
ジェローム・K・ジェローム 丸谷才一訳(中公文庫)
《あらすじ》
気鬱にとりつかれた三人の紳士が
犬をお伴に、テムズ河をボートで
漕ぎだした。歴史を秘めた町や村、
城や森をたどりつつ、抱腹絶倒の
珍事続出、愉快で滑稽、皮肉で珍
妙な河の旅がつづく。イギリス独
特の深い味わいをもつ、代表的な
傑作ユーモア小説。
《この一文》
”--人はモンモランシーを見るとき、これは人間の理解を絶したある理由のもとに、フォックステリアの形を借りて地上へと派遣された天使なのだと想像するであろう。モンモランシーの顔つきには、一種、ああこれは何という邪悪な世界だろう、これを改良し上品にできたらいいのだが、といった感じが漂っている。これは敬虔な紳士淑女の眼に涙を浮べさせるものである。
彼が最初、ぼくの出費のもとに生きるようになったとき、実を言うとぼくは、まあ長いことはないだろうな、と考えた。ぼくは椅子に腰をおろして、彼が敷物の上から見あげるのを眺め、
「ああ、この犬は長生きしないだろう。やがて天国へと迎えられるだろう」
と考えたものだ。ところが、彼が殺した約1ダースのひよっこの代を払わせられ、百四十七回目の壮烈な市街戦から、彼を、吠えられたり蹴られたりしながら首根っこをつかまえて引離し、カンカンになっている女から彼が噛み殺した猫の死体をつきつけられ、その女に猫殺しよばわりされ、一軒おいて隣りの男に、こういう猛犬を放し飼いにしておくもんだからこの寒空に二時間も物置小屋に監禁されたと文句を言われ、果ては、ぼくの会ったこともないどこかの庭番がこいつに鼠を捕らせ、一定時間内に何匹つかまえるかを見事に当てて三十シリング稼いだという話を耳にするようになって、ぼくは始めて愁眉を開き、結局こいつはかなり長生きするだろうと考えたのである。 ”
楽しいです。
犬のモンモランシーが可愛い。
猫と湯沸かしに負ける犬。
私はイギリスの文学はあまり読んだことがないのですが、こういうユーモアというのはいかにもイギリスらしいという感じは受けました。
なんとなく。
ゆく先々でその土地に関する説明も述べられているので、真剣に読めば、イギリスの歴史の勉強にもなるかもしれません。
《あらすじ》
気鬱にとりつかれた三人の紳士が
犬をお伴に、テムズ河をボートで
漕ぎだした。歴史を秘めた町や村、
城や森をたどりつつ、抱腹絶倒の
珍事続出、愉快で滑稽、皮肉で珍
妙な河の旅がつづく。イギリス独
特の深い味わいをもつ、代表的な
傑作ユーモア小説。
《この一文》
”--人はモンモランシーを見るとき、これは人間の理解を絶したある理由のもとに、フォックステリアの形を借りて地上へと派遣された天使なのだと想像するであろう。モンモランシーの顔つきには、一種、ああこれは何という邪悪な世界だろう、これを改良し上品にできたらいいのだが、といった感じが漂っている。これは敬虔な紳士淑女の眼に涙を浮べさせるものである。
彼が最初、ぼくの出費のもとに生きるようになったとき、実を言うとぼくは、まあ長いことはないだろうな、と考えた。ぼくは椅子に腰をおろして、彼が敷物の上から見あげるのを眺め、
「ああ、この犬は長生きしないだろう。やがて天国へと迎えられるだろう」
と考えたものだ。ところが、彼が殺した約1ダースのひよっこの代を払わせられ、百四十七回目の壮烈な市街戦から、彼を、吠えられたり蹴られたりしながら首根っこをつかまえて引離し、カンカンになっている女から彼が噛み殺した猫の死体をつきつけられ、その女に猫殺しよばわりされ、一軒おいて隣りの男に、こういう猛犬を放し飼いにしておくもんだからこの寒空に二時間も物置小屋に監禁されたと文句を言われ、果ては、ぼくの会ったこともないどこかの庭番がこいつに鼠を捕らせ、一定時間内に何匹つかまえるかを見事に当てて三十シリング稼いだという話を耳にするようになって、ぼくは始めて愁眉を開き、結局こいつはかなり長生きするだろうと考えたのである。 ”
楽しいです。
犬のモンモランシーが可愛い。
猫と湯沸かしに負ける犬。
私はイギリスの文学はあまり読んだことがないのですが、こういうユーモアというのはいかにもイギリスらしいという感じは受けました。
なんとなく。
ゆく先々でその土地に関する説明も述べられているので、真剣に読めば、イギリスの歴史の勉強にもなるかもしれません。
ウィリス「犬は勘定に入れません」を読んでから、ちょっと読みたいなと思っていた本です。
サーズディ・ネクストシリーズでも、堅物の人物に対して
ー「ボートの3人男」を読んでも、少しも笑わないだろう。ー
という表現が出てきます。
イギリスらしい笑い、興味ありますね。
ストガルツキィ、借りてきました!
「ラドガ壊滅」「滅びの都」「みにくい白鳥」の3冊しかなく、全て書庫に押し込まれていました(泣)。
どれから読んだらいいかな?
見た目の可愛さと性質の凶暴さとのギャップがたまりませんね。
ストルガツキイは、くろにゃんこさんがお借りになったものでは、
『滅びの都』しかまだ読んでいないので、あまりお役に立てなさそうです;
でも私がはじめて読んだストルガツキイの作品は『滅びの都』で、これがきっかけではまってしまったので、
多分この3冊なら、どれから入っても大丈夫だと思います。
(適当ですみません;)
私は今、ストルガツキイの『トロイカ物語』を借りてきたのですが、
頁をめくるなり、「トロイカ物語(『月曜日は土曜日にはじまる』第四話)」とあって、痛恨!!
先に『月曜日は・・・』を借りなくては、と思ったら、
市立図書館には何故かそれを置いていなくて、さらに痛恨!
・・・買います・・・。
いやあ、面白かった。
イギリス的なにやりとする笑いに大いに気分転換させてもらいました。
イギリスの歴史は、私も少ししかわからないし、都市の名前も聞いたことがある程度なんですが、十分堪能できました。
こういう、笑って楽しい小説も必要ですね。
モンモランシーが最高! 元気がなによりです。
イギリスの笑いってちょっと独特ですよね。
先日もTVドラマの「名探偵ポワロ」を見ていたら、ラジオドラマで公開謎解きをしたポワロが得意満面になっているところへ、苦情の電話が殺到。内容は「アクセントがおかしい。英語の品位を損ねる」というもの。そこですかさずポワロ氏は「ジャップ警部が「ちょい待ち!」なんて言うからですよ。私が愛読している『正しい英語の発音法』を貸してさしあげなくてはなりませんねー」。
こんな感じのユーモアってイギリスっぽいんですよねー。
確か、公用語がフランス語のお国の人だったように記憶してます。
だから、アクセントがフランス語っぽいし、「ウィ、マドモアゼル」とか連発しちゃう。
そこに、「私が愛読している『正しい英語の発音法』を貸してさしあげなくてはなりませんねー」という言葉が入って、面白いとなぁ思ってしまうのがイギリスのユーモアなんですよね。
ここを面白いと思うか思わないかはセンスの問題だと思うんですが、わからない人もいるという事実に、私は愕然としました。
なんて、もったいない。
もとはベルギー警察に勤めていたらしいです。その時代の事件を扱った話もありました。
「外国人(ベルギー)の小男」と呼ばれたりすると、あからさまにむっとするんですよ。かなり面白いキャラクターです。でも、考えてみると、まともな反応か。おかしいのはそんなことを本人の目の前で言うイギリス人の方ですね。
実は、私はアガサ・クリスティーの原作のほうは読んだことがないのですが、ドラマのほうはかなり面白いので、そのうち読みたいです。
ポワロは、仲良しのジャップ警部が田舎で講演会をやる時、こっそりついて行って、自分の悪口を言わないかとか手柄を独り占めにしないかとか、こそこそ聞きにいくんですよねー。やっぱ変な人。原作ではどうなんだろう?
そういえば、シャーロック・ホームズもかなり変な性格ですね。
こうしてかんがえてみると、イギリス人って確かに独特の感性を持っていそうだなーと思います。そういう面白さを味わえないというのは、実にもったいない話ですねー。