半透明記録

もやもや日記

『卒業 雪月花殺人ゲーム』

2011年09月01日 | 読書日記ー日本

東野圭吾(講談社文庫)



《あらすじ》
七人の大学四年生が秋を迎え、就職、恋愛に忙しい季節。ある日、祥子が自室で死んだ。部屋は密室、自殺か、他殺か? 心やさしき大学生名探偵・加賀恭一郎は、祥子が残した日記を手がかりに死の謎を追求する。しかし、第二の事件はさらに異常なものだった。茶道の作法の中に秘められた殺人ゲームの真相は!?





あれっ!?
推理ものって、こんなに後味悪かったっけ………?



というのが、読後の最初の感想でした。これは、私が殺人ミステリを読むのがものすごく久しぶりのせいなのか、それとも初めて読んだ東野作品特有の暗さなのか、まだ判断がつきません。でも、よく考えると、人がバタバタ死ぬ(殺される)ミステリというのは、暗くて当たり前だよな。うむ。


高校時代からずっと仲の良かった友人が、学校から社会へとその身の置き所を移そうとするその直前に、突然死んでしまったら? しかも、その死がこの仲間内の誰かによってもたらされたものだとしたら?

という疑心暗鬼のなかで、学生時代の貴重な最後の日々が費やされていくという暗黒物語でした。ひとりが死んだと思ったら、またすぐ別の人も死ぬんです。で、それはどうやら殺人のようで、グループ内の誰かが殺しちまったみたいなんですよ。ああー、暗いよーー!




この作品のやりきれなさというのは、すごく仲の良かった友人同士が、実はそれぞれ自分の利益のために仲間内で陥れ合い、そればかりか殺し合ったりし、長い年月を仲良く過ごしてきたはずなのに、結局はまるで他人で、互いの深いところまでは少しも理解し合うことがなく終わってしまうというところにあるでしょうか。

登場人物の多くに殺人の動機があるように描かれるのはミステリだから仕方ないとは思うものの、それにしても後味が悪い。
仲良しグループ内の人間関係が、どろどろしすぎてます。気が重くなる。こんなふうに友情が崩壊していくのを見させられるのは嫌なもんですね。けど…結局人はどんなに誰かを好きになったとしても、その動機は「それが自分の利益になるから」に過ぎず、同じように「利益を確保するためなら」友人といえども利用するし陥れもする、ということなんでしょうか。そうかもしれない…どんより。いや、そんなことはないか。これはお話だし……





とにもかくにも、予想以上に暗黒なのでビックリしました。ちょっとかなり衝撃でした。こういうもんだったかなあ? ミステリ離れしてたせいなのかなあ? ビックリしちゃったヨ!
でもこんなに暗かったのは、主人公が事件の内部にいたからかもしれませんね。よそからやってきて事件を解決するタイプの探偵小説では、ここまで暗くならないような気がする。そうだよ、うん。


と、気を取り直して同じく東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』もすぐに読んでみましたが、これはこの『卒業』にも登場する加賀君という人が今度は刑事として事件に外部から関わる話なんですが、やっぱり暗かったです。あ…あれ?? あー、でもこれもまた主人公は事件の内部にいる人だからだな(加賀君は脇役)。
これも暗い、暗い言いながら読んだ『どちらかが~』の感想はまた明日。










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