半透明記録

もやもや日記

『アポロンの地獄』を観た

2005年06月22日 | 映像
製作: 1967年 伊
監督: ピエル・パオロ・パゾリーニ
出演: フランコ・チッティ/シルヴァナ・マンガーノ/アリダ・ヴァリ


《あらすじ》

一人の女が、男の児を生んだ。あどけないその赤ん坊の顔をみて、父親は暗い予感にとらわれた。「この子は、私の愛する女の愛を奪うだろう。そして、私を殺し、私の持てるすべてを奪うであろう」。コリントスに育ったエディポは「父を殺し母と通じる」というアポロンの神託を恐れ放浪の旅に出る。その途中でそれとは知らずテーベの王である父を殺し、その后である母を妻とする。その後真実を知った彼は絶望のあまり自らの目を突いて放浪の旅に出る。




凄い映画を観てしまいました。
原作は、ギリシャの詩人ソポクレスの戯曲で有名なオイディプス王の伝説です。
物語は現代のある夫婦のもとに男の子が生まれるところから始まり、古代のギリシャへと移ります。いやはや本当に悲劇でありました。捨て子のエディポはコリントス王のもとで実子として育てられますが「父親を殺し、母親と通じることになるだろう」という神託を受けショックのあまり放浪の旅に出ます。実はテーベの王の息子であった彼は自分ではそのことを知らないので、偶然のうちにテーベの王を殺し、その后を妻とすることになるのでした。テーベの王もかつて「実子に殺される」という神託を得て、生まれたばかりの息子を遠くまで捨てに行って殺すように羊飼いに命じていたのでしたが、それを哀れんだ羊飼いは殺さないで放っておいたところを、コリントスの老人に拾われ、子のいないコリントス王のもとへ差し出されたのでした。神託というのは本当に恐ろしいものです。
と、話の筋を分かっていても、とっても怖かったです。それはこの映画の持つ狂気のような迫力のせいでしょう。まず、映像が凄い! 砂の町で青空を背景にやせこけた男性の黒衣が風に翻っていたり、目のところに穴を開けたバケツのような形をした兜を被った兵士を突き殺して兜を脱がせると、まだうら若い少年だったとか、エディポが途中で倒すことになるスフィンクスというのが腰ほどまである巨大な面を被ったただの男のようなあまりの普通っぽさ(それがかえって無茶苦茶怖い!)とか、エディポの母であり妻となるテーベの后イオカステの眉のない真っ白な顔とか。そして、すべての悲劇の後、舞台が現代に戻り、エディポにそっくり盲目の男が登場する展開などにも参りました。
昔の映画は全く侮れないですね。こうなると同じ監督(この人自体も変っているらしいので興味がありますが)の他の作品も観たくなります。とりあえず『王女メディア』と『奇跡の丘』は是非とも観たいところです。

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