半透明記録

もやもや日記

『川端康成へ』

2005年06月19日 | 読書日記ー日本
太宰治 (青空文庫


《内容》

芥川賞を取り損ねた太宰治による川端康成への反論。


《この一文》

”小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。そのうちに、ふとあなたの私に対するネルリのような、ひねこびた熱い強烈な愛情をずっと奥底に感じた。ちがう。ちがうと首をふったが、その、冷く装うてはいるが、ドストエフスキイふうのはげしく錯乱したあなたの愛情が私のからだをかっかっとほてらせた。そうして、それはあなたにはなんにも気づかぬことだ。 ”



「刺す。そうも思った。」って、なんてストレートな表現でしょう。しかもこの文章のうまさにびっくりです。太宰治ってやはりただ者ではありません。
本日6月19日は「桜桃忌」だそうです。いまだに人を惹き付ける太宰治という人のカリスマに感心します。私はまだあまり沢山は読んではいませんが、作品からはネガティブさの背後にある実直さというようなものを感じます。正直に生きたいのに、それを阻む様々の事柄に対する憤りと悲しみというような。あくまで個人的な感想ですが。そういうところに惹き付けられるのでしょうか。
もし彼が望んだように芥川賞を得ていたら、その後の人生は変っていたのだろうか。そんなことを思う日曜の夕暮れでした。

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2 コメント

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今年こそは (イーゲル)
2005-06-19 20:32:53
「刺す。」って凄い直球な表現ですね。

私は高校生の頃『人間失格』の大庭ヨーゾー

(苗字しか正確に覚えてません)宅の家族の

食事シーンを読んで、「!ウチの食事そっくりっ!そっくり過ぎて怖いな~」と思って以来、太宰が怖くて『走れメロス』を少々読んだ程度です。

「桜桃忌」だし、いい加減大人だから太宰を読もうかなと頭の隅で思いつつ、買い忘れて今年も太宰を読めないまま夜が更けていきます。
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私もです! (ntmym)
2005-06-20 06:22:18
私も『人間失格』を読みかけて、怖くなってやめました;

なんか妙にリアルなんですよねー。

でも、「新・ハムレット」とか「黄村先生言行録」などは、すっごく笑える愉快な話だったので意外でした。

それ以来、太宰もちょっとは読めるようになっています。



「刺す。」、私の心にも直撃です。

こんな文章を自分宛に書かれたら、どうしたらいいんですかね~。
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