アーサー・ランサム 神宮輝夫訳(「アーサー・ランサム全集2」岩波書店)
《あらすじ》
ツバメ号でのはじめてのヤマネコ島への航海から1年が過ぎ、ウォーカー家の子供たちは再びハリ・ハウ農場へやってきた。しかし、兄妹たちを待ち受けているはずのアマゾン海賊もフリント船長も姿を現さない。ツバメ渓谷とピーター・ダックの洞窟の発見、カンチェンジュンガ登頂などなど、この夏には、兄妹たちが予想していたのとは違う展開が待っていた。
《この一文》
”「うむ。」と、フリント船長がいった。「きみは今までだって、きょうとおなじくらいノロマだったことがきっと何度もあったんだよ。ただ、今まではなにごともおこらなかっただけさ。われわれはみんな、ときどきノロマになる。しかし、それに気づくことがたまにしかないんだよ。」 ”
ツバメ号シリーズの2冊目です。前回からちょうど1年経った夏休み、ツバメ号の乗組員であるウォーカー兄妹の冒険が再び始まります。しかし、冒頭からなにやら雲行きが怪しく、どことなく重苦しい雰囲気が漂います。アマゾン海賊であるブラケット姉妹も、その叔父のフリント船長も「土人のごたごた」に巻き込まれているらしく、なかなか現れません。そんな中、普段は冷静なジョン船長は、冒険を始めたばかりの船員たちを難破水夫の身の上にさせる大きなミスを犯してしまうのでした。
うーん、今回も非常に面白かったです。イベントも、新しい登場人物も多いので、前回よりも物語を長いように感じました。そして、私のお気に入りのAB船員ティティは、今回も期待以上の大活躍です。アマゾン海賊とフリント船長を苦しめる暗黒女王を追いやるための、思わぬオカルト的展開に目が離せません。可愛いなあ。ボーイのロジャも去年より注意力の散漫さに拍車がかかっています。末っ子っぽくてよろしい(しかし、実際にはロジャはもう末っ子ではありません。下に赤ちゃんのブリジットがいます。前回ヴィッキイとして登場した赤ちゃんですが、それはヴィクトリア女王にそっくりだったためにつけられたあだ名だったんですね)。
登場人物たちは、誰もが前作よりもさらに性格が強く特徴付けられているように思えます。そして、前の年には優秀に見えた彼らも、予想外の出来事が起きたり、思ったように事が運ばなかったりしてひどく落ち込んだり心配したりします。しっかりものの航海士スーザンでさえ、自分の判断が甘かったのだと言って激しく落ち込んだりします。もちろん、子供たちはそんな状況の中でも自分たちに出来る最大のことをやろうとし、周囲の大人は彼らをそれとなく支え、失敗しても決して責めたりはしません。引用したのは、大失敗をやらかして落ち込むジョン船長に対してフリント船長が言った言葉です。確かに、誰でもいずれはやることになる失敗です。それでも初めて経験する失敗というのは、子供には大きな衝撃です。それを単純に叱りつけてしまわないで、被害の状況と正しく照らし合わせて反省させるのが大事なのかもしれないと思います。大人たちから信頼と責任を与えられた子供たちは、失敗を踏まえて成長してゆくのでありました。
子供たちの冒険のところどころに挟み込まれた大人の物語も面白いです。スウェンソン農場のきれいな娘さんメアリー・スウェンソンにはどうやらきこりの恋人がいる(ひょっとしたらまだきこりの片思いなのかも)ようなのですが、その若者のことを子供たちが「メアリー・スウェンソンのきこり」と呼ぶのに、私はやたらにときめいてしまいました。スウェンソン農場の、歌をうたいだしたら止まらないおじいさんや、その傍らでいつもキルトを縫っているおばあさん。前回も登場した炭焼き小屋の「年よりのビリー」と「若いビリー」親子とそのマムシ、ロジャが炭焼き小屋で1晩泊まった時に若いと言っても相当年をとっている「若いビリー」が話してくれる昔の思い出。アマゾン海賊のナンシイとペギイの両親は、どうやら幼なじみだったらしいこととか。で、お父さんのほうは今はいないらしいことなども分かります。こうした細かい物語が、あちらこちらに散らばっていて、その土地の人間関係を、とてもさりげなく語っています。
それにしても、今回も食べ物はおいしそうでした。ニジマスのバター焼き、マーマレードを塗ったぶどう入りパン、りんご、チョコレート……あー、腹減った。
《あらすじ》
ツバメ号でのはじめてのヤマネコ島への航海から1年が過ぎ、ウォーカー家の子供たちは再びハリ・ハウ農場へやってきた。しかし、兄妹たちを待ち受けているはずのアマゾン海賊もフリント船長も姿を現さない。ツバメ渓谷とピーター・ダックの洞窟の発見、カンチェンジュンガ登頂などなど、この夏には、兄妹たちが予想していたのとは違う展開が待っていた。
《この一文》
”「うむ。」と、フリント船長がいった。「きみは今までだって、きょうとおなじくらいノロマだったことがきっと何度もあったんだよ。ただ、今まではなにごともおこらなかっただけさ。われわれはみんな、ときどきノロマになる。しかし、それに気づくことがたまにしかないんだよ。」 ”
ツバメ号シリーズの2冊目です。前回からちょうど1年経った夏休み、ツバメ号の乗組員であるウォーカー兄妹の冒険が再び始まります。しかし、冒頭からなにやら雲行きが怪しく、どことなく重苦しい雰囲気が漂います。アマゾン海賊であるブラケット姉妹も、その叔父のフリント船長も「土人のごたごた」に巻き込まれているらしく、なかなか現れません。そんな中、普段は冷静なジョン船長は、冒険を始めたばかりの船員たちを難破水夫の身の上にさせる大きなミスを犯してしまうのでした。
うーん、今回も非常に面白かったです。イベントも、新しい登場人物も多いので、前回よりも物語を長いように感じました。そして、私のお気に入りのAB船員ティティは、今回も期待以上の大活躍です。アマゾン海賊とフリント船長を苦しめる暗黒女王を追いやるための、思わぬオカルト的展開に目が離せません。可愛いなあ。ボーイのロジャも去年より注意力の散漫さに拍車がかかっています。末っ子っぽくてよろしい(しかし、実際にはロジャはもう末っ子ではありません。下に赤ちゃんのブリジットがいます。前回ヴィッキイとして登場した赤ちゃんですが、それはヴィクトリア女王にそっくりだったためにつけられたあだ名だったんですね)。
登場人物たちは、誰もが前作よりもさらに性格が強く特徴付けられているように思えます。そして、前の年には優秀に見えた彼らも、予想外の出来事が起きたり、思ったように事が運ばなかったりしてひどく落ち込んだり心配したりします。しっかりものの航海士スーザンでさえ、自分の判断が甘かったのだと言って激しく落ち込んだりします。もちろん、子供たちはそんな状況の中でも自分たちに出来る最大のことをやろうとし、周囲の大人は彼らをそれとなく支え、失敗しても決して責めたりはしません。引用したのは、大失敗をやらかして落ち込むジョン船長に対してフリント船長が言った言葉です。確かに、誰でもいずれはやることになる失敗です。それでも初めて経験する失敗というのは、子供には大きな衝撃です。それを単純に叱りつけてしまわないで、被害の状況と正しく照らし合わせて反省させるのが大事なのかもしれないと思います。大人たちから信頼と責任を与えられた子供たちは、失敗を踏まえて成長してゆくのでありました。
子供たちの冒険のところどころに挟み込まれた大人の物語も面白いです。スウェンソン農場のきれいな娘さんメアリー・スウェンソンにはどうやらきこりの恋人がいる(ひょっとしたらまだきこりの片思いなのかも)ようなのですが、その若者のことを子供たちが「メアリー・スウェンソンのきこり」と呼ぶのに、私はやたらにときめいてしまいました。スウェンソン農場の、歌をうたいだしたら止まらないおじいさんや、その傍らでいつもキルトを縫っているおばあさん。前回も登場した炭焼き小屋の「年よりのビリー」と「若いビリー」親子とそのマムシ、ロジャが炭焼き小屋で1晩泊まった時に若いと言っても相当年をとっている「若いビリー」が話してくれる昔の思い出。アマゾン海賊のナンシイとペギイの両親は、どうやら幼なじみだったらしいこととか。で、お父さんのほうは今はいないらしいことなども分かります。こうした細かい物語が、あちらこちらに散らばっていて、その土地の人間関係を、とてもさりげなく語っています。
それにしても、今回も食べ物はおいしそうでした。ニジマスのバター焼き、マーマレードを塗ったぶどう入りパン、りんご、チョコレート……あー、腹減った。
私は「ツバメ号とアマゾン号」より、こっちが面白かったです。
ロジャのキャラクタが、前作よりはっきりしてきましたね。
「注意力の散漫さに拍車」に笑いました。
実はもう次の「ヤマネコ号の冒険」も読み始めました。
平行して他にも読んでいる本があるので、そんなに早くは読めないですけど。
なんだか時系列的に???な感じになってます。
またトラックバックさせていただきました~。
コメント&TBありがとうございます♪
同じ日に記事を投稿するとは、奇遇ですね~。私は今日ようやく読み終わったところだったんですよ。
私もこちらの「ツバメの谷」の方が、前作よりも一層面白かったですね。欲を言えば、ナンシイにもっと活躍してほしかったかなー。まあ、今回は仕方ないか。
「ヤマネコ号」もさきほど図書館から借りてきました。時系列が違ってるのですか? 昔の話とか? 楽しみです!
おお、こちらでも「ツバメの谷」が!!
この巻で私が好きな台詞は「きみたちは難破したんだ。難破水夫になればいいじゃないか」です。
この巻で私が好きなシーンはカンチェンジュンガの頂上でアマゾン海賊の親たちのメモを見つけるところです。胸がキュンとします。
ところで、私のブログからこちらにリンクを貼っても差し支えないでしょうか?
どうぞリンクしてくださいませ! 大歓迎、というか大感激です。えへへ。よろしければ私のほうも、かおるさんのところのを貼らせていただきたいと思います。
この巻は、結構名言が多いですよね。はっとするような台詞がさらっとあちこちに書かれているので、読んでいて驚かされます。私もどれを引用するかで迷いました;
カンチェンジュンガのメモを発見するくだりは、ときめきますよね! 私もかなりグッときました。その頃は、カンチェンジュンガは別の名前で呼ばれてたんだなーとか、ナンシイたちの両親は(フリント船長も含む)幼なじみだったんだなーとか。うっ、まさに胸キュン。
あのメモ見つけたあと、「これからもずっと来るのよ」というような台詞がありますよね。
あれも胸キュン。
ああ、遙かなる青春。。。
かおるさんの方でも貼ってくださって、どうもありがとうございます! しかも宣伝までしてくださって恐縮です。頑張って、どんどん読み進めます~。
私も子供時代にどこかへ何か隠しておけばよかったです; そしたら甥っ子が発見してくれたかもしれなかったのに。うーん、残念。