと感じてます。

今後そういった判決が出るのではないかと危惧をしています。
世界の流れに逆行してますね。

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この論議は大切な問題だと思います。 (紫錦唐松)
2012-02-26 23:23:37
この論議は大切な問題だと思います。
 もちろん、お互いを理解し助け合うということは基本問題です。しかし、ここに大きなパラドックスがあると思うのです。

 善し悪しの判断(ものさし)はどう決められるのでしょう。尺貫法からメートル法に変わった場合は共通理解は可能です。
 日本では考えられない事ですが、現在でも10代前半の子供がカラシニコフを持って人を殺している事実はご存じのことと思います。これは、大人によって教育されたものです。そこでは子どもにとって殺人は正義なのです。
 日本にも正義があって良いと思います。死刑判決の前にその事実を防げなかった日本の風土(個人主義)に焦点を当てる必要があると思うのです。数百世帯の自治会活動に携わりながら考え込むこの頃です。
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心痛む事件? (ta)
2012-03-02 21:14:47
心痛む事件?

きっとあなたにとっては、弁の立つ被害者の妻子が
無残な殺されかたをしたことに心が痛むんじゃなくて
そんな些細な過ちで死刑判決をうけた元少年に対して
心が痛んだ事件なんですね。

命って何なんでしょう。

きっとあなたにはこの先もわからないと私は思う。
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マスコミ報道に不快な思いを持つ者として、書き込... (理屈屋)
2012-04-25 01:04:42
マスコミ報道に不快な思いを持つ者として、書き込みします。日付が替わったので昨夜ですが、NHK堕ちたりと呆れた報道を先ず指摘したいです。京都の妊婦や子供が、とんでもない馬鹿な若者に轢き殺された事件報道。
危険運転何とか法をこの愚か者に適応されないことに『いらつく』事件の部外者ではありますが、同様なのは知らないが悲惨な事故を体験した遺族の女性…やれやれ、長い修飾になりましたが、この方の言い分だけを、烈火の如くまくし立てる映像を、7時、9時のニュースで垂れ流すやり口に怒りすら覚えました。
イカレた犯罪を憎むことと、事実関係や背景にあることを分析して視聴者に提供することは別(笑)。何も分析しないNHKは、民放顔負けな大衆扇動局かと、呆れ返りました。比較すべく日頃相手にしていない小冠者;古舘の番組を敢えて見たら、司直、警察なりが件の法律を適応しづらい旨を簡単ながら説明はしていました…。解説を聞き、官憲側のセンスがNHKより遥かにまともだなあと、珍しく官憲を評価してしまいました。
無免許でめちゃくちゃしたこと自体で、法律云々以前の次元で被疑者は社会的に抹殺モンでしょうね。ましてや言わずとしれた多数派バンザイなネット社会ならば(笑)でしょう。
ただ、被害者感情を煽り立て、これを梃子にこの法律をいじるとかし始めたら、何かまずいと感じました。
一見、理不尽に見えるがなかなか法律って練られたものだと、この事件をみて考えさせられした。
もう少しまともな交通事故などで、もしこの法律がなかったらどうなるのか…上手く言えないが、まさかも含めて法律は練られているのだろう。
現実は面倒臭く、複雑なのでわかりやすい事件でマスコミが大衆扇動して、いやさ、大衆がマスコミを突き上げている事実もあろうが(笑)、反ってマズイことになりはしないかと不安にすら思いました。
NHKは別の事件…ストーカーをシカトした千葉県警の事件を『視点論点』で解説していましたが、ここでも被害者感情をと、やれやれです!そんなことはマスコミがあれこれ力説する次元ではない。
被害者の心に同情面して寄り添う理由も正当性もないとか、失礼では?
事実関係を的確に伝え、被害者・加害者以外の他者が冷静に考える場を与えるのがマスコミの仕事だろうに、です。
死刑に喝采をおくる方々などが熱弁をふるう中に『マスコミは加害者を護りすぎだ』などとありますが、現実は被害者をいじり過ぎですね!
よほどの人でないかぎり、被害者ならばリベンジさせろと叫びたいもの!それを見れば視聴者は、仕返しだ、奴を吊せぇとなりますな(笑)。
そういう、至極安直な世界を野放しにできないからこそ、公的な『めんどくさい』物事があるのだと、そこんとこ、マスコミは意識的に忘れて、大衆にこびていますね。
政治でいえば、橋下市長にルール守れというなら、あんたが憲法守れよと一喝すらできないマスコミ(笑)。
こんなのを事大主義と呼びますね。
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