― 前場所全勝優勝で、いよいよ綱獲りに挑む、大関玉椿関にお話を伺います。
(玉椿) 「あー、どうもどうも。それにしても暑いね。やんなっちゃうよ」
― いよいよこの時が来ました。綱獲りです。場所前の調子はいかがですか。
(玉椿) 「ん? まあこれだけ暑いからね、そりゃ絶好調ってわけにはいかんけどね。稽古のほうは順調だね。調子は悪くないよ」
― 暑さのこたえる名古屋場所ですが、横綱候補であるならば相撲だけでなく土俵上での姿も重要視されてきます。小兵とはいえ魅せ方はいろいろあると思いますが、今場所はどのような姿での土俵入りを考えていますか?
(玉椿) 「わしのまらは皮をかぶってるから、ほかの力士とくらべてもなおさら暑いんだ。言ってみればさ、真夏にこたつに入って鍋やきうどんを食う、みたいな状態なんだよね。ふだんならちょっとでも涼しくとおもって、寝るときはパンツ1枚とかで寝てるんだけどさ、まらだけじゃなく身体のほうもTシャツとか短パンとか、ちゃんと服を着てさ、暑さに耐えながら土俵をつとめる姿ってのをお客さんに見せるのもありかと思ってるよ。」
― 大関にとって、入門以来名古屋は鬼門の場所です。綱獲り場所を、最も苦手とする名古屋で迎えたということに関しては?
(玉椿) 「横綱たるもの、苦手があっちゃいかんわけでさ。どんな状況であってもしっかり勝たなくちゃいかん。逆に考えれば、名古屋場所に綱取りができるというのは、苦手克服をアピールするチャンスだと思うよ」
― 玉椿関の相撲といえば、見えなくなって相手を幻惑するほどに小さいまらが特徴的ですが、出足や体格で劣るまらで勝ち進むポイントはどのあたりにあるとお考えですか?
(玉椿) 「まえも言ったかもしれんけどさ、小兵力士には小兵力士の戦い方ってものがあるんだよ。10センチの力士が長さを1.5倍にするには5センチも伸ばさなくちゃいかんのだが、もとが8センチだったら4センチ伸ばせば1.5倍になるんだよ。小兵力士が上位相手に見劣りしないまらずもうをとるためには、この1センチの差を生かさなくちゃいかんよね。」
― まさか大関にこんな質問をする日が来るとは思いませんでしたが、聞かねばなりません。玉椿関にとって、「横綱」とは?
(玉椿) 「おめえさんはなにもわかってないねえ。たんに横綱に昇進するだけじゃ意味がないんだよ。横綱としてふさわしい成績をあげ、横綱としてふさわしいまらずもうをとり、まらずもうの歴史に大きく名前を残すことが、わしに課せられた歴史的な使命なわけだ。横綱昇進なんてのは、たんなる通過点だよ。」
― それでは今場所の目標、お聞かせください。
(玉椿) 「そりゃ言うまでもないだろ。優勝して文句なしで横綱になることが、目標っていうか義務だよね」
― 横綱土俵入り、期待しています。玉椿関にお話を伺いました。
(玉椿) 「どんとこいだ、まかせとけ」